1.「報・連・相」をスムーズにするために定期的な報告と連絡にあわせて相談する
吹く風にも春の爽やかさが感じられるこのごろ、新年度のスタートがすぐそこだ。今年の4月1日は月曜日から始まるので、身が引き締まる思いだ。4月になると衣替えをするため薄着になり少々肌寒さを感じる。しかし、肌寒さを感じるのは緊張感のせいかもしれない。
情シスとしても新人、転勤者を対象としたシステムの運用説明や、セキュリティの勉強会で大変な時期だ。情シスのヘルプデスクには問い合わせが多くなるが、この時期は情シスの仕事を理解してもらういい機会でもある。慌ただしい毎日になるが、社員に正しいシステム運用をしてもらうのは、会社としては重要なことなのである。
さて、今回のコラムは、前職で良く使っていた、いわゆる「報・連・相」…つまり報告・連絡・相談について少し掘り下げてお話ししたい。
「報・連・相」が必要なタイミングとしては、仕事の進行で失敗が発生した時が挙げられる。ミスやトラブルが起きた時は、すぐに報告や連絡を入れて対応の仕方を確認する必要がある。また、ミスやトラブルを早く報告するほど対応も早くなって問題が大きくならずに済む。普段から定期的に仕事の進捗状況などの報告・連絡を入れておけば、上司や顧客等との信頼関係が築きやすくなり、問題発生時にも報告・連絡がスムーズに行えるので軌道修正がしやすくなるというメリットも生まれる。
そのためにも「報・連・相」の中では、「相談」がうまくできるようになることが大切なのである。ただし、何でもかんでも相談すれば良いというものではない。僕の場合、作業が一区切りついた時に進捗報告を兼ねて「報・連・相」を意識し、情報を上部に報告していた。「報・連・相」がうまくできるコツは、情報共有が前提なのかもしれない。
今回は上手な相談方法についてお話しするが、ポイントは、報告と連絡を行うタイミングと状況把握を正しくできているかである。管理職の時に感じたことだが、「報・連・相」のタイミングは、社員だけが抱えている問題ではなく、聞く側である上司の心構えも大切と思っていた。上司への相談のはずが、なぜか話が噛み合わず、最後まで言えずじまいだったりした経験はないだろうか。その原因について、相談者と管理者の立場で考えてみたい。
2. 相談しても聞いてもらえないと勘違いしてしまうケース→負のスパイラルへ
仕事のことで上司に相談を持ち掛けたが、上司から出た言葉は「話がわからない」だったという経験はないだろうか。その原因は話が噛み合わないからである。しかし、怒られているような気分になるので、あまり良い心持ちがするものではなく、冷静さを失い、動揺してしまうことがある。上司に対して「どこがわからないのか?」ということを聞いても、明確な答えが返ってこないというようなケースだ。
このケースは、上司側の言い方にも問題があり「話がわからない」のは、相談事がわからないのか、そもそも全体像がわかっていないのか、相談者側に問題はあるにしても、話が噛み合わない状態では、瞬時に解決することは難しい。このような時は一旦、中止して改めて相談するようにしてもいい。
相談側の改善ポイントは、業務上の相談では、現状がどうなっているか、さらに自分としてはどうしたいのかなど、自分の考えがあって、その説明の後に相談事がくるように筋道を立てて臨む必要があるということを覚えておいてほしい。そのためにも、普段から上司には定期的に状況説明などを情報共有しておくとスムーズな相談タイムがつくりやすくなるのだ。
3. なぜ「話が噛み合わない」のか? そこには原因がある
話が噛み合わない原因には、相談する側の考えで「自分はどうしたいのか?」がなく、「これからどうしたらいいか、このまま進めていいのかを教えてほしい!」という相談になっているためだ。上司が管理職になるためには色々な修羅場を経験しているため、相談への回答はできるはずだ。だから、社員の業務遂行に対して正しい方向に導くためのアドバイスはできるが、これからやるべき内容のジャッジはできないのである。
これは相談する側の注意すべきところで、上司に対する依存心を持ち過ぎてもいけない。依存とは頼ることだが、何でもやってくれることが良い管理者だと思ってはいけない。むしろ依存心が強すぎると嫌いな上司に発展させてしまうことがあるので、気をつけなければいけない。
前職(NHK)情シス時代のことを少しお話ししたい。年間計画で、関連部署に対してのセキュリティ研修を企画し実施した時のことだ。研修後には社員からのアンケートを取り、結果をレポートにまとめ、上司に報告した。作業の途中だったが、なるべく早く内容について確認してもらいたかった。作業中の資料で空欄が多く、アンケートもExcelのシートを表示して報告した。
社員が相談したかったのは「作業途中の段階ですみませんが、この集計の仕方で進めて良いか見てほしい」と言うものであった。ここまで話をしていると、何が悪いか感じている方もいると思う。相談者は効率のいいやり方で、作業途中のものが正しいかどうか、その方向性を確認したかったのだ。これは相談とは言わず上司へのお願いになってしまっている。その他の業務もあり忙しく、常に業務作業がタイトであることはわかっているがこのような内容は相談とは言えないのである。このような極端な例は少ないと思うが、相談する上では事前の準備が大切ということなのである。
4. こじれる原因は、感情の問題であり、業務上の理屈の問題ではない
こじれる原因は、感情の問題がほとんどと言ってもいい。つまり業務上の問題ではないということだ。感情の問題でこじれている場合、理屈で対応したのでは結果はNGになることもあるので、感情の問題から緩和する必要がある。難しいかもしれないが、上司の忙しい状況や業務内容を日頃から詳細に共有するなど、時間のある時に業務以外の内容も交えて十分なコミュニケーションをとっておくとうまくいくようになるかもしれない。
職場でのコミュニケーションの問題は、多かれ少なかれ感情の問題が絡んでいるが、仕事外も含めて人間関係を良好にする努力が必要なのだ。上司への相談では、チーム全体で業務改善の意識を持つことが大切で、1日の一定の時間…例えば17時から30分を相談・報告タイムに決めて、質問・相談・報告をきちんと正式な業務の一部として位置付けることも有益だ。気疲れしていない朝の時間を使って相談・報告などを行う場合には、ロジカルな説明が適しているかもしれない。僕は、どちらかと言えばゆっくり話を聞いてもらえる夕方の時間に相談する方が好きで、意外に決裁がスムーズに決まることも多かった。
相談の仕方については、上司がイエス・ノーで答えられるように工夫したり、何とかしてもらおうと考えるのではなく、「このようにさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか」という提案型で話を通したりすることも大事である。
うまく話せない人の特徴として、伝えたい情報が多すぎて要点をまとめきれていないケースがある。上司が相談内容を解釈できなくなるような例だ。例えば、スケジュール上遅延が生じ、締め切りまで間に合わない内容のもので、上司からの質問が「情シス側でスケジュールを調整することはできないのか?」と言ってきたことに対して、調整できない理由について「うちの部署の社員が長期休暇で人材が足りていない」とか、「他の案件も抱えており……」など、論点からずれた背景の説明ばかりしているのは良くない。本来、上司が聞きたかったことは「できないのか?」という問いに対する「はい」か「いいえ」だけなのだ。
情シスの答えが「できない」であり、その理由を述べようとしているとしても、聞く側の上司としては前後の話から読み取り、話す側の情報も要点を解釈しなければならないのだ。
5. 忙しい上司など、相手に時間をとらせない相談の仕方(例)
忙しい上司には、簡潔にわかりやすく相談をして、時間を取らせないことが大切だ。その例を下記にまとめてみよう。
▶結論から伝える
時間がない上司に対して簡潔に伝わるよう、「〇〇についてご相談です」と結論を言ってから、具体的な内容を伝える。最も伝えたいことを最初に伝えることが大事だ。
▶自分の考えを添える
相談内容が「どうしたらいいですか?」と上司に答えを聞き出すためにあってはいけない。まずは自分で考えて答えを出すことが先決で、上司の考えと合っているか確認する。
順番を間違ってはいけない。
▶相談内容を具体的に伝える
上司が適切な答えを出すためには、具体的で正確な情報を使う。そのためにも事前にデータを確認しておくなど、準備を怠ってはいけない。その際に、口頭だけではわかりづらい数字が入ったデータは、資料として準備しておくこと。
6. 相談の仕方「悪い例」と「良い例」
次に、相談の仕方として悪い例と良い例を紹介する。あくまで個人的な考えも含まれるのでご了承いただきたい。
▶「悪い相談の仕方」の例
先日、セキュリティの勉強会を開催しました。A部署がぜひ、もう1回やってほしいと言ってきましたが、A部署では予算がなく情シス側でぜひ、前向きに検討してほしいと連絡がありました。どうしたらいいでしょうか。
- ~悪い理由~
-
- 結論から伝えていない
- 自分で考えずに上司に丸投げしている
- 上司が判断するのに必要な情報を伝えていない
▶「良い相談の仕方」の例
A部署からセキュリティ担当者育成へのアドバイスを求められていて、その内容についてご相談です。
先日、社内でセキュリティの勉強会を開催しました。それを受けて、A部署ではセキュリティ担当者2名の育成を考えているそうです。そこで情シスからのアドバイスがほしいと要望がありました。予算はA部署で確保していて、来週月曜日の16時から情シスのメンバーも入れて会議を行います。会議では、過去に行ってきた研修リストを示すとともに経費についてアドバイスをしたいと考えています。こちらが研修リストと経費の一覧です。いかがでしょうか。
- ~良い理由~
-
- 結論から伝えている
- 自分の考えを添えている
- 上司が適切な判断ができるように詳しい資料を伝えている
- 良い相談の仕方の共通点は、
- 「〇〇についてご相談です」と結論を言ってから、具体的な内容を伝える
- 自分の考えを添える 「私としては〇〇と考えますがいかがでしょうか」
- 上司が適切な答えを出せるように、数値や図などを使い具体的で正確な情報を伝える
7. まとめ
僕が管理者になって気が付いたこともあるが、マネジメントする側になった時は、部下が安心して話ができる環境をつくることが重要である。「報・連・相」の中ではいかに相談がうまくできるかが、報告や連絡の迅速化にもつながる。
管理者は自分が社員のころに上司に対して「うまく伝わらなかった」経験や苦労した自分を思い出して、部下が安心して話ができるようにWeb会議上も含めて気配りをお願いしたい。多少の失敗は大目に見て、会社にとって社員は重要な資産であることを忘れてはいけない。
風通しの良い職場は、何でも話ができる場所であり、話す側も聞く側も依存心を強く持たず、思いやりと信頼することを大切に考えるべきである。そのためにも人に対して優しく接する気持ちを忘れてはいけない。
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■著者紹介■
熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住
40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。