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情シスの業務から責任の醍醐味を味わう!

情シス
熱海 徹 氏

長年、NHK の技術畑を歩み、情シスとして数々の業務に携わってきた熱海 徹(あつみ とおる)氏の連載コラムをスタートします。情シス向けのコラムを書いてもらうにあたり、正直、どんな人なのかなーと興味と不安もありドキドキで、肩書を見るとちょっと構えてしまいますが、その印象は物腰が柔らかいとても紳士な印象の方でした。
「一人でも楽しめる職場」
「情シスこそモチベーションが大事」
「企業の成長には情シスが一番関わってきたんですよね」
と、情シスとして体験してきたエピソードを交えたお話を少し聞いただけでもとても共感と親近感を覚え、「この人の言葉なら読んでみたい!」と確信しました。
きっと、情シスの皆様に役立つお話を届けられると思います。
初回は情シス仕事の"醍醐味"がテーマ。お楽しみください!

この記事の内容
情シスの仕事は難しい!
情シスの仕事の変化に気づいて欲しい…
IT 環境の実情
情シスにとってシステム開発、運用、保守は重要な仕事だ

情シスの仕事は難しい!

情シスの仕事は難しいが、その中に日々緊張感があることを楽しむべきである。システムの異常、その予兆に気がついた時のやりがいは、情シスの仕事の醍醐味ではないだろうか。少なくとも、小さくガッツポーズがしたくなる瞬間だ。

時に、同じ問い合わせが複数のユーザから来ることがあり、そんな時はなぜかついていないと思った。例えば、パソコンの具合が悪いと言われ、部屋まで行って原因を追究していると、先に「何分かかりますか?」と、ユーザに聞かれる。それにしても最初から邪魔者扱いされているような気分だ。少し多めの時間を告げるが、悪気は全くない。その一方、ユーザの目の前からいなくなってしまった方がよくも思える自分がいる。
どのような操作をしたか?と聞いても、いつものとおり電源を入れたら立ち上がらない。確かに電源が入らない。いつものとおりと言われても、その操作を見たことがないので、正直なんとも言えない。こんな時は冷静になって電源から疑ってみることにしている。
やはり電源アダプターのプラグが抜けかけていた。正解だ!電源もバッテリーも切れていれば立ち上がらないわけだ。故障ではなかった。ホッとして部屋に戻るが、また電話がきた。休めない……。

このようなやりとりは、少し昔の話のように見えるが、情シスを取り巻く状況は変わっていないように思える。情シスは企業にとって重要な役割を果たしていると言える一方、情シスの存在意義が問われているように感じる。社内業務を行うために必要なはずの情シスが、なぜ「なくても良い」と思われているか? 障害対応は大切だが、ネガティブな内容に思えるのも事実である。

情シスの仕事の変化に気づいて欲しい…

情報システム部門は、企業が業務で使用するサーバやネットワーク、パソコンなどを運用する部署である。情シスが取り扱うシステムは大きく分けて、基幹システムや、メールソフトやグループウェアなどのコミュニケーションシステムなどがあり、いずれも業務効率を上げるためのものである。基幹システムとは、企業の根幹をなすシステムのことで、人事、会計などの重要な情報を管理するものである。社内システムは一度導入すれば終わりというわけではなく、安定運用を行うための日常の定期的なメンテナンスは最重要業務となる。加えて、職員に対するソフトの使い方の説明や、トラブル対応などの IT サポートデスクの側面もある。

最近は、テレワークの業務も増えたためか、IT サポートデスクの業務が多くなっている傾向である。在宅勤務制度を推進するため、ある程度の準備と人事制度の改定などを行ってきた企業は多いと思う。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、急ごしらえにテレワークを行い、従来の構築手順から一気に本番運用にいった企業は少なくないだろう。そのため、情シスの業務はいきなり、パソコン上での設定作業と、トラブル対応を同時に行うことになり、多くの時間がとられているのではないだろうか。

IT 環境の実情

情シスの業務で課題とされるところは、IT 機器やシステムが浸透している世の中とはいえ、運用者全員がIT機器に強いわけではなく、使い方に迷う社員もたくさんいることだろう。その結果、日常的に業務バランスが崩れているのも事実かと思う。 情シスは他部署から「必要ない」と思われたりしていないだろうか。そのほかにも、他部署から嫌われやすい傾向にはないだろうか。

システムを開発するには、長い期間が必要でかなりの労力を要することを説明しても、他部署の社員からその手間や大変さが理解してもらえない状況を経験したことはないか。僕の情シス人生では、試験運用を省略しての失敗は多くはなかったが、もしも基幹システムでトラブルや失敗が発生すると致命的な影響が出ることは防げない事実である。
残念ながらこれらの点で、情シスと他部署には認識の食い違いがある。

これらは部署間でのコミュニケーション不足に端を発している。たとえば、営業部門は売上達成のためにスピード感を重視する。逆に情シスの作業は時間がかかる。部門と情シスの持つスピード感の違いをお互いが理解できなければ、衝突してしまうのも当然かもしれない。

情シスにとってシステム開発、運用、保守は重要な仕事だ

IT 戦略が企業成長に大きく関わる現代では、情シスの役割も大きく変わらなければならない。現場で使えないシステムをいくら構築しても意味がないのである。情シスの役割はますます重要になってくるだろう。率先して他部署との連携を図り、現場に必要なシステム開発を行うことが大切だということを知る必要がある。

情シスの存在は目立たないが、現場の実情を正確に把握し、現場の声を聞くところが肝になる。障害対応のために呼ばれる時だけ、他部署に入ることが多く、そこが一番当人としても気になるところだろう。しかし、社内インフラを浸透させ、IT ガバナンス、ルールを決めて効果的なシステム運用を作りあげられるのは唯一、情シスの仕事であり、それはまさに情シス業務の醍醐味といえるのである。このコラムを読んで頂いた方が「そうだよね」と共感してもらえたら嬉しい限りである。

情シス間の異業種ネットワークはなかなか作るのは難しいと思うが、どこかで情報共有の場を設定していきたいと思う。それまで、このコラムを通じて情報を発信していきたい。
近くブログを開設したいと思っている。そこでは、情シス担当者だけでなく、経営層に向けても情報を発信していきたい。

熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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