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会話のキャッチボールから人脈作りは始まる

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. 新年度をきっかけに見直したい、情シスのコミュニケーション方法
2. 会話では、相手の話をよく聞く
3. 上手い会話のキャッチボール
4. 人脈作りだけど「名刺交換」でやってはいけないこと
5. 「信頼関係」は、持ちつ持たれつの関係…人脈を広げる3つのポイント
まとめ

1. 新年度をきっかけに見直したい、情シスのコミュニケーション方法

在宅勤務が多い中、最近は出勤の数も増えてきた。自分のことだが、出勤する時の服装が決まらない。どんな格好をしていたのか忘れてしまった。新しい洋服も気になるが購買意欲がわかない。やる気が出ないとは言わないが、今を変えようとも思わない。無駄な行動を抑えるようになった気がする。不要不急の行動を抑える体質になったのかもしれない(笑)。

さて、新年度がスタートし、新しい人間関係が始まるこの時期は、コミュニケーション力の差を痛感する。他人と心の距離を縮めるのが上手な人は、異動してきた人や新しく出会ったばかりの人が相手でも、親しげにコミュニケーションをとれている。一方、いつまでたってもあいさつ程度しか交わせず、心の距離が一向に縮まらないという人もいる。これは会話のキャッチボールが上手くいっていないせいだ。

今日のコラムは、人脈作りに必要な会話のキャッチボール方法と、人脈が情シス勤務でいかに有効であるかをお話ししたい。

2. 会話では、相手の話をよく聞く

情シスにとって「人脈」とは、困った時に助けを求めたり求められたり、1人では得られない情報が得られたり、アドバイスをもらえたり、プラスになる存在であることを意味する

以前の職場(NHK)では、ドラマ番組の演出家がいたり、技術では美術、照明、効果音などの専門家がいたりするなど、プロフェッショナルのデパートのような職場だった。職員が道を極めるためには、見習い期間があり、技術を身に付けるための修行的な努力が必要だった。僕は技術職であったが、アナウンサーに憧れ目指そうと思ったが、即座にあきらめた。希望するのは自由なので、今となっては勘弁して欲しい(笑)。

このような異業種が集まっている職場となると、話している言葉も内容も違ってくる。情シス内での会話も難しいと言われるが、放送現場の言葉も結構、クセが強いものが多かった。しかし、慣れとは恐ろしいもので、その世界にいると馴染んでくる。何を言っているのかわかってくるのである。会話は情報のキャッチボールだが、上手くいくコツは、相手の話をよく聞くことかもしれない。

「何となくわかった状態」は、会話が成立していないのだ。僕が情シス勤務したのは、入社6年目になってからのことだ。情シスは、専門用語が多いこともあるため、仕事上の会話に慣れるまで時間がかかった。「何を言っているのかわからない」と情シスが言われる原因はここにあるのだ。しかし、時間をかけてもわからないものはわからない。専門用語の壁である。

3. 上手い会話のキャッチボール

会話をするうえで大切なことは、相手の話に興味を持つことである。興味を持てば、新しいことを知れたりするからだ。しかし、相手との距離を縮めるためには、相手から情報をただ聞くだけではなく、自分の持っている情報について開示しなければならない。情報をもらうには、自分からも情報を出すというのが原則なのだ。

会話の例を挙げてみよう。
「今日はいい天気ですね」
「そうですね、僕は天気がいいと山に行きたくなりますね。ハイキングの経験はありますか?」
「はい、先週の日曜日に**山に行ってきました」
「一度行きたい山ですね。写真は好きですか」

会話のキャッチボールができるようになることは、人脈形成の第一歩である。情シスにいた時は、いろいろな職場で作業ができたため、会話ができるチャンスがたくさんあった。情シス勤務は、とても素敵な職場なのである。

僕の場合、各部署に知り合いをたくさん作ったおかげで、システム更新作業の時の相談相手になってもらったり、運用制限をかける時などは最初に相談に行けたりした。無茶な要求を聞いてもらえるなど、情シスでの仕事が楽しくて仕方がなかった。人脈は、困った時に助けを求めたり、求められたりできる存在であるからだ。

4. 人脈作りだけど「名刺交換」でやってはいけないこと

コロナ禍による会社訪問が困難になり、対面での名刺交換も減ってしまった。その中で、SNSを通しての仕事に有効な手段がないか考えた。そもそも興味はあったが、前職(NHK)にいた時は、全く見向きもしていなかったのが事実である。

このSNSを使ってわかったことは、Facebookの表面上の「友達」が増えていっても、残念ながら、それがビジネスに直接役立ちそうもなかった。というのも相手にとって記憶に残らない出会いであれば、極端に言うと会っていないようなものだからである。

そう考えると、これまで行ってきた「名刺交換」も「名刺回収」になっていたのではないだろうか。ほとんどが記憶に残っていない名刺ばかりだということに気が付いた。一度だけの対面で顔と名前が一致せず、覚えることができないのは普通なのかもしれないが、情シスはたくさんのベンダーさんとの名刺交換を行っている。よくお会いする方であれば、名刺すら必要はないが、やはりコンタクトポイントは名刺である。誰でもやっていると思うがメモ書きに頼るのが一番だ。

人脈作りだけど「名刺交換」でやってはいけないこと名刺交換だけで人脈形成までいかないなー

5. 「信頼関係」は、持ちつ持たれつの関係…人脈を広げる3つのポイント

「名刺交換」を行ったことで顔見知りになれたが、「信頼関係」が築けたわけではない。人脈作りはお互いに対等な関係での付き合いを維持し、お互いが知り得ない情報を交換し合って得をするように、持ちつ持たれつの関係になることが必要だ。それが「信頼関係」の構築であって、人脈形成につながってくる。そのためのポイントを紹介しよう。

■人脈を広げるためのポイント

① 適度な「距離感」と話を「聞く姿勢」が大切
信頼がおける対等な関係性を保つには、一定の距離感が必要だと思っている。ちょっと関係が深まったからといって、慣れ慣れしくしすぎるのはよくない。そもそも、相手が自分を必要としていない時に近づきすぎる距離感はNG。しかし、離れすぎていてもよくない。何となく気が合うかどうかの境界かもしれない。また、相手の話を聞くことを心得て欲しいが「何でも聞く」ではなく、「聞く姿勢」を大切にして欲しいのだ。このように礼儀正しい姿勢は信頼確保には必要な行動なのだ。
② 人脈作りを楽しむ
人脈作りを楽しむには「この人と会話すると楽しそう」というように、さまざまな人との出会いから想像力を働かせて欲しい。楽しくなければ長続きしないし会話を通じて得られる感覚は違う。楽しさから興味に変わって、会話のキャッチボールも容易になるはず。
③ 交流会やイベント、セミナーに参加する
異業種交流会やコミュニティに積極的に参加すること。共通のテーマで、応援し合える関係になれれば、困ったことがあった場合に親身になって相談に乗ってくれたり、解決の方法を一緒に考えてあげたりすることができる。信頼関係を築くのは人脈づくりに必要なプロセスなのだ。

まとめ

新しい出会いを求めることは自然な行動だ。新しい考え方を取り込むと、視野を広げられるからだ。人脈を作り視野が広がれば、状況を改善し、夢を実現できる可能性もある。出会うための名刺回収ではない。出会った後は、数でなく質を大切にして欲しい。

多くのビジネスチャンスと実現は、生きた人脈がものを言う。その中には有意義な情報が含まれている。人脈作りについて、今からでも真剣に考えてみてはどうだろうか。少なくとも僕が62歳になっても豊かな気持ちでいられるのは、情シス時代に築けた信頼できる方々との距離が保たれていて、今なお楽しい関係にあるからだ。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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