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情シス不足解消策は採用のみにあらず! 組織内からできること

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. 組織内から考える、情シス現場の人材不足対策
2. 情シスの課題は、常に人手不足に直面している
3. 情シスはどのように変わっていかなければならないか
4. IT業界のイメージは変わってしまった?
5. 情シスの人材不足を解消するために行うべき対策とは何か
6. まとめ

1. 組織内から考える、情シス現場の人材不足対策

暑い季節がやってくる。薄着になることも関係しているのか、身体の調子も整ってくる。もしかすると、外に出る機会が多くなったからかもしれない。休日はなるべく人混みが少ないところを散歩して綺麗な空気を吸う日課は変わっていない。初夏の匂いを感じリフレッシュすることを大切にしている。しかし、夏場には30℃を超える日が当たり前のようになっているのは温暖化の影響だろうか。暑さ対策は難しいが、紫外線対策には日傘を利用することにした。

今回のコラムは、情シス現場での人材不足の課題を解消するのにはどうしたらいいか、人事採用のところだけでなく、組織の内側からできる改善ポイントについてお話ししてみたい。前職であるNHKを退職して、現在はセキュリティ会社に転職し今年で5年目になる。採用を決める担当も任されたが、サイバーセキュリティの分野でも人材が集まらないことを実感している。僕の専門は情シスであるため、採用面談では、ネットワーク技術や通信技術の経験があるかなどを聞くことが多い。セキュリティを担当するにしても、この部分の知識があるかないかが、カギになっている。

営業職の採用でも、情シスにどれだけ携わってきたかを聞くことにしていた。営業は、商品の説明だけではない、お客さんに寄り添った言葉で会話ができるかどうかが大切であり、営業であっても技術的な側面を持ったコンサルティングができる営業マンになってもらうのが理想と思っているからだ。現在の僕の職種は技術であるが、部署は営業推進に所属しているのだ。

2. 情シスの課題は、常に人手不足に直面している

テレワーク環境の整備が少し落ち着いてきた中で、セキュリティ業務も境界型の対策からゼロトラストへの取り組みに関心が高まってきた。情シスの仕事にも変化が出てきたことは皆さんも認識しているとおりだろう。情シスはセキュリティなどの業務を行いながら、新たな仕事として経営とIT戦略との関係が重要視されていることから、DX推進への関与が増えてきてはいないだろうか。

情シスが行うべきコア業務が見えてきたが、一向に日常業務として行っている運用や管理業務も行わざるを得えない環境になっている。ノンコア業務はアウトソースできる会社であれば、何も問題は起きていない。経営側から「業務上の工夫で何とかできないか?」などと要求されてはいないだろうか。そうなると兼務の仕事が増えて、万年人手不足の環境が生まれるのである。

先日、あるセキュリティ会社の営業と会話をした内容が印象的であった。「今までのソリューション単体販売では、運用については担当社員が行っていたので、単体で売ることはできたが、現在は運用込み(マネージドサービス)のサービス提供を求める声が多くなった」と、語っていた。ユーザ側としては、どんなによい製品であって導入したくても、運用するためのリソース(人材)がないので見合わせるケースがあるということだ。運用を含めたサービスになるが、これもリソースの問題がからんでくるため同様の課題なのである。

情シスにおけるIT人材不足の課題は、対応できる人材の数より、デジタル化に変わっていくスピードが速くギャップがあるということである。日本の人口減少と少子高齢化により、労働生産人口が減少していることが背景にもあり、その中でITエンジニアを確保する難易度が上がっている現状だと認識している。

情シスのコア業務を行うにあたり新技術に対する学習時間の確保が重要である。経営者は情シス業務の現状を知り、IT戦略を推進するための学習制度を怠ってはいけないのである。この部分は人材不足の課題だけではない経営課題として捉えて欲しいところだ。

3. 情シスはどのように変わっていかなければならないか

情シスだけの問題ではないが、他社で働いている情シス社員との情報交換や、課題解決に向けたワークショップに参加するなど、情シスにおける技術的な相談は、常にベンダーに頼るだけでなく、仲間を作り課題解決を行うことも大切かと思う。

さらに、新たな技術革新についていけるエンジニアが自ら勉強できる環境を整備するところにある。IT技術はハイスピードで進化していて専門性が特に高く、知識やスキルの習得には時間がかかるため、即戦力として活躍できる最新技術をもったITエンジニアが対応することが求められる職場なのである。

前職であるNHKの情シスでは、定期的な勉強会を行っていた。ベンダーからの実機を使ったものは録画に残し、全員が見られる環境を作って学習に役立てていた。実際、色んな製品を比較してみることで、ユーザ目線の使い方に気が付くなど、ヘルプデスクの担当者も集めて勉強会を実施していた。普段では少なかった情シスのメンバー同士の会話もできて、全体のモチベーションアップにもつながった。仮に1人の情シスであっても、他社との情報共有を大切にしていくべきだと思う。

→これからの情シス部門に求められる「あるべき姿」とは? 

4. IT業界のイメージは変わってしまった?

IT業界といえば、以前は華やかなイメージで将来的にも期待ができる人気の業界とされていたが、最近は情シスの担当者も少なく、少人数での現場が注目され「仕事がキツイ、帰れない、給料が安い」といったネガティブなイメージが出てはいないだろうか。ネットの影響もあるがマイナスのイメージを受けているのも事実なのである。

また、新卒のエンジニアは習得したIT技術を活かしてフリーランスとして働いたりするケースが増えていくと予想できる業種になっている。IT業界で仕事をすれば、色んな経験ができて、資格も取得できるイメージだったが、労働環境が過酷なイメージに変わっている。ある意味、ハイスペックのPC環境が個人でも整えられる時代になっていたりするため、わざわざ会社に勤めなくても仕事ができればいいと思える環境になり、人材確保の難しさにつながっているのかもしれない。

5. 情シスの人材不足を解消するために行うべき対策とは何か

・社内での教育体制を強化する。

教育体制を強化するといっても、スパルタ式に変えるということではなく、前職NHK時代に行っていたのは、本人のスキル強化にプラス科目を追加した学習の考えである。例えばネットワーク監視業務の習得+クラウド技術という感じだ。基礎知識の習得はもちろん必要だが、1つの専門知識だけでなく、プラスαの技術を身に付けてもらい、知識の幅が広がることを目的にしていた。兼務するという考えとは違っていて、仕事上で必要な学習であり、本人のやる気にもつなげたいからだ。

情シスに限った話ではないが、エンジニアの採用では、情報系や工学系の出身者や、スキルと経験のある転職者を探している企業が多いが、潜在的な能力や人柄に着目するポテンシャル採用も積極的に行うことも現実的な話である。情シスの仕事が工学系なのは間違いないが、DX推進や、AIを使った仕組み作りは、人事部側でも鍛える仕組みを作るべきである。あくまでも個人的な意見だが、DX推進に向けた人材確保に関しては、経営に関係する企画、総務、人事担当者向けのIT勉強会を行うことも必要なのかもしれない。

→情シスの人材確保は難しい…増大する業務負荷を乗り越えるヒント

・待遇改善

「キツイ、厳しい、給料が安い」という新3KのイメージがあるIT業界だが、ネガティブな印象をポジティブに変えるには、待遇・労務環境を改善することが重要。情シス業務は資格取得が重要ではあるが、資格は会社の資産になるため、処遇がよくなるような改善は非常に有効である。在宅勤務の導入などで毎日の残業がわかりづらくなってきている。新しい働き方の大きな課題である。成果物を作るための時間管理がルーズになりがちだ。特に、休日に関係なくシステムの問い合わせがあったり、休日出勤が度々発生しているような場合の改善について経営者が真剣に考えなければならない。待遇改善は会社の売り上げに影響していることはわかるが、一番に取り組むべき課題かもしれない。

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6. まとめ

以前からシステムは人に付いてくる、と言われている。今も変わっていない。IT人材環境の永遠の課題かもしれない。システムが安心安全の状態になるためには、時間もかかるが、担当者の思い(魂)が入り、システムに人が付いてくる状態になるのが必要だと思う。愛着がわいてくる。情シスの業務経験のある人にはわかってもらえると思う。

新しいIT技術を習得するには、時間とお金がかかる、社員のスキルが会社の重要な資産になっていることを経営者は忘れてはいけない。スキルや成果が上がれば給与に反映されるように、人事評価の基準や制度を見直し、わかりやすい評価基準を作り、明示すべきである。離職を減らすためには何をすべきか、社員のモチベーションを維持・向上させるにはどうすればよいのか、人事採用の時だけでなく職員制度においても働きやすい環境を目指していくことが大切なのではないだろうか。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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