製品やサービスの販売終了、サポート終了のタイミングを指す用語であるEOSやEOL。正しく知らないと、サポートを受ける際やリプレースにも大きな影響が生じてしまいます。今回は、EOS、EOLについて、その概要、課題、情シスが知っておくべき基本的な内容について、わかりやすく解説します。
製品・サービスのライフサイクルにおけるEOS、EOLの位置づけ
すべてのものに役目を終える瞬間、“寿命”があるように、日々の業務を支えるシステムにもライフサイクルが存在します。サーバやネットワーク機器といったITインフラや、セキュリティソフトなどのアプリケーションは永遠に販売、保守や障害対応がされるわけではなく、ある時点でそれらのサービスは停止されることになります。販売やサポート終了、製品ライフサイクル終了を表す用語であるEOS、EOLについて知るためにも、まずは製品・サービスのライフサイクルについておさらいしておきましょう。
下図は製品・サービスの販売開始から、販売終了、保守やサポート終了までの一連のライフサイクルをまとめた図です。情シスとしては、製品・サービスがいつまで販売しているのか、保守/サポート期間がいつまでなのかを正しく知る必要があります。
製品・サービスを提供するベンダーは、販売終了日やサポート終了日をあらかじめ告知していますが、その際に用いられるのがEOSやEOLといった用語です。製品ライフサイクルに沿って順に説明していきます。
- 製品・サービスの販売終了:End of Sale(EOS)
- 文字通り、販売終了日以降は、製造・リリース元の企業から対象となる製品やサービスの販売が行われなくなります。販売終了日を過ぎると、その製品やサービスは市場で手に入りにくくなるため、ハードウェアやソフトウェア、ライセンスの拡張を行いたい場合は、販売終了日前に購入しておく必要があるでしょう。
- 製品ライフサイクルの終了(保守/サポート期間終了):End of Life(EOL)/End of Service Life(EOSL) /End of Support(EOS)等
- 保守/サポート期間以降は、対象となる製品・サービスのアップデートや、問い合わせ対応、障害発生時の保守対応などのサポートを受けることができなくなります。つまり、製品ライフサイクルの終了です。そのため、保守/サポート期間終了をEOL(End of Life)やEOSL(End of Service Life)と呼ぶことが多いです。EOLを過ぎてしまうと、セキュリティのアップデートが終了することによって脆弱性が高まる、修理や障害発生時のサポートが受けられないといった問題が生じます。EOL以降にこういった問題が発生した場合、自社内で解決しなくてはならないため、技術が必要となり運用の負荷が増したり、属人化の原因になったりします。そうならないためにも、自社のシステム構成とそのEOLを把握し、システムのリプレース計画を立てておくことが重要となります。
また、ベンダーによっては、サポート終了をEOS(End of Support)と呼んだり、技術的なサポート終了をEOE(End of Engineering)と呼んだりする場合もあります。自社に導入している製品・サービスのEOS、EOSL、EOLを調べる際には注意するべきポイントといえます。
これらの用語や定義をまとめると、下表のようになります。
ライフサイクルの段階 | 製品・サービスの販売終了 | 製品ライフサイクルの終了 |
---|---|---|
詳細 | その製品・サービスの販売終了日 | その製品・サービスのアップデート、サポートの終了日 |
対応すべきこと | ・システム等の拡張をしたい場合は前もって購入しておく ・リプレース計画を立てておく |
・前もってリプレース計画を立て、EOLの前に実行する |
ライフサイクルの段階を表す用語 | EOS(End of Sale) | ・EOL(End of Life) ・EOS(End of Support、End of Service) ・EOE(End of Engineering) ・EOSL(End of Service Life) |
EOS、EOLに備えて考えておくべきポイント
それでは、EOS、EOLに備えて情シスはどのような対応を取るべきでしょうか。この項では、その主なポイントについて解説します。
- ・自社のハードウェア、ソフトウェアにはライフサイクルがあることを理解する
- 企業で導入しているサーバやネットワーク機器といったITインフラ、アプリケーションソフトなどにはライフサイクルが存在します。具体的には、企画・調達・導入・運用・廃棄という段階が存在し、EOSやEOLはこのうちの廃棄(製品やサービスの更新・リプレース)に関わる段階となります。まずは、自社に導入しているハードウェアやソフトウェアがどのような段階にあるか理解する必要があるでしょう。
- ・EOS、EOLを把握していないことの危険性を知る
- 製品ライフサイクルのうち、廃棄に関わるEOS、EOLに対応しなかった場合、様々な問題が発生します。例えば、新たにシステムを拡張したいと思ってもその製品やサービスを調達することが難しくなる、セキュリティをアップデートする必要があるのにそれが受けられない、などの問題が出てきます。これは、情シスの業務はもちろんのこと、会社全体のビジネスにも大きな影響を与えることになるでしょう。EOS、EOLを過ぎてから対応するのでは手間がかかることになってしまうので、あらかじめEOS、EOLを把握しておく必要があります。
- ・自社内のITインフラ・アプリケーションのEOS、EOLを把握する
- ほとんどの製品やアプリケーションは、ベンダーがそのEOS、EOLについてあらかじめホームページなどで日程を告知しています。まずは、それらの情報を集めて管理しておくとよいでしょう。一元的に管理するため、例えば自社のIT資産管理台帳やカレンダーなどに、EOS、EOLの日程を記載しておくと抜け漏れが発生しなくなるはずです。
- ・EOS、EOLの対応スケジュール、製品・サービスの比較基準について考える
- ベンダーから提供されるEOS、EOLの情報は、年単位の期間で前もって提供されることがほとんどです。そのため、自社のEOS、EOLを把握したら、あらかじめリプレース等の検討期間、期日までに対応すべき事項をまとめておくとよいでしょう。具体的には、拡張を行いたいならどのベンダーから調達するかの検討、リプレースを行うならリプレース後の製品・サービスの価格やメリット・デメリットの比較などを行うことになどです。
まとめ
これまでお伝えしたように、EOS、EOLは単に製品の販売終了やサポート終了を示す期日を表す言葉だけではなく、情シスの業務に深く関わってくるものです。そのため、自社に導入されている製品やサービスとそれぞれのEOS、EOLを把握することは欠かせません。EOS、EOLの日程を正しく知って年間(あるい複数年間の)スケジュールに組み入れてみてはいかがでしょうか。
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