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嫌われる「情シス」と「ベンダー」の共通点とその改善策

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1.30年ぶりに戻ってきた情シスの現場で感じたこと
2.そもそも情シスはどういう部署なのか
3.どうしたら改善できるか
4.嫌われやすいベンダーについて
5.まとめ

1.30年ぶりに戻ってきた情シスの現場で感じたこと

僕が情シスで勤務した最初の年は、35年前の1986年になる。退職するまで数十回の異動があり、いろいろな職場を経験してきた。どういう運命か、あと少しで定年という間際の2016年に、最初に働いていた情シスに戻ってきたのだ。当然、人事が決めることなので偶然ではないが、正直、嬉しかった。同時に、実際仕事ができるか不安であったことを覚えている。

この異動までの30年間は、番組技術の仕事が中心だった。番組といってもコンテンツを作る現場ではない。技術の仕事が中心であり、システムにはネットワーク技術がからんでいるため、情シスのマインドが消えることはなかった。30年前の情シスで身についたものがよかったのかもしれない。

当時、人事異動に反発はあったものの、その流れに逆らうことをせず、新しい職場での立ち上がりは早かった記憶がある。全く結果論だが、人事に対して感謝している。時には人事異動に不満はあると思うが、新しい現場への気持ちの入れ替えを早くすればするほど、結果がついてくると実感している。最初は嫌だと思っても、早めの改善が大切ということだ。

今回のコラムは、2016年に情シスに戻った時に感じたことを中心に書いた。なぜ、今になってこのようなコラムを書く気になったかというと、現在はベンダー側の人間になったこともあり、これまで情シス、利用者、ベンダーの全てを経験してきたことを皆さんに伝えることが役に立つと思ったからである。ぜひ、最後まで読んでもらえたら嬉しい。

さて、僕が情シスに戻って感じたのは、情シスは特別な仕事をしている部署だと思いながらも、何かよそから嫌われているのではないかということだ。システムを利用する側と管理する側(情シス)とのコミュニケーションが上手くいっていないと感じたのである。それと、密接にお付き合いしているベンダーについても共通したものがあると思った。

この問題は、システムが成熟(安定)するまでの問題かと思っていたが、実際はそうでもない。これは、情シスの部署以外にも同様の業務に携わる部署が多くなり「隠れ情シス」的な専門家が増えた結果であると思った。情シスの立ち位置を改善することは時間がかかる問題だが、今回のコラムを読んで、個人的に改善できるところは、今後の行動に生かして欲しい。

2.そもそも情シスはどういう部署なのか

情シスという部署が独立している場合と、中小企業のように、コンピュータに少し詳しい人が、暗黙的な担当者になっている場合もある。業務として社内のシステムを運用・保守している部署もある。いずれにしても情シスがパソコンやネットワーク、サーバと全社共通システムでメールやホームページ、基幹システムのお守りをしている。

あくまでもイメージだが、情シスの体制を図―1に示す。曖昧なポジションではあるが、経営的で機密的な業務を扱うため、より経営者に近いイメージだ。別の言い方をすれば、業務の効率化、新規事業支援だけでなく、経営方針の実現に向けて、経営に直結した業務を行うところではないだろうか。少なくとも僕は今でもそう思っている。

図―1

ところがだ! 実態はどうだろうか? 図―2のように、経営に関わるシステム変更や新しい取り組みになると、現業部門の開発者や新規プロジェクトが発足し、情シスをメインとした体制にはなっていない気がする。正直、この部分に情シスが積極的に関与しているところをあまり見たことがない。

図―2

このような体制では、社内のインフラ環境整備に特化するようになってはいないだろうか。情シスは、明らかにインフラ整備担当になっているのである。

インフラ周りの整備が重要なことはわかっているが、情シスと名が付く限りは、開発をメインに担当したいのは本音ではないだろうか。一方、インフラ構築は、運用マニュアルの整備、リリース実験環境、本番リリースによる運用制限、バグ管理など、大変な仕事がある。

このような環境で「IT化推進は情シスにかかっている!」という経営者がいたら本末転倒になる。やりたくないとは言わないが、現状の運用管理をやっている中で言われた場合、ストレスもたまるのは仕方がないし、周りに八つ当たりをしているわけではないが、難しい顔になるのもわからないわけではない。恐らく、大きな会社であれば情シスにも開発部門があり、新規案件に関わるエース級の職員もいるとは思うが、全てがそうはなっていないということだ。

このように、体制としての情シスと、実際の業務内容に差が出てきているのではないかと思った。さらに、嫌われる理由として2点まとめみた。あくまでも個人的な意見である。

情シスが嫌われる理由その1:融通が利かない

悪気はないが、日常的にルールを重んじ、書類上での審査など運用手続きを重んじるところがある。利用者側からしてみたら、わからないから聞くことが多く、またルールも知らないで使用していると、頭から「使用禁止です」と言われる。だったらどうしたら使えるのか? と聞くと、「これは運用禁止になっています」と言うだけ。

利用者からすれば、どうしたら許可が下りるか、下りるためにどうしたらいいのかを知りたいのに、いい考えを示してくれず、NGの部分だけを主張してくるなど、融通の利かない部署と思われている。情シスからしてみれば、マニュアル通りにすればいいことだ、またはマニュアルも読まないでいきなり相談に来るので話にならない、と主張している状況だ。

全ての情シス担当者の意見が同じでないことも厄介だ。「AさんはOKって言っていた」となると、面倒くさい、時間がかかる、どうなってんだ! ということになる。

情シスが嫌われる理由その2:利用者側の業務や新技術への知識不足

情シスは最先端の技術や知識を持っているように思えるが、これは大企業でない限り、何世代か前の独自システムの面倒を見ている、自社の情報システムしか知らない「超ガラパゴス」な人たちかもしれない(ガラパゴスな人が悪いというわけではない)。

一方、利用者側は自分たちの業務に深い知識と経験を持っているし、情シスにはそれがない。要するに、業務に対する知識と経験は利用部門に及ばないし、新しい技術やシステムへの知識についてはベンダーの技術者に及ばない。

原因について改めて考える人が経営側にいるのだろうか。実際、情シスは板挟みになっている。利用者側やベンダーと同様のスキルバランスがあれば問題はないのだが、情シスだけの問題ではなく会社経営の問題としてとらえるべきだ。

3.どうしたら改善できるか

情シスに対する考えは、ITを使った「コスト削減」がミッションになっているところが多い。そして、そのためだけの管理、統制を行っている部署になってはいないだろうか。

改善のポイントは、ITを活用することで「利益拡大」につながることをミッションにすればいいのである。つまり、情シスは「プロフィット部門」になる必要がある。

しかし、決意があってもすぐにできるものではなく、いかに情シスが「知識創造部署」として生まれ変われるかにあるのではないだろうか。また、できるところから実践していくと、意外に利用者からの印象が変わり、頼られる情シスになっていくと思う。

ポイントは次の5点になる。 利用者部門の特性を考え、運用ができる方法を考える集団になる セキュリティに関することは仕様作成の段階から含める 常に最新の技術情報を入手し、技術者のスキル向上の活動をしている ベンダーとの信頼関係を構築し、相談相手を多く作る 情シスから「お願い」だけでなく、役に立つ情報発信を積極的に行う

実は、普段の会話ができるかが鍵になるかもしれない。情シスは申請時だけ会話をする存在ではよくない。ぜひ、相談窓口を作るなど、課題や対応事項が決まっていない段階から話をする情シスになって欲しいのである。そうすれば、新しい情シスへと発展していくはずだ。

会社のポータルサイトを使った情報発信や、普段どんな仕事をしているか紹介するのも効果的だ。「自分たちは嫌われていない」と思っていてもぜひ試して欲しい。

次に、ベンダーとの関係について、嫌われやすいベンダーについて僕なりの考えを述べてみたい。現職はベンダー側にいるので、自分に言い聞かせているようなものだ。

最も注意が必要なことは、お客さまを素人扱いしないことである。ベンダーが思っている以上にお客さまは勉強していて、ネットからの情報が豊富ということを前提に接しなければならないということだ。

4.嫌われやすいベンダーについて

特定の人間に当てはまるか、社風なのかわからない部分はあるが、下記の項目は嫌われやすいベンダーの特徴ではないか。

訪問先で打ち合せがある場合、情シスがどういうスタンスで参加しているか想像できない 経営管理的な視点がない(情シスの相手が役員だろうが、普通に接している) 経理的な処理について知見がない 言われたことしかやらない とにかくタイミングが悪い 案件があるときにしか来ない(注文書をもらったら来なくなる) 質問ばかりする(説明ばかりして、提案しない) 配慮が足りない 世間話ができない 言い訳が多く、他人のせいにする

これは、ベンダーでなくても嫌われるタイプではないかと思う。しかし、この中で一つでも当てはまるとNGなので、嫌われる時は一瞬かもしれない。

まとめると、プロと呼ぶには程遠い人、売上至上主義だけどビジネスの常識がない人は、嫌われても仕方ないかもしれない。よく、お客さまの目線で話をすることが大切というが、目線を合わせるだけでは何も解決できない。目線だけでなく、情報量と実現力にかかってくるのである。

たしかに、ベンダーはお客さまに常には寄り添えないかもしれないが、どうしたらタイミングが図れるか、を考えて欲しい。難しいと感じる人はたくさんいると思うが、お客さまは今何を望んでいるのか、優先順位は何か、といった想像力を働かせて欲しい。今回は詳しく触れないが、リレーションシップを意識することが成功の秘訣だろう

次に、好きなベンダーについて挙げてみたい。

いいタイミングで、いい情報を持ってきてくれる
(世界動向、製品情報、セミナー、各種事例)
いい機会を与えてくれる、人脈形成を意識してくれる
(会いたかった人に会える機会を作ってくれる)
定期的に連絡・会いに来てくれる
(情シスは課題が多いことを知り、相談の時間をくれる)
最後まで一緒に苦労してくれる 技術者・エンジニアを同行してくれる 本当のことを言ってくれる いつも同じ行動をする メールだけでなく、電話をうまく使う

こうしてみると、全く難しいことではない。積極的に雑談や余談を差し込んで、コミュニケーションが自然にできる人は、好かれるベンダーに成長するのではないだろうか。情シスもセオリー通りに会話するだけでなく、相手に思いやりと余裕を持って接して欲しいのである。

相手の立場を考えたら、わからない場合は「いつでも」相談してください、というのが信頼を作るのではないだろうか。この「いつでも」が、「相手に寄り添った仕事」につながるのである。

また、「情報を押し付ける」のではなく、「困っている事例」を紹介して、「新しい問題に取り組む姿勢」が必要なのかもしれない。いずれにしろ謙虚さが必要なのである。

5.まとめ

今回は、情シスが会社の中でどのようにしていくべきか、少し厳しい意見もあったが、周りからの見え方と、自らをどう変えていくべきかを解説した。ベンダーも、自分の成績だけを考えるのではなく、お客さまの立場を考え、寄り添う姿勢が必要なことを理解して欲しい。

しかし、寄り添うにも相互の信頼関係が先で、そのためにはいきなり本題に入るのではなく、世間話、雑談、余談などを上手く取り入れてコミュニケーションを多くするということが大切なのである。そのような信頼関係ができれば、多少無理を言っても嫌われることはなくなると確信している。

そして、ベンダーはいつも同じ対応を心がけて欲しい。プロと呼ばれる以上は、専門知識について多角的な知見と、豊富な対処方法を学んで欲しいのである。引出しを多く持つことで、「この方法はNGです」ではなく「こうしたらOKです」に変わるのではないだろうか。

情シスの仕事が、いつしか3K(汚い、危険、キツイ)職場と呼ばれるようになってきた印象だ。仕事内容は確かにキツイが、以前は仕事の希少性が彼らを支えるモチベーションになっていた。しかし、いくら成果を挙げても評価されない、出世が期待できない、そんな環境がIT部門という印象である。全てがそうではないけれど、今こそ変わるチャンスだと思う。

全ての人が変わればハッピーだが、まずは自分から心を入れ替えてみてはどうだろうか。人脈も含め、人とのつながりが鍵になる。現状を維持するだけでなく、時代の変化を楽しんでチャレンジして欲しい。僕は、今まで以上に皆さんにエールを送りたい。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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