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アフターコロナの時代は情シスの大きな転機になる~チャンスを生かし、今すぐ実践できること~

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. アフターコロナにおける情シスの取り組みとは?
2. ハイブリッドワークスタイルが実現できたのは情シスのおかげ
3. デジタル活用はわかっているが上手くできていない
4. 老朽化したシステムの更新がさらに難しくなった
5. デジタルが苦手と言っている職員はどうしたらいいのか
6. アフターコロナ、人材不足は解消されるか
まとめ

1. アフターコロナにおける情シスの取り組みとは?

皆さんこんにちは。子供の頃の夏の思い出だが、真っ青な空に入道雲が現れ、夕立が気持ちのいいものであった。雨はすぐ止み、セミの声が響いていて実にのどかであった。

近頃の夏はどうだろうか。突然の雨と言っても今までに経験したことのないゲリラ豪雨。しかも降水量が半端ではない。河川は氾濫し、土砂崩れを引き起こしている。先日、住んでいる街の災害情報をチェックしてみた。ハザードマップを真剣に見たのは初めてかもしれない。身近なところに河川があることを改めて知ったくらいだ。大事なことは「いつ逃げるか? どこに逃げるか?」など、避難ルートを家族間で共有することかもしれない。

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新型コロナウイルスの収束後も以前のような対面での経済活動には完全には戻らず、非対面でのIT活用が重要になることが予想される。アフターコロナではITをどのように活用していくかは、情報システムの取り組みにかかっている。一方、IT産業に密接に関わる部品の調達の遅れ、すなわち「供給リスクの顕在化」や、コロナ対策におけるロックダウンがどのように影響していくかを考慮し進めていかなければならない。そこで今回のコラムでは、アフターコロナにおける情シスの取り組みについて考えてみたい。

2. ハイブリッドワークスタイルが実現できたのは情シスのおかげ

アフターコロナのワークスタイルは、在宅とテレワークが融合したハイブリッド勤務が主流になるのではないだろうか。一見、面倒な勤務体制に思えるが、すでにハイブリッドワークスタイルを採用している会社では、オフィスの最適化とコスト削減ができている。

ハイブリッドワークスタイルは、オフィス出社のメンバーが在籍人数よりも少なくなり、オフィスで業務をする人数に合わせた最適な職場づくりができるからである。コスト面では、オフィス利用において定期的に支払うコストの削減につながる。

ハイブリッドワークスタイルを実現した情シスは、ビジネスを支える部門としても貢献したことにならないだろうか。コスト削減が実現したならば、情シスに予算を振り分けてほしいところだ。

3. デジタル活用はわかっているが上手くできていない

新型コロナウイルスの影響を受け、社会全体がデジタル活用を意識し始めた。ところが実際に取り組んでみると、デジタル化が上手くいくところと、失敗するところの格差が出てしまうという問題が顕在化してしまった。

システム老朽化、業務やノウハウの属人化、IT人材の不足などの課題が山積みになっている企業は、コロナ禍の影響によって、デジタル化の遅れが加速してしまった。さらに、急速かつ強制的に社会全体のデジタル化を行った結果、形だけでもテレワークができるようにした会社は少なくない。形だけのデジタル化は利用者側の問題もあり、老若男女問わず、デジタルが「苦手」な社員がいるという課題が見えてきた。

システム老朽化、デジタルが苦手な社員の問題それぞれをもう少し詳しく考えたい。

4. 老朽化したシステムの更新がさらに難しくなった

システムの老朽化が起きる背景を考えてみよう。企業では人事異動が定期的にあり、社員の入れ替えが行われるが、情シスは比較的入れ替わりが少なかった記憶がある。専門的な知識が必要で、誰もが担当できる部署ではないからだ。

しかし、入れ替わりが少ないと、その企業のシステム構築を担当した情シスしか構成や運用方法を知らないことになり、ブラックボックス化しやすい点には注意しなければならない。さらに、システムはメンテナンスを数多く行い、時間を経て肥大化・複雑化してしまうことがある。こうなると、システムの更新をしたくても容易にはできなくなってしまう。

このような状態が長く続けば、システムが老朽化する。老朽化した既存システムは、保守にかける費用も大きなものになってしまう。さらに、既存システムの刷新は、期間もコストも膨らみがちなため、経営層にはリスクとしてとらえられるのだ。

このようなことにならないよう、経営層は情シス人材確保にも取り組むべきだろう。情シス人材の有無は、今後のDX推進にも影響するものと思われる。もし今、老朽化したシステムに頼っているとしたら、今後はゼロから考え直し刷新することが不可欠なのかもしれない。

5. デジタルが苦手と言っている職員はどうしたらいいのか

デジタル化を考えた時に、ITリテラシーが身についていない社員が多いのは事実である。その中でも「デジタルが苦手」という人が多い。そういった社員をどのように教育していけばよいのだろうか。

どんなに優れたITであっても、使いやすいシステム条件とともに、社員が使いこなせなければ業務がスムーズに流れず、意味がない。本来、ITツールは利用者側で習熟してもらいたい。実際、何かあったらヘルプデスクへの問い合わせが習慣化しているのではないだろうか。

社員にとってITリテラシーが必要だという理由は多くある。例えば、アプリケーションを定期的にアップデートするといった基本的な対策だ。デジタルが苦手な社員でも、ITリテラシーが重要であることを、会社の制度として考えるべきである。そのためにもアフターコロナでの新たなワークスタイルがどういうものなのか、情シスだけに押し付けるのではなく、総務、人事の部署も積極的に関わってほしい。

6. アフターコロナ、人材不足は解消されるか

IT人材の需要と供給の差には「求めている要件に当てはまる人材が足りない」という事情がある。アフターコロナ環境においてもIT業界は常に新しい情報に触れ、知識とスキルを身につけていく必要があるため「これらの要件に合う人材」は、ますます減少していくのではないだろか。

しかし、アフターコロナにおけるテレワークスタイルが普及すれば、新たな形のエンジニアが現れる可能性もある。テレワークにより国内外問わず、優秀な人材の需要が増えるので、今までにない意識改革が必要なのかもしれない。

まとめ

アフターコロナと呼ばれる時代は、テレワークを中心にした新しい働き方改革が実現し、企業の生産性を向上させていくことは間違いない。しかし、注意したいのは、今までのオフィスで行っていた仕事のやり方をテレワークでも求めてはいけないということだ。そのためにも、情シスは、業務プロセスやワークフローを可能な限りシンプルな形に見直す役割を担うべきと考える。こうして、業務改革や制度改革などの中身の伴ったテレワークを実践すれば、持続的成長につながるだろう。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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