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2021年の振り返りと2022年の展望

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. “雑談”めいた話の意義
2. 2021年、日本でのオリンピック・パラリンピック開催
3. 新しい働き方や生活を強いられた1年
4. オンラインでのコミュケーション
5. withコロナの経験は企業の今後に活かせる
6. テレワーク時代のメンタルケアについて、会話と雑談の不足がもたらす問題点
7. テレワーク下での課題には運動不足もある
8. テレワークを「心と身体の健康」という視点から考える
9. 2022年「情シス」にとって大チャンス

1. “雑談”めいた話の意義

情シスの話題からずれるが、日本人は大盛海鮮丼が好きな人種だと思ったことをお話ししたい。それも色んな種類のものがてんこ盛りになればなるほど人気がある。

大盛海鮮丼を選ぶ理由は、単品のものよりお得感があるからだろうか。お得感はもちろんだが、ゴージャス感とごほうび感があるからかもしれない。それとも、様々なメニューから選ぶのが面倒だし、どうせ食べるなら色んなものを一度に食べられる方がいいと判断している人も多いのかもしれない。

僕も単品のものより海鮮丼を選ぶ方だが、実はあまり食べたくない具も入っていたりするので、一旦、丼から出して食べ始める。時には「大盛海鮮丼は少しオーバースペックなんじゃないか!」とも思ったりするが、お店側のサービスメニューと思うと感謝の気持ちが湧いてくるので不思議なものだ。いずれにせよ、コロナ禍の中で我慢していたものが、食で解消できることはとてもいいことだと思っている。

――くだらない話かもしれないが、コロナ禍の中ではこのような考えすらできる余裕がなかった。やっと普通の生活の中で雑談ができる状態になった気がする。みなさんも、少しリラックスしてくだらない話題を作って考えて欲しい。どうでもいいことが結構大切なことに気が付くはずだ。

2. 2021年、日本でのオリンピック・パラリンピック開催

毎日のように新型コロナウイルスの感染者数が報道され、テレワークが当たり前の勤務スタイルになった。自宅から外に出る時はマスクが必須になり、手洗い・うがいの励行が浸透した感がある。おかげで風邪をひくこともなく過ごすことができた。

コロナ感染の影響で日本がどうなるのか、世界がどう変わっていくのかという不安な気持ちから2021年はスタートした記憶がある。正直、僕だけかもしれないがかなり昔のことのような感覚である。夏にはオリンピック・パラリンピックが開催されたが、本当に日本で行われたイベントだったのか、感覚が希薄だ。テレビで見る時間は長かったが、このようなイベントがコロナ禍の中でも開催できたことで、新しい時代のイベントの形が実現できることを証明したのではないだろうか。

目に見えないウイルスは怖い存在だ。サイバー攻撃のウイルスの侵入で大切な資産を奪われたり、ランサム攻撃のようにシステムが破壊されることは、新型コロナウイルス感染による被害と類似している。サイバー攻撃も一度被害に遭うと、ダメージは大きく、後遺症が残るおそれがある。100%の対策はできなくても、早期に回復するための免疫力の強化としてサイバー攻撃対応演習等を繰り返すことなど、本当にそっくりだと思う。

3. 新しい働き方や生活を強いられた1年

新型コロナウイルス感染拡大により、新しい働き方や生活を強いられた1年だった。コロナ禍をきっかけにビジネス環境が激変し、ほとんどの人は何らかの形で働き方の変化を迫られたのではないだろうか。一方、急速にテレワークが広まったことで、思うように進んでいなかった日本の働き方改革が一気に進んだ、とも思える。テレワークという新しい働き方は、今後も一つのワークスタイルとして定着していくことは間違いない。

どうしても業種によってテレワークの活用頻度に差が生まれていることは仕方ないことだ。ただし、これだけテレワークが普及している状況下で、「テレワークを活用したくても業務上活用できない」、「意に沿わない働き方を強いられている」と感じている方も少なからずいるのも事実だ。

テレワークを活用して一人ひとりが快適に働けるよう、業務フローの見直しなどを行い、環境作りを努力することが企業側に求められる。情シスとしては、新しいテクノロジーを提案することはもちろん、今まで実施してきたことの振り返りを行って欲しいところだ。チャンスはすぐそこにあると思う。

4. オンラインでのコミュケーション

オンラインでのコミュケーションもまた、業種によって考え方が違って当然だ。営業や技術・開発は、社外とやりとりする頻度が比較的高い部署であるが、オンラインでのコミュニケーションをまったく行っていない人もいる。たとえ自社でオンラインを推進していても、相手先の企業やパートナーが対面重視であれば、オンライン化は進められない。

重要なことは、テレワークの推進は自社だけの問題ではなく、周りも巻き込んでいく必要があるということだ。ICTやインフラ投資、セキュリティ対策などを進めていくことは、関係企業や取引先を巻き込みながら一緒に働き方を変えていくことが重要ということかもしれない。オンラインのメリットは多数あり、情シスとしても自社の条件を満たすだけの環境整備だけでなく、他社の環境についても柔軟に対応できるようにすることも必須になると思われる。

5. withコロナの経験は企業の今後に活かせる

コロナ禍以前より、これからの働き方は多様化するといわれてきたが、コロナ禍をきっかけに社会全体でテレワークを実現できたという事実がある。新型コロナウイルス以外でも不測の事態が起こる可能性を考えると、今やテレワークは、事業継続に欠かせない働き方になる。

情シスがこのコロナ禍の中で実現してきたことは、そもそも想定外の対応であり日本全体の情シスレベルの高さを物語っている。今後、テレワークの導入が難しい業種や部署があるのは事実だが、業務継続や生産性向上の観点からも、オフィスにしばられない柔軟な働き方を取り入れていくことがますます求められていくだろう。

6. テレワーク時代のメンタルケアについて、会話と雑談の不足がもたらす問題点

新型コロナウイルスによるテレワークの普及や外出の自粛によって人と接する機会が減ると、メンタルへの影響が懸念され、「孤独」と「孤立」が深刻化していると聞いている。

もともと、社内でのコミュニケーションはストレスの原因になることも多く、会社の飲み会や社員同士のプライベートな会話を好まない風潮も高まっている。しかし、テレワークの長期化で、コミュニケーションが大幅に制限された今、コミュニケーション不足から孤独や孤立を感じ、ストレスに悩む人が急増していると聞く。

会話や雑談の減少による「気分の落ち込み」が仕事に影響することも大いにあり、メンタルケアの必要性を感じさせる。情シス業務の功績は大きく誇らしく思えるところだが、情シス担当者のメンタルも気になる。というのも、このような生活がいつ終わるかわからない不平や不満を、社員が情シス担当者にぶつけていたようにも思えるからだ。職員のメンタルを考える時に、優先的に情シスのフォローをして欲しい。

7. テレワーク下での課題には運動不足もある

毎日決まった時間に起きて、自宅と会社を行き来するという行為は、それ自体が一定の運動になり、生活のリズムを整える役割もあったが、テレワーク下ではそれがなくなってしまった。運動を意識している方は問題ないが、会社に出勤することが多少の運動だった方は気をつけるべきだ。

現に運動不足が影響して、「肩、首のこり」「肥満」といった身体的な不調を感じている人が多いと聞く。メンタル不調につながりやすい身体的不調が多いのも気がかりだ。テレワーク下では、意識的に運動する機会を作る必要性がある。

8. テレワークを「心と身体の健康」という視点から考える

働き方の変化にあわせて心身のケア方法も変えることが大切だ。外出の自粛でストレス発散ができなかった1年間は、経済状況の悪化や今後の生活不安などを感じ、さらに新型コロナウイルスの脅威が最大の不安要素だったことは間違いない。

問題は、新型コロナウイルスが収束したとしても、テレワークそのものによるメンタルへの影響は継続すると想像できる。テレワークを急遽導入した企業も多いが、数々の問題が顕在化し、社員のメンタル不調もその一つと考えるべきだ。テレワークという働き方を「心と身体の健康」という視点から、ケア・改善していく必要がある。

テレワークを管理する上で重要なポイントは、情報の漏えいを防ぎ、社員の自覚を促してルールを順守させるといった「抑止」があげられるが、管理する上で社員に「監視」と受け取られないよう注意する必要がある。確かに、「サボっていないか」を監視する目的もあるのは事実だが、社員のストレスへとつながっては元も子もない。社員のモチベーションを保ったまま適切な管理が行えるシステムを導入すべきである。

例えば、出勤時や休憩時、退勤時など、各ポイントで社員がチャットツールで報告し、そのタイミングで管理者がタイムスケジュールを確認し、業務の区切りで進捗状況を尋ねるなどのメリハリのある管理が重要になってくる。これらの管理ツールを導入することで、社員は「見守られている」という安心感が得られ、「心と身体の健康」にもつながってくると確信している。

テレワークを「心と身体の健康」という視点から考える

9. 2022年「情シス」にとって大チャンス

コロナ禍やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、情シス部門に求められる役割は確実に変化してきた。一方、情シスの現場では、その変化に戸惑うことが多くなった。業務で利用するシステムにクラウドサービスが増え、会社のPCだけでなく自宅のPCや個人のスマホからも利用できてしまうことで、情報漏えいを懸念する声も多く上がってきた。しかし、ここで冷静に振り返ってほしい。情報漏えいが危険だからといって情シスがNGを出していては、会社のIT化は進まない。

2022年が大チャンスという理由は、ニューノーマルと言われる環境が少しずつわかり、危険だから運用できないと考えるのではなく、どうしたら安心・安全な運用ができるのか、セキュアな方法を提案できるのが「情シス」だからである。さらに、会社内でITがわかる人を巻き込み、「サービスに対する目利き力」を上げ、情シスだけで全て決めてしまう体制は改善すべきと考える。

今年も1年間、ありがとうございました。
2022年も引き続き、よろしくお願いします。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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