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「仕事を断るのが苦手」な情シスに伝えたい3つの対処法

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. 突然の依頼に葛藤する情シスにこそ伝えたい上手な対処法
2. 「突然の依頼」について考えてみたい
3. 突然の仕事は、依頼側も誰に頼んでいいか、わかっていない
4. 情シス業務での仕事を断るときのポイント
5. 断ることで全体の仕事がうまくいくこともある
6. 断る力を身につけることも大切
7. 仕事を上手に断る3つのポイント
8. 最後に

1. 突然の依頼に葛藤する情シスにこそ伝えたい上手な対処法

新しい環境に適応しようと頑張る中、オフィスに出社していた時よりも、テレワークが中心の会社はコミュニケーションをとる頻度が落ちるため、ストレスを感じることはないだろうか。特に5月から6月の梅雨の時期は気をつけてほしい。張り詰めていた気持ちが解放される時期でもあるためだ。

よく言われていることだが、仕事と仕事以外の時間でメリハリをつけることも、ストレスを減らす上では重要。最近、僕が実行しているのは、定期的にデジタルデトックスを心がけている。電子機器に触れない時間を作ると脳が休まるからだ。とはいえ、スマホの電源を切ることはできない。散歩に出かける時は携帯しないように心がけている。多少の小銭は持参すべきと考えるが(笑)。

今日は、仕事の上手な断り方について紹介したい。仕事といっても一言で言えないものが多く、全てのパターンに当てはまるわけではない。僕の経験をお話ししよう。情シスは、突然の依頼について常に葛藤している現場ではないだろうか。最優先すべきものを瞬時に判断し、情シス窓口や、ヘルプデスクでは社員からの問い合わせの仕分けを行っている。まさに、災害時などに医療現場で使う緊急度に応じた「傷病者の振り分け」のトリアージ(triage)に似ている。

今日の話は、人間関係を良好に保ちながら仕事の上手な断り方について解説したい。突然の仕事の依頼の時、断れずに引き受けてしまったがために、自分の本来の仕事に影響が出てしまったケースはないだろうか。ぜひ、今回ご紹介する方法を思い出してほしい。

2. 「突然の依頼」について考えてみたい

依頼する側の立場で言うと、「この話は誰にでもできるものではなく、今回は無理だとわかっていてのお願いなんだけど」と、特別感を出しながら経緯を説明し、お願いしてくる。受ける側は、その話を聞くだけで重要なことと勘違いしてしまい、大変な仕事を自分に依頼してくれることを名誉に思い込んでしまう。本来は冷静になり、自分の抱えている仕事について説明しなければいけないが、単純に「わかりました」と回答してしまう。実はここが重要なポイント(分かれ道)になる。この依頼者が上司だったら断るなんてもってのほかなのだ。

ここからは僕の経験談になる。新しい基幹システムのアセスメントを担当することになり、リリース(カットオーバー)の日程を決める段階のことだった。リリースを決めるには制限事項などもあるため、慎重かつ重要な決断が必要になってくる。そんな重要な時期でもあるのに上司から突然の依頼が飛び込んできた。アンケート調査の作業依頼だった。話を聞いた時、「なぜ、この忙しい時にこんな仕事を」と思った。依頼主は「何もあなたがやらなくてもいいので誰かにやらせてほしい」だった。実際ここで喧嘩をして断ってもいいと思ったのも事実だが、そこは冷静になり、特に緊急性もないので、頼みやすい人だから自分に頼んでいるのだとも思った。

重要な仕事はこのリリース以外にも開発のチームリーダーを行っており、スケジュールは全て埋まっている状況でもあった。周りからは頼みやすく、断ることのできないやさしい性格と見られているのだろう。思い当たる方はぜひ、断り方を参考にしてほしい。

結論を言うと、依頼の仕事は迷いもなく断ることにした。後から考えると当然と思えるが、実際その場にいた時は「それくらいは大丈夫かも」という迷いがあったのも事実である。

3. 突然の仕事は、依頼側も誰に頼んでいいか、わかっていない

断れない心理状態は、組織内の事情を自分なりに納得しているからだ。さらに頼まれた仕事を断った場合のことを考え「今後、任せてもらえないかもしれない」、「嫌われてしまうかもしれない」という不安が生まれる。ここで断れない一番の理由は「自分が何とかすればいい」という責任感があるからかもしれない。やろうと思えばできると思う時は、ほかの業務への影響を考え、迷いもなく断ることも組織がうまくいく重要な選択なのである。

次に、断り方の説明をしよう。先ずは今回の依頼については、自分に相談してくれたことに感謝し、どのように対応していくかを一緒に考えることだ。注目したいのは、忙しいのはわかってあえてお願いしたいと言ってきているところだ。本来、忙しい人には頼まないのが常識だ。つまり依頼者は、こちらの状況は何も知らないということなのである。ただ断るのではなく、丁寧に状況を説明することが重要になってくる。できれば、代案を一緒に考えてあげることが大切だ。

この業務では、僕のリリース作業もうまくいき、アンケート調査も〆切に間に合わせることができた。依頼に来た上司と後で会話をしたが「あの時は、僕も誰にお願いしていいのかわからず、相談のつもりで依頼しただけだった」である。今回は、頼む側も冷静さにかけていたことは見抜けなかったが、迷いもなく断ったことが、功を奏した。お互いの不満をぶつけるだけでは何も解決せず、相互理解が早期解決につながった事例だと思っている。

4. 情シス業務での仕事を断るときのポイント

情シスの仕事は、困っている人を助けることに最初はやりがいを感じ、相談事を引き受けてしまうこともある。いつも感じていたことだが、なんでもかんでも安請け合いしないと決めている。ここも分かれ道のポイントであり、自分が一度引き受けてしまったため、後任の必要性を忘れられている恐れがあることを知っておくべきである。

情シスの仕事をしていると、いかに業務範囲が広いかということを実感する。会社組織の規模にもよるが「何でも屋」という特性を持っているのかもしれない。過去の経験では、全体の状況から判断し自分にしかできない仕事と思い引き受けたがために、属人化し転勤した途端に業務が回らなくなった経験がある。僕なりに、条件付きで引き受けることを考えるが、断ることを前提に話を聞くことにしている。組織上必要な業務でなければ、追加業務にすべきでないからである。

5. 断ることで全体の仕事がうまくいくこともある

職場の中でも仕事を頼む際には、頼みやすい人、または断られにくそうな人から順番にお願いする。これは信頼関係とは別で、心理的なものかもしれない。僕が上司になって依頼する側に立った時にいつも心がけていたことは、現在、抱えている仕事について、まずは話を聞くことだった。仕事の実態を確認しておくことは重要なことだと思っていた。

しかし、時々「それって今やる仕事?」と感じてしまうケースもある。普段からどんな仕事をしているか、現場実態の把握と、確認ができていないことに気づくのである。依頼者から「できないんだったら先に言ってください」ということもあるが、受ける側も「断るに断れなかった」という場合もある。大切なのは、自分の気持ちと状況をしっかりと相手に伝えることではないだろうか。コミュニケーションの大切さを痛感する。

6. 断る力を身につけることも大切

しっかりと断ることができれば、人間関係のトラブルを防ぐことも可能になり、上手な断り方を覚えて、人間関係を良好に保てる。例えば「断ろうと思えばできたんだけど、できなかった」のケースだが、断れない理由としては、断ると人間関係がギクシャクしそうとか、責任感のようなものが働いてしまっているからだ。

僕はいつもこう考える。自分の体は1つしかなく、時間や体力は無限ではない。従って断ることも大切と思っている。軽い気持ちで引き受け、期日までに相手が期待する成果を出せなかったことを考えると断る力を身につけることも大切である。例えば最近のことだが、受注した仕事で具体的に働ける工数を自分なりに計算している。実働の中でどのような時間割で何をしているかをシミュレートしてみるのもいい。例えば休み時間を確保することから考え、仕事の割り振りを自分で実施してみることをお勧めする。ぜひ、自分のペースを見つけて、心身共に健康な状態で仕事をしてほしい。

7. 仕事を上手に断る3つのポイント

仕事を上手に断る3つのポイント

相手を不快にせずに仕事を断るポイントは3つある。

  • ① 依頼者に感謝の気持ちを伝え、自分が関わっている業務を説明する。
  • ② 現在の業務から判断し、引き受けられない理由を説明する。
  • ③ 解決方法について代替案などを提示する。
【アイスブレイク】行きたくない飲み会の断り方
「断ったら評判が悪くなりそうで怖い」と、飲み会を断るのをためらってしまうケースを何度も経験している。仕事の断り方でも紹介したが、どうしても飲み会に参加したくない場合は、角を立てずに上手に断ることが大切。まずは、誘ってくれたことにお礼(感謝)の気持ちを伝える。次に参加できないことを謝罪する。僕の場合の行けない理由トップ3は、「①喉が痛い」、「②すでに約束がある」、「③明日の朝、車の運転がある」である(笑)。

8. 最後に

頼まれた仕事を断らざるを得ない状況では、誠意を持って対応することが大切である。その場で判断できない場合は、「考えてみます」と返事をしてほしい。その場の緊張度によるが、状況による判断が必要であり、双方が「怒り」を残さないよう、相手に対する思いやりを持つことが必要だ。普段の会話(コミュニケーション)が円滑であれば仕事上でも効率よく進めることができるはずだ。

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熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

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