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2022年を迎え、改めて情シスとDXについて考える

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. 「2025年の崖」が近づく今、情シスとDX推進について考えてみよう
2. 「DXレポート」の警鐘を正しく受け止めているか?
3. 情シスはシステム刷新に関する諸問題に危機感を持つべき
4. 情シスは経営者の必須パートナーで変革の旗振り役
5. 情シスのミッション
6. おわりに

1. 「2025年の崖」が近づく今、情シスとDX推進について考えてみよう

新しい年、2022年も、もう1月を過ぎようとしている。…ふと昨年を振り返ると、東京オリンピック・パラリンピックの時に感じた夏の暑さが季節の思い出として残っている。毎年のことだが、秋の期間がもう少し長くなって欲しいと思うのはなぜだろうか。気が付いたら冬が到来している感じだ。1年が加速している。今年をどんな年にしたいか、自分の時間は積極的に使いたいと決めた。

正月はどんなことをするか? 旧年(2021年)が無事に終わり、新年を祝う行事である。日本に古くから受け継がれた独自の風習がたくさんあるが、家族そろってお正月を迎えられたことを感謝しながら、1年間、健康で幸せに過ごせますようにとお願いした。

新年1回目のコラムは、「2025年の崖」という言葉から情シスのDX推進への関わり方について考えてみたい。このコラムをヒントに社員同士でディスカッションすることをお勧めする。

2. 「DXレポート」の警鐘を正しく受け止めているか?

「2025年の崖」は、経済産業省のレポートに登場した言葉であり、企業に対してDXの必要性を訴えるキーワードである。企業の抱えている課題、または2025年にどんな危機が待ち受けているのだろうか。

デジタルとは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を含んだ総合的な技術を意味していて、クラウドについてもデジタル技術に欠かせないものと考える。

「DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)」は、デジタルによる変革を指し、デジタル技術を使って企業がビジネスを生み出したり、消費者の生活が向上したりするものである。ここで問題なのが、これらのデジタル技術を使っていくためには、既存の基幹システムやソフトウェアなどが時代遅れのレガシーシステムになってしまうと、新しいデジタル技術の波に乗れなくなるということだ。簡単に言うと、「今のうちに既存システムを刷新した方がいい」という警告である。

「2025年の崖」には、波に乗れない会社には経済的な損失が発生するという意味も含まれている。あくまでも予測の話だが、まんざら嘘ではなさそうだ。情シスの担当者は、「既存システムの刷新は、そう簡単にできるものではない」ということを知っている。既存システムが老朽化していても、安定して動いているものを変えたくないからだ。

会社によっては、「DXはITシステム刷新で完了している。」と言っているところもある。コロナ禍の影響もあり、紙の書類や印鑑(ハンコ)の需要を減らした企業、デジタル決済や生体認証などのITを使ったシステムに移行できた企業も多い。さらにテレワークの普及により自宅でも職場と同様の働き方ができるようになった。

企業各社はDXを推進しつつ、社内のレガシーシステムや人材不足の問題に向き合う機会が増えてきたが、これをDXと言ってよいのだろうか。「競争優位性が確保できているためDX不要」と判断している企業もあると聞いている。経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」では、レガシー化した既存システムがDXの障壁になると警鐘を鳴らしたが、危機に対する認識のずれがあるように思えるのだ。

3. 情シスはシステム刷新に関する諸問題に危機感を持つべき

システム刷新の必要性について考える。現在、安定して動いているシステムも、知らず知らず過剰なカスタマイズや最適化を繰り返して行い、複雑化・肥大化を招いている可能性がある。

次に、レガシーシステムは古いプログラミング言語で書かれていることが多い。第一線でシステムを守ってきた人材不足が社会問題となる今、人材の枯渇も意識していかなければならない。不足した人材をどのようにして補うのか、また人材を補いつつどの程度デジタルシフトしていくか、企業それぞれがしっかりと向き合っていかなければならない。乱暴な言い方をすると、デジタル技術の応用では、既存システムが邪魔になる可能性があるということかもしれない。

重要なのは、こうした諸問題を段階的にクリアしつつ、DX推進を目指していくことだ。これができるのは、情シス担当者である。今から対応していかなければならない危機感を感じてもらいたい。そしてDXを推進し、「2025年の崖」を克服するためにも、まず、自社内の課題の抽出と問題解決のための計画を立てることから始めたい。

システム業務が属人化することによる課題

そのためにも、将来目指す「ありたい姿」は、経営者と情シス担当者の間で一致させておくべきである。「ありたい姿」を実現させるためにも、さらなるデジタル活用と、組織を横断してアイデアを創出する必要があることがわかるのではないだろうか。「ありたい姿」の実現がすぐにできなくても、IT戦略を立案し、システム環境構築のための人材集め(人材育成)や、社内に導入するシステム選定を進めるなど、手順を踏んで段階的に移行していくことが大切なのだ。

4. 情シスは経営者の必須パートナーで変革の旗振り役

さて、今後DX推進のために情シスはどうすればよいのか。新年を迎え、目標のようなものを考えてみたい。

前職場でのことだが、「デジタル」という名称をつけた新部署を、情報システム部とは別に設置されたことがあり、腹が立った記憶がある。情シスは既存システムの運用がメインなので、新しい事業には関わらなくてもいいと言われているように思えたからだ。実際は違っていたかもしれないが。

消極的ではいけないと思い、何としても関わる必要性をアピールしたことを覚えている。「情シス部門は経営者が推進する際の必須パートナーであり、ITシステムの構築を支える業務に加えて、新しいスタイルへの変革の旗振りやサポートという役割を持っている部署だ!」と叫んでいた。

若かったかもしれないが、本当のことである。…というのも、経営者が指し示すべき「経営戦略」や「ビジョンの策定」「全社における推進体制の組織体制案」「人選」に対して、情シス部門の活動貢献が求められているのである。

その理由の1つは、情シスは、経営者が把握する以上に現場業務そのものに精通していて、よりビジネス変革につなげる提案ができることや、企業内の環境全体を俯瞰できることが挙げられる。

経営者の中には何かと「AI、AI、AI」と言ってくる人がいる。悪気はないと思うが、目的から手段に変わってしまい、DX推進どころか、失敗に終わるところに気が付いて欲しい。DXを目指す第一歩は、企業としての「ありたい姿」や本質的な現状の課題を明確化することから始まるのだと思う。

5. 情シスのミッション

情シス部門は、DX推進において間違った事態が回避されるように、常に適切にコミュニケーションし、議論をリードする責任がある部署なのだ。万が一にも、経営トップの判断でそれなりの金額が投資されたのにもかかわらず、使われない、役に立たない“塩漬け”のシステムが構築されてしまうことを避けなければならないのである。改めて情シスの存在が大切であり、見極める力と判断が求められるミッションということを認識しておきたい。

情シスの視点は経営者のそれと同じで、導入したいという業務現場の声やシステム開発要請に対し、一定の距離を持って冷静に対応できていると僕は思っている。DX推進のメンバーには不可欠ではないだろうか(→自画自賛は必要なのだ!)。

情シスが、新しいシステムの本番リリース作業をする場合と同様に、DX推進においても検証環境の適正なやり方には十分に時間をかけてやるべきと考える。この部分の管理ができるのも情シスである。導入を急ぎ、テストが形骸化して憂き目を見ることのないように、情シスが自社を律する必要がある。DX推進に向け、必要なシステムをどう構築するか、DXの成否は情シスが握っているのだ。そしてDX推進は、既存システムからの脱却を前提とした場合、新たな気持ちで取り組むべきなのである。

では、DX推進に最も適した理想の人材とは何かと言うと、現場業務に精通し、デジタル技術の応用を生かし、経営企画のスキルを持ちながらITシステムを利用しデザインができる人材ではないだろうか。

そんな人材は目の前にはいないが、ITシステム構築に当たって、老朽化したシステムを、生かすもの、廃棄すべきもの…と見極め、全体をリデザインできる人材は情シスの担当者ではないだろうか。情シス部門が期待される理由がここにある。

6. おわりに

新しい年を迎え、デジタル推進に向けた取り組みがスタートしている。今後、情シスとしても積極的に関わっていくべきで、一時的にプロジェクトメンバーとして組成するのも現実的に必要であり、実行すべきと考える。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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