情シスが抱えるITインフラやネットワーク、セキュリティの悩みを解決するメディアサイト情シスが抱える悩みを解決するメディアサイト
ここから始める安全・簡単生成AI

情シスのプロジェクトマネジメント成功術

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. プロジェクトを成功に導くノウハウを紹介
2. プロジェクトの立ち上げ時に注意すること
3. プロジェクト計画策定はリソース把握が重要
4. プロジェクト進行時におけるPMの心得
5. プロジェクトを成功させるためのコツ
6. まとめ

1. プロジェクトを成功に導くノウハウを紹介

2023年を迎え、コロナ禍も、はや3年。その動向は気になるが、産業界はニューノーマルなビジネスの着地点を見出しつつあるように思われる。僕自身も、注意を払いながら徐々に通常ペースの活動を取り戻すに至っている。本年も、コラムを通じて情シス応援メッセージを送り続けたい。

今回のコラムは、定められた期間内で成果を出すことが求められる「プロジェクト」について、成功に導くことができるノウハウを紹介したい。年度末までに結果を求められている方も多いと思う。参考になれば大変嬉しい。

2. プロジェクトの立ち上げ時に注意すること

前職の情シス時代には、プロジェクトマネージャー(PM)を数多く経験した。実はプロジェクトを成功に導く重要なポイントは、立ち上げのフェーズにあると言っても過言でない。プロジェクトの目的を明確に定め、「どのような状態をプロジェクトのゴールとするのか」を決めることが大切。

特に、リソースや予算の妥当性を把握しておかないと、計画はしたもののリソース(要員)不足などが原因で期限内の目標達成が難しくなるからだ。決められた期間内での成果が求められるため、リソース配分が重要なポイントだったことを覚えている。

プロジェクトの立ち上げ時に注意すること

3. プロジェクト計画策定はリソース把握が重要

立ち上げの次は、具体的にどう進めていくかの計画を策定するフェーズに移る。計画策定時には、どうしても期間内に目標を達成するため、ゴールから逆算した現実的ではないもの(無理やり)になりがちである。予算や人材・物などのリソースが足りない箇所を把握すれば、調整・調達のズレを減らすことができる。

ただし、あらかじめリソースを多く積んだからと安心するのではなく、担当者の業務バランスを考えることが重要だ。工程管理にはWBS (Work Breakdown Structure:作業分解構成図)などのツールを採用している方が多いと思う。私の場合もWBSで進捗管理を行っていたが、注意してほしいのは、個々の進捗管理に終わるのではなく、プロジェクト全体の「見える化」ができているかである。プロジェクトは小さな作業に分解して実行されるため、全体を俯瞰的に見ることも必要になってくる。WBSを活用すると、プロジェクトメンバーが同じ認識の下でプロジェクトを進めていることが確認ができるというメリットがある。

4. プロジェクト進行時におけるPMの心得

ここでは、PMとして自ら経験したことをお話ししたい。特に失敗経験をお話しするので、皆さんはそうならないように、もしくはそれに近い場合は見直しを行ってほしい。

簡単に言うと、自分が「忙しい」という理由で、確認すべきことを省略し、次に進んでしまったため、手戻りしてしまった事例である。プロジェクトで一番やってはいけないのが手戻りである。プロジェクトの成功から遠のく大きなマイナス要因なのである。

今でもPMをする上で注意するところは、関連部署への説明会である。なぜこのシステムが必要なのか、新しくなる場合の変更点などを丁寧に説明し、納得してもらうことが重要なポイントになる。関連部署には協力を要請することがあるため、合意形成に関する記録を交換しておくことをお勧めする。いつの間にか担当者が代わってしまい「何も聞いてない」と言ってきた部署が過去にあったからだ。このような状況になると、再度説明会から行い、手戻り状態になってしまうリスクがあるからだ。

プロジェクトメンバーの中には当事者意識を持っていない者もいる。1人ひとりに当事者意識を持ってもらうには、その担当者から発する意見を尊重し、ある程度の決定権を持たせることが必要であり、それがプロジェクトの成功につながったことを覚えている。

立ち上げ時に目標を立てたが、成果を出すためには何をすべきかをメンバー1人ひとりに考えてもらうことが必要なのである。これらを含めたマネジメントがPMの仕事になる。メンバーからの成果物を組み立て、ゴールに近づけるための管理だけではなく、メンバーとのコミュニケーションを通じた信頼関係を構築することが大切なのである。

5. プロジェクトを成功させるためのコツ

その1:プロジェクトはシンプルな状態に維持する
プロジェクトが複雑になり過ぎると、チーム内の混乱を招き、プロジェクトの効率が低下する恐れがある。PMは、メンバーや主な関係者とのコミュニケーションが重要であるにもかかわらず、うまく機能しない場合もある。プロジェクトをできるだけシンプルな状態に維持することによってプロセスが合理化され、メンバー全員が自分の役割を把握できるというメリットがある。
その2:PMとメンバーは常に連絡可能な状況に
PMはプロジェクトメンバーと常にコミュニケーションが取れる状態にしておき、各メンバーからの信頼確保が成功のカギになる。何か問題が発生しても、PMにすぐ連絡が取れると思ってもらうことが大切であり、プロジェクトの進行管理では、ただ情報を共有するだけではなく、全員の悩みごとの共有も大切になる。
その3:テレワーク環境でのコミュニケーションには工夫が必要
テレワークが中心のワークスタイルでは、疑問解決のための相談タイムを作るとよい。例えば毎朝10時から相談タイム枠を作り、メンバーからの相談テーマを共有ファイルに書き込み、相談者とPMの会話を全員でヒアリングし、メンバー全員の相談ごとを共有することが効果的と考える。実際に行っていてメンバー間の信頼関係が強まったことを覚えている。
その4:便利なツールを活用しチームワークを円滑に
プロジェクトを作ったからと言って、チームワークがよくなるとは限らない。コミュニケーションが活発になれば抜け漏れのない情報伝達につながり、業務が円滑に遂行できることはわかっている。しかし、このテレワーク時代になったおかげで、例えば Teams などのツールを使った会議がかなりの威力を発揮していると思う。便利なツールを使うことで、業務の進捗状況や、反省点に気づき、改善点などを積極的に話し合うことができる。これは、メンバーの意見を聞くことで、自身の気づかなかったことに気づくとともに、全体の士気が高まるのである。ただ欠点もあり、何でも相談すればいいことでもない。また、自分で決める前に相談するクセがついてしまっては元も子もないのである。

まとめ

プロジェクト管理では、確実な成果を収めるために、迅速で頻繁な情報共有や、積極的なコミュニケーションが不可欠である。コロナ禍前の業務は、定例会ごとに会議室に集まり、WBSは進捗状態を確認する場であり、一見、会議室に集まっただけで仕事をしているように思っていた担当者も少なくなかった気がする(錯覚?)。

しかし、現在は便利なプラットフォーム上でツールを使って、効果的にプロジェクトが進められるようになった。ワークスタイルがオフィスとリモートでハイブリッドになったが、PMとしてはやりやすい環境になっている。使いこなすまでに時間はかかるが、事例などを参考にして取り組んでもらいたい。絶対に後悔しないと思う。

ただ、気にしてほしいところは、担当者間のコミュニケーションの場を設けることと、オン/オフへの気配りをしてほしい。雑談できる場を作るなど、息抜きの時間を作るのもPMの仕事かもしれない。飲み物を買いに行く気分転換のような行動をネットの世界でも作るべきだと考える。

<< 関連コラムはこちら >>

■情シスを悩ませるルールの違反や形骸化…「記憶」から「記録」で動く組織へ

■情シスの人材確保は難しい…増大する業務負荷を乗り越えるヒント

■リスク事例で読む、情シスにしかできないITのリスクマネジメント

■Withコロナで気がついた、テレワークの継続を前提とした将来の情報システム運用

■情シスに求められるスキル! 聞き手が耳を傾けるプレゼン力を身につける方法

■アフターコロナの時代は情シスの大きな転機になる~チャンスを生かし、今すぐ実践できること~

■「ソロ情シス」だからできるDXの進め方

■会話のキャッチボールから人脈作りは始まる

■システム障害時、パニックから抜けすためには?

■これからの情シス部門に求められる「あるべき姿」とは?

■目標設定と成功するためのタイムマネジメント「時間管理」について

■2022年を迎え、改めて情シスとDXについて考える

■2021年の振り返りと2022年の展望

■業務引き継ぎは、未来から逆算して臨む

■システム障害は、「気の流れ」が変わった時に発生しているのではないか

■情シス部門の必須知識! 経営層の理解を得て予算を獲得する方法

■デジタル変革(DX)に求められる人材はなぜ確保できないのか?

■テレワークにおける重要課題「気軽な雑談」方法とは?

■嫌われる「情シス」と「ベンダー」の共通点とその改善策

■テレワークによるコミュニケーション不足解消と、メンタルヘルスケア

■組織で挑む、ヒューマンエラー抑止(全1話)

■情シス業務の醍醐味(全3話)

■有事に備えよ!(全3話)

熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

関連キーワード