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情シスはDXを考えていく上で、一体、何をすればいいのか?

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. DX時代に求められる情シスの役割とは? 新年度に向け考えてみた
2. 会社にとってなぜDX推進が必要なのか?
3. DXがうまくいかない理由
4. 社内のデジタル経験を増やす
5. 情シスがDXを考えていく上で、一体何をやればいいのか
6. 情シスは現場からの積極的な参加を意識する
7. まとめ

1. DX時代に求められる情シスの役割とは? 新年度に向け考えてみた

3月は年度末ということで何かと忙しい月である。決算処理も大変だが、新年度への準備作業を行う月でもある。思いつくだけでもやることがたくさんある。通常の仕事もあるので気が狂いそうだ。特に年間目標達成へのラストスパートや、納期が年度内で締め切りのものへの対応が尋常でない。体を壊さないように頑張ってほしい。

さて、今月のコラムだが、情シスがDXを考えていく上で、一体、何をやればいいのか、どのようなステップで進めていけばよいのかを考えてみた。僕自身、最近になってようやく、どこから手を付けたらいいかわかってきた。今後コロナ感染対応でどうなるか不明なところもあるが、テレワークというワークスタイルも新たなDX推進には欠かせない環境と考えていいだろう。このような中でDX時代に求められる情シスの役割は何か? 新年度に向けたテーマになるように解説していきたい。

DXとは「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略で、デジタル技術によってビジネスに変革をもたらすことである。IT化していることがDXと思っている人がいるが、それは勘違いだ。どちらもデジタルツールを活用する点では同じだが、目的の違いがある。IT化は既存の業務プロセスのまま業務効率化と生産性向上を図るという限定的な意味であり、DXはビジネスの仕組みそのものを変革することだ。要はデジタルツールを使うことだけが目的ではなく、業務そのもののプロセスを変えることが必要ということなのである。

DX時代に求められる情シスの役割とは? 新年度に向け考えてみた

2. 会社にとってなぜDX推進が必要なのか?

デジタル化が進む中、既存のシステムだけでは、これ以上の成長につなげることが難しいと考えられる企業が多くある。また、既存のシステムが複雑化し、さかのぼって内部構造を調べても解明できずにブラックボックス化してしまっている企業も少なくない。

複雑化した既存のシステムは、企業にとって成長を妨げるだけになっている。さらに、顧客の消費行動の変化に対応するために、DXの推進の必要性が高まっている。簡単にいうと、「顧客が電子決済で現金を持ち歩かないのに対して、現金対応しかできない会社はいかがなものか?」ということである。2025年の崖はこの部分のことを語っている。

3. DXがうまくいかない理由

個人的な考えだが、デジタル推進に求められる人材は、技術的なスキル(プログラミング)だけでなく、プロジェクト管理ができる人材も必要と考える。2つの能力が掛け合わされることが有効ではないだろうか。実はこの部分が不足しているのでDXが進まないのではないかと思う。さらに、専門組織を作ったものの、しかるべき権限を有した社員を置くことをしていないため成果が出てこないことがわかってきた。

極めつけは、経営層のデジタルに対する理解の浅さだ。従来のビジネスプロセスを変革することが重要なのだが、過去のやり方に固執している経営層も少なくない。コストも時間もかかるので、DXに取り組んだとしても、思い切った施策を実行できずに終わるケースがある。高価なデジタルツールの導入程度に終わってしまい、うまくいかない結果につながっている。

4. 社内のデジタル経験を増やす

DXが遅れている問題の背景に、デジタルで仕事をする経験が圧倒的に不足していることが挙げられる。デジタル化計画で「変化・変革」を社内で切り出すと、変わることのリスクばかり持ち出されてしまうケースがある。DX推進が遅れてしまう原因の1つだ。そうではなくて、社内のデジタル経験を増やせば、情シスが企業のデジタル化を推進しやすくなるきっかけになると言えよう。

5. 情シスがDXを考えていく上で、一体何をやればいいのか

情シスのメインとも言える業務は、相談窓口的な側面が大きかった。これが「守りのIT」だとすると、今後情シスがDXを考えていく上で必要なことは、「攻めのIT」である。しかし、実態は「守りのIT」が日々の運用を占めている。

「このような環境で一体何をやればいい?」――この問いかけに対し、私が常に思っているのは、情シスと社員とのつながりを大事にしていくことである。例えばツールの使い方のアイディアを社員から求めるなど、デジタル化推進は社員との共同作業で行っていくということだ。一方的な周知とかではなく、社員とのコミュニケーションが「攻めのIT」の第一歩かと思う。DX推進が成功するか否かは、現場からの積極的な参加意識が必要なのかもしれない。

情シスがDXを考えていく上で、一体何をやればいいのか

6. 情シスは現場からの積極的な参加を意識する

社員とは、メールやビジネスチャット、オンラインミーティング、ファイル共有、ワークフローなどの、コミュケーション基盤の使い勝手を気にしている人たちである。間違いなく社員のほうがデジタル化の効果を実感しやすいと感じている。

情シスはこの部分のギャップを埋めるため、総務部や人事部などと連携し、組織内で何が起きているか社員からの声をヒアリングしてみるとか、デジタル化による改善を関係部署と話し合いを継続していくことが、DX推進に向けた取り組みではないだろうか。

まとめ

DXを推進していく上では、時代とワークスタイルに合わせた最適化が必要である。例えば、テレワークと出勤のハイブリッド型のスタイルを考えた場合、今まで抱えていた業務を整理し「自分たちがやるべき業務」、「自分たちでなくてもできる業務」を分けてみるのもよい。自分たちでなくてもできる業務に関しては、アウトソーシング活用の検討も必要になってくるのではないだろうか。

繰り返しになるがDXはデジタルツールの導入がゴールではない。デジタル活用を通じて従来のやり方を改革することであって、長期的な取り組みも必要になってくる。そのためにも社員の抱える課題、ビジネス環境の変化を自ら察知し、新しい方法を自ら提案していけるような、「攻めのIT」に加えて「攻めの情シス」の考えに変えていかねばならない。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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