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プレゼン資料作成スキルを上げる! 情シスの話が伝わる構成力を身につける方法

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. 情報を効果的に伝える方法とは?プレゼン資料作成について考える
2. 夏休みの宿題がプレゼン資料作成の始まり
3. プレゼン技術を教わる
4. 情シスにプレゼン資料作成のスキルが必要な理由
5. プレゼン資料は3つのパートをしっかり意識すること
6. 資料はなぜ、短時間で理解できるものがわかりやすいのか?
7. 資料作成の段階から聞き手を引きつける内容に仕上げるために
まとめ

1. 情報を効果的に伝える方法とは?プレゼン資料作成について考える

前職(NHK)仙台勤務の時、画像処理の開発業務を行っていた。番組用のアニメーションや放送用の天気図、台風進路図のグラフィックデザインが主な仕事だった。当時(40年前)の台風進路図は、四国室戸岬か九州からの上陸が多かったような記憶がある。最近の台風はどうかというと、自由気ままな進路のように見える。さらに集中豪雨では「記録的な大雨」「今までに経験したことのない大雨」と呼ばれるような局地的で断続的に続く激しい雨が増加している。僕の仕事はわかりやすく見やすいグラフィックデザインをすることがメインの目的だったが、現在は線状降水帯の状況をそのまま見せるだけで、状況が共有できる時代になってしまった。ネットでもリアルな情報が発信されているため、情報の取捨選択は重要になる。

自然災害情報に関しては、自分がどの場所にいるのかで全く違ってくる。テレビからの情報を常に見られない人もいれば、ラジオやネットからの情報をうまく活用できない人もいる。どんな重要な情報でも逃してしまえば、危険な状況を知らないでいることになる。我々の側にも責任が求められているのだろうか。僕はスマホ用の予備バッテリーをいつも携帯している。最低でもスマホに電気が供給できる状態でリスク回避を図るためだ。

さて、今回は情報を効果的に伝えるためのプレゼンテーション(以降、プレゼン)資料の作り方について前職(NHK)で行ってきた経験を交えながら解説していきたい。最近では、プレゼン資料作成ツールを使えば、誰でも簡単にできるようになり、近いうちにAIを使い、上手にプレゼンしてくれるアバターが出てくるかもしれない(笑)。とは言うものの、自分で作った資料なのにうまく話ができず、失敗する経験をしてはいないだろうか。プレゼンテーションの目的は相手に行動してもらうことである。相手が理解しやすいプレゼン資料はどうやって作ったらいいのかについて考えてみよう。

2. 夏休みの宿題がプレゼン資料作成の始まり

僕のプレゼン資料作成の始まりは、小学生の夏休み宿題であった研究発表である。テーマは自由だったが理科系を選んだ気がする。優秀な作品は公共施設(デパート)に展示されていた。一度だけ表彰されたことがあり、家族そろって見に行ったが、内容については全く記憶にない。そんなものなのか。

内容は別として、どうやって完成させたかは覚えている。大きな模造紙に書き込んだのだが、少し離れたところから見て、字の大きさ、太さ、色を気にしていた。見る人は数メートル離れた場所にいるので、見た瞬間に、何かを感じ、足を止めてもらうインパクトが必要だったからだ。

そのためにも、いきなり模造紙に書いたのではなく、メモ帳に「何がしたいか」「なぜこのテーマを選んだか」「結果はどうなのか」「今後について」などブロックをつくった。日記帳のように、研究していく過程で書き込んでいく。ここには研究過程の記録を書いていき、研究が終わり、日記帳の内容を一旦、他の紙にマジックで書いてみた。その紙をどこに配置するかを考え、文字の大きさ、色を決めていく作業を行った。これを小学生5〜6年生の頃に実行していたのだ。

小学生の研究発表の宿題だったが、現在のプレゼン資料作成でも共通の要素がある。専用のソフトから書き始める人が多いと思う。悪くはないが、話す内容と構成を先に考えることは、資料のでき具合に影響すると僕は思っている。

3. プレゼン技術を教わる

前職(NHK)30代の時であるが、海外での仕事を経験してみたくなりJICA(独立行政法人国際協力機構)に対して、職場からの推薦を受け海外派遣の選抜に選ばれることになった。場所は東南アジアのインドネシアと決まっていた。仕事は、放送事業の協力という事で期間は2年間だった。

文化の違いやマナーなどについて専門研修を受けなければならず、その中にプレゼン技術についてのカリキュラムもあった。インドネシアでの実地研修もあったが、当時はノートパソコンが普及しておらず、プレゼン研修は、セル用紙にマジックで書いたものを投影するOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)を使っていた。OHPとは、テキストを含む画像を透明材料のOHPシートに投影し、聴衆に提示する表示システムのこと。シートにはマジックで書き込むため、特に字の上手下手が目立ち、一度書くと消せないストレスがあった(笑)。

この時にはテーマを決め、1枚のスライドで5分程度のスピーチを何度も繰り返す練習をした。質問が多く出るのが素晴らしいプレゼンということで、5分間のスピーチで多くの質問が出るようにする練習内容だったことを覚えている。

練習の内容で印象に残っているのをまとめると、

  • スライドの箇条書きは奇数行にする。最大でも5行
  • 声の大きさと日本語の場合は語尾をしっかり伝えること
  • 視線は初めに向けた方を意識して、視線の収まるところを決める
  • さし棒(ポインター)を持つ手…壇上で右側をさす場合は、右手に持つ。左手でクロスはNG
  • 手振りなどを取り入れ、聞き手の目線をスピーカーに向けてもらうようにする

などである。32年前に教わったことを思い出して書いているが、今でも役に立っている。

さて、この重要な研修が終わって日本に帰国したところ、急遽変更があり、翌年(1992年)スペインで開催されるバルセロナオリンピックのIBC(インターナショナル・ブロードキャスティング・センター)での仕事に、JICAでの仕事よりも先に行ってほしいと言われた。先に行くということは帰ったらインドネシアなのかと承諾したのだが、2年後の長野冬季オリンピックも対応してほしいと言われ、結果としてインドネシア派遣が幻になってしまった。30代は国際的な仕事が目立った年だった。

(参考)情シスに求められるスキル! 聞き手が耳を傾けるプレゼン力を身につける方法

4. 情シスにプレゼン資料作成のスキルが必要な理由

前職(NHK)情シスにいた時のことだが、プレゼン資料の種類には色々あり、勉強会のようなものから計画書のような内容のもの、上層部への「一言でいうと」独特のプレゼン資料を作っていた。この「一言でいうと」の資料となるとパソコン画面(横)1ページで完結するものだった。字数は決まっていないが、バランスが難しかった。スピーチも5分以内に簡潔に行うため、何度も「要点は何か?」と自問自答しながらまとめていた。スピーチの後は質問を受けるため、論理的な回答ができるように事実を正しく話せるように臨んでいた。

なぜ、情シスにプレゼン資料のスキルが必要なのか。その理由は、関連部署や上層部への説明資料を作っては説明するのを繰り返すことによって学習につながるからだ。例えば、システム障害(トラブル)などが発生した場合にも、報告書の書き方が瞬時にわかるようになる。これは日頃から短い時間で要点を話す訓練をしているからである。間違いなくプレゼン資料の作り方が参考になるので、短時間でわかりやすい報告書が書け、説明がうまくできるようになったのである。プレゼン資料のコツを身につけることは、聞き手側(社員)の立場になって話ができるようになることでもあるのだ。

5. プレゼン資料は3つのパートをしっかり意識すること

重要なのは、プレゼン用の資料を作るには、いきなりプレゼン作成用ソフトに向かい書き始めたり、見た目のデザインから入ったりするのではなく、伝えたい内容の構成を先に考えるとよい。例えば、次の3つのパートを具体的に考えることをお勧めする。これをやれば資料のデザインもシンプルにすることができ、聞き手に伝わりやすくなる。簡単に言うと引き締まった資料になるのである。

  • イントロダクション:聞き手の興味関心を引きつけるための「つかみ」の部分。インパクトのあるデータを探して使うとよい。目的や伝えたいメッセージを明確に示す。
  • ボディ:プレゼンの「本論」の部分。僕の場合は「結論→根拠→具体例・エピソード」という順番にする。プレゼンの狙いは、何が実現できるかで先に結論を言うことが大切。さらに具体例やエピソードは効果的なアクセントになる。
  • クロージング:プレゼンの「締めくくり」。聞き手の感じる疑問を解決させる。

プレゼンの良し悪しは、クロージングで「締めくくり」が重要になる。聞き手からの意見、感想が出るところであるので、ここで疑問点が解決できる場所だと思ってほしい。この3点を意識するだけでも、メリハリのある資料ができる。ぜひ試してもらいたい。

プレゼン資料は3つのパートをしっかり意識すること

6. 資料はなぜ、短時間で理解できるものがわかりやすいのか?

資料を作る時は、聞き手が頭で情報を処理する時間を考えて、どうしたらわかりやすくなるかを常に意識することが重要である。これが、読み手目線で考えるということである。資料は、文字や画像などの要素がデザインの基本ルールに則っていれば機能性が高くわかりやすいものになる。情報を伝達する上で、理解に時間がかかるものはわかりにくく、短時間で理解できるものはわかりやすいということを頭に入れて作ってほしい。

デザインとは、「文字や画像、配色などに使って情報やメッセージを伝送する手段であり、視覚的なコミュニケーション」と定義されている。これらをうまく使いこなすことでわかりやすい資料かどうかにつながってくる。デザインが苦手という方もいると思うが、ルールを覚えてしまえば簡単にわかりやすい資料ができるようになる。

デザインには2つの側面があり、1つは機能性で、読みやすいとかわかりやすいという面だ。もう1つが情緒性で、そのデザインに接した時にかっこいいとか、先進性があるなどの印象が中心となる面がある。プレゼン資料のデザインに関しては特に機能性が重要になる。一般的にわかりやすく読みやすくすることが重要である。

例えば、提案のコンセプトが1ページの中にブロックが6個あったとすると構造がわかりにくく、聞き手側は理解に時間がかかる。説明する側も、聞き手側の視線が気になる。主な内容を目立たせて、装飾的な内容は抑える構造を明確にするとよい。

さらに見栄えを向上させるためには、ちょっとしたコツがあり、ブロックを表現する際、塗るか枠線はどちらかに統一するとよい。文字を囲む図形であるが、四角形・三角形・円などのシンプルな図形を使用する。その際グラデーション、影の効果を多用することを避けたい。文字の大きさについては極端に小さすぎるとWEB上では字がつぶれてしまうことがあるので注意したい。さらに文字の強調で太字の下に下線を引く二重強調は避けるべきである。

プレゼン資料作成はルールがあるので参考資料などを一読するとよい。注意してほしいのは、短いテーマの言葉になっても、主語が何で、何を言おうとしているかなど、聞き手が理解できる内容なのかに気をつけてほしい。

7. 資料作成の段階から聞き手を引きつける内容に仕上げるために

〇結論はできるだけ先に話すとよい
プレゼンは、結論から先に述べる。例えば「ポイントは3つあります」と先に伝え、聞き手の関心を引きつけるようにする。「結論ファースト」で進めるとよい。
〇根拠やデータを基に話す
プレゼンの最も重要な部分には、根拠やデータを示すことが必要だ。根拠にはその元となる正確なデータが必要。
〇例え話を挟む
聞き手が具体的にイメージできるように例え話を取り入れ、表現の仕方を工夫する。イラストやニュース記事等を積極的に使ってみる。
〇重要な箇所は発生も含め強調する
重要な部分は、声の大きさに強弱をつけ、デザインでは字の大きさを変えてみるとよい。話し方では強調したいフレーズを繰り返したり、話すスピードを落とし身ぶり手ぶりを大きくするとよい。
〇原稿を見すぎないように視線を意識する
原稿の文字やスライドを見すぎないよう聞き手の目を見て話すことが重要。可能であれば、テーマを見るだけで中身が話せるようにする。聞き手の目を見てしまうと緊張する場合、視線は部屋の四隅を見渡すようにすると良い。
〇語尾をはっきりさせる
語尾をはっきりさせること。
「・・・だと思います」や「・・・かもしれないです」と、語尾がはっきりしないと自信がないのかと思われがち。「できた」「できない」、「した」「しません」など、重要な文言は語尾まで明確にする。
〇できる限りわかりやすい言葉を使う
聞き手によってはカタカナ語に慣れていない人もいる。ビジネスで使われるカタカナ語をプレゼンテーションに用いる際は注意が必要。時と場合によって「アジェンダ」を「議題」などと置き換えてもよい。

まとめ

資料を効率的に作成するためには、プレゼンの構成とデザインの作業は分けて考えることだ。構成は先に決めてデザインに着手することが大切である。ポイントは、最初の数分で決まると言われている。プレゼンを通じて相手の心が動くのは資料のでき栄えが影響している。大切なことは、資料の改善を躊躇なく行うことだ。場合によっては全て書き直すこともあると、やり直す覚悟を持って臨むことも必要である。失敗を繰り返しながらも場数を踏んでいると「コツ」を身につけることができる。情シスに必要な要素が沢山含まれている。プレゼン資料作成が少しでも楽しくなることを願っている。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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