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これからの情シス部門に求められる「あるべき姿」とは?

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. 情シスが人気の職場になる方法とは?
2. レガシーな大企業ほどデジタル化への拒否反応が強い
3. 情シスは「従来と異なる仕事が求められている」が、その実態は?
4. 情シス部門が「わかりにくい職場」と言われる根本の原因
5. 情シスに興味を持ってもらうために実行した8つのこと
6. 情シスが変わるためは、アクセルとブレーキを同時に踏んではいけない
7. まとめ

1. 情シスが人気の職場になる方法とは?

情シスには新人が来ない。だから後輩もできない。システム対応やヘルプデスク業務をしていても「できて当たり前」と言われることが多く、人事評価がわかりにくい。別の職場に異動したくても、後任が来なければ希望が通らない…などなど、かなりネガティブ思考だが、ほとんど当たっている。

僕は、情シス業務が好きで異動希望を出し、希望通りの結果になって喜んでいたが、僕が異動してきたことで情シスから出ていくことになった職員がいた。その職員が喜んでいたのかは知らないが複雑な気分だ。確かに情シスは暗いイメージと、やらされ感が強く、ネガティブ思考になるのもわかる。

今回は、「情シスは人気職場になれる」というテーマでどうすれば変えることができたか、紹介したい。いつもの通りお茶でも飲みながら気楽に読んで欲しい。

なぜ、人気がないのか? その理由としては、「守り」が強く、業務内容は他の職場とは違っていて専門的な部分を説明するにも時間がかかり、理解促進に面倒なところがあり、誰も手を付けていない部分が多いからではないだろうか。もしかすると、実は人気がないどころか嫌われているかもしれない部分もあるのだとしたら、その部分を知るところから始めたいと思う。

2. レガシーな大企業ほどデジタル化への拒否反応が強い

情シス部門は、DXをリードできるポジションにいるにもかかわらず、デジタル化への拒否反応を感じている。一例になるが、情報セキュリティやコーポレートガバナンスを盾にして「クラウドサービスは危険だ」などと思ってはいないだろうか。目の届かない箇所について責任が持てないなどの理由があり、気持ちもわかるが、日本企業におけるDXの遅れ問題の背景の1つである。

レガシーな大企業ほどデジタル化への拒否反応が強い印象だ。ましてやソロ情シスの職場では、どうしたらいいのか。バジェット(予算)が少ない中で検討すらできない状況ではないだろうか。

3. 情シスは「従来と異なる仕事が求められている」が、その実態は?

コロナ禍の影響もあるが、情シス部門に求められる役割が変化してきている。「時間や場所に制約されない柔軟なワークスタイル」、「イノベーションにつながる、攻めのIT」などへと変革する機運が高まり、情シスには業績に貢献できるような斬新なIT サービスの創出が期待されるなど、従来とは異なる仕事が求められるようになってきた。

ところが実態は、情シス部門が「他部署からは何もしていないように見える」などの声が聞こえる。それはなぜか。自分が感じている大きな理由は、業務内容が不明瞭なことだと思う。

ITの知識が少ない職員からすると、
「基幹システムの運用や保守作業って何をするの?」
「そんなに時間がかかるの?」
「現状で足りている作業に、今までと勝手が変わるようなIT戦略って必要?」
…など、不明な点が数多く、いつも運用制限の連絡やら、障害対応の報告などばかり実施している職場に映っている。何をしているかがわからないからこそ、復旧対応やトラブル対応が遅いと不信感を持たれるのだ。

情シスは「従来と異なる仕事が求められている」が、その実態は?

特に、ソロ情シスで運用していた場合には、業務をこなしきれないだけではない。職員から非難を受けるだけではなく、頼れない情シスと思われ、全くやる気が出ない状態になってしまう。このような状態では、斬新なITサービスの創出ができるわけがないのだ。

またこのような時、情シスにかけるコストについても問題視されやすく、新たな人材を回してもらいにくくなり、結果、1人で多くの業務を抱えるという負の循環に陥ってしまう。さらに、システムを知れば知るほど、その場所からの異動が難しくなるのも当然だ。

情シス側に問題がないかというと実際そうでもない。何をしているかはわからないけれど、年間予算はそれなりの額を確保しているイメージが大きい。業務内容が不明瞭なことで、コストに見合う働きをしているのか、コストに見合うだけのメリットが会社にあるのかと疑問に持たれることになっている。

これらの問題は10年ほど前の職場でも同様だったことを覚えている。テクノロジーの内容には違いがあるが、情シスという職場を変えていくことで、見えてくるものがある。

4. 情シス部門が「わかりにくい職場」と言われる根本の原因

そもそも情シス部門が「わかりにくい職場」と言われる根本の原因は何か?…その答えは簡単である。情シスが普段どんな仕事をしているか、どんな職員がいるのかなどの紹介が足りないのである。

考えて欲しい。接点と言えば、セキュリティアップデートやルールが変更したなどの周知の時、新PCの配布の時、ヘルプデスク対応の時などの接点がメインであれば、俗に言う「縁の下の力持ち」状態なのである。ましてやわかりづらい専門用語で会話をしているため、情シスもいちいち説明するのが面倒なところもあるから余計に「わかりにくい職場」になっているのだ。

情シスは専門知識がなければ務まらない職場であるし、日々勉強することで最新の状態を維持できている。会社にとっては要の職場なのだが、見られ方に問題があるのだ。

5. 情シスに興味を持ってもらうために実行した8つのこと

自分は、情シスへの異動希望を出し、気持ちが前向きだったが、情シス内には「なぜ情シスに来たのかわからない」と言った職員が多かった。人事異動については必ずしも個人の希望通りにいくものではないが、情シスに来ると中々出られないイメージが強かったからだ。

情シス業務のモチベーションは難しい。「できて当たり前」的で、褒められる行動を見つけるのが難しい職場だと思う。その中でどうしたら人気が出る職場にすることができ、人事評価も上がり、異動希望者が増えるようにできるのか。僕が2013年に転勤して間もなく行ったことを紹介する。

<情シスの理解促進に行った項目>

(1)情シスニュース(サイバーセキュリティも含む)定期便の発行
「情シスニュース」を定期的に発行した。今さら聞けないPCの常識についての連載記事や、情シス専門用語の辞書を掲載するなど、わかりやすい構成を心がけた。

こだわったことは、【写真-1 メモ(情シスニュースを発行する前に、考えたメモ)】に書いたように、世間のニュースから発している注意喚起をそのまま使うのではなく、「内部で実際に起きたトラブル事例を紹介し、対策方法について具体的な対応指示を出すこと」である。狙いは、一般的なニュースでは、注意喚起が意外に自分のこととしてとらえてもらえずに効果が薄いので、それの解消だ。常に忙しい職員には、具体的に指示を出してあげた方が効果的なのである。

ニュース記事を定期的に発行することで、研修資料としても使えるようになり、新人研修や、コンプライアンス研修などにも使用することができた。

【写真-1】メモ【写真-1】メモ

(2)広報部発行の月刊誌に情シスによる特集企画を提案し、連載記事を投稿
連載記事の中には、情シスキャラクターを登場させ、親しみやすい印象を持ってもらう狙いもあった。キャラクターは戦隊ものだが、個人的な思いもあって【写真-2】のようなデザインになった。セキュリティ対策では、保安官の格好をさせた。

【写真-2】 ※著作権があるのでコピー厳禁でお願いしたい【写真-2】 ※著作権があるのでコピー厳禁でお願いしたい

余談であるが、【写真-3】は、1976年16歳の自分である。その日は遊園地で行われた戦隊ショーのアルバイトをしていて、科学忍者隊ガッチャマンの敵「ギャラクター隊員」の役と、秘密戦隊ゴレンジャーのアオレンジャー役を演じた。小さな子供からはサインを求められ、悪いことをした記憶が残っている。と言うのも「アツミ」とサインしたからだ(笑)。なぜ、戦隊ものを情シスに取り入れるかがおわかりかと思う。

【写真-3】科学忍者隊ガッチャマンの敵ギャラクター隊員(筆者)【写真-3】科学忍者隊ガッチャマンの敵ギャラクター隊員(筆者)

(3)ヘルプデスク担当者のスキルアップ勉強会を実施した
ヘルプデスク担当者に向けて研修会を行った。内容はケーススタディが中心となった。演習の企画から実行まで専門家に外注した。少しお金はかかったが、素人が企画するのでなく、専門家による正しいコンタクト方法やエスカレーションを見つけさせる狙いである。同時にヘルプデスク担当者が思う不満や改善点を聞くことができ、普段気が付かない点を発見することができた。
(4)情シスに関する規則やルールについて勉強会を全国出張で行った
勉強会は、IT規則の周知と職員のスキルアップがメインであるが、現場の職員から出た情シスに対する質問や要望を、その場で即答できるような情シスの心構えや準備に力を入れた。
また、ITを駆使して番組活用にチャレンジしているところには、的確なアドバイスを行うなど、今までの「何でもNG」ではなく、「こうしたらできる」をモットーに行った。
(5)放送業界では民間放送、ケーブルTVとの情報交換を積極的に行った
さらに、コミュニティに参加することで異業種交流の機会が増え、多角的な考えと人脈形成につながった。
(6)外部講師によるセミナーを数多く企画し、全職員対象に行った
ベンダーを通じて専門家による講演を数多く実施し、情シスの認知度を上げた。興味がある業者さんと職員とのマッチングを行い、番組開発について支援できる情シスに生まれ変わっていった。
(7)外部有料セミナーへの積極的参加や、外国で行われるカンファレンスへ海外出張を実現させた
情シス、セキュリティ資格を受験するまでの学習や資格取得のための短期留学を実現させた。
(8)内部に研修センターがあり、「情シス養成講座メニュー」を作った
今までは技術者を中心に研修を行ってきたが、事務系の職員についても同様に研修を実施することにし、情シスが教材を作り講師を担当するようにした。

情シスの社内への理解促進が目的であるが、このように情シスが常に何かをしていて、それを発信し続けている状況を作ることはプラスに働くようになる。例えば、障害が発生し対応する時や、制限事項を依頼する時にもスムーズに「事」が運ぶようになるのである。ヘルプデスクへの職員の反応も、劇的に変化するのである。

情シス部門の実態を認知してもらう努力や活動をすることは、「情シス=わからない職場」と思われずに働くために大事な点である。情シス部門に協力しようという姿勢を持ってもらえる方が、お互いのモチベーション向上につながり、仕事のパフォーマンスアップにもつながるのである。

6. 情シスが変わるためは、アクセルとブレーキを同時に踏んではいけない

冒頭に話をしたが、情シスは、セキュリティやコーポレートガバナンスを重んじるばかりに、柔軟な対応ができないことはないだろうか。

情シスにおける能力の発揮については常に、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる。どれだけ優れていても、どれだけ今後のIT戦略で活躍できるポジションにいても、変革にチャレンジすることに対して「あれもダメ」、「これもダメ」と言ってしまってはいないだろうか。どれだけセキュリティやプログラミングに詳しくても、それが儲けにつながらなければ意味をなさないことは知っているが、本能でブレーキを踏んでしまっているのである。この部分については我々、情シスの「心の入れ替え」が必要とも言える。

わかりにくい職場を改善させるためには、理解促進に向けた取り組みをすることで、情シスのイメージをかなり変えることができる。しかし、第2の課題とも言えるブレーキは、思わぬ弊害を発生させることがある。それは、各事業部門の人たちが独自に必要なITツールを導入してしまい「シャドーIT」ができ上がってしまうケースである。残念なことだが、余りにも厳しい情シスが存在すると自然にできてしまう現象のようだ。シャドーITが生まれる裏には、必ずITに詳しい職員がいるので、隠れ情シス職員と言ってもいいだろう。冗談抜きでこの状態はよくない。情シス部門は、自らが率先して改革をリードできるポジションにいるにもかかわらず、できていないことを示しているからだ。

別な言い方をすると、内部の特殊仕様に合わせた仕組みを構築した結果、ガラパゴスで難解な仕組みができ上がってしまってはいないだろうか。この部分がブレーキをかけてしまう大きな原因なのである。

まとめ

情シスが人気ある職場に生まれ変われる方法について紹介した。効果としては、情シスの要員増が実現し、転勤したい職場に変わるなど異動希望者が著しく増えてきた。
情シスの理解促進を限りなく継続的に行って欲しい。情シスには優秀な人が集まる。これからのDXをリードするポジションになることは間違いないからである。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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