情シスが抱えるITインフラやネットワーク、セキュリティの悩みを解決するメディアサイト情シスが抱える悩みを解決するメディアサイト
ここから始める安全・簡単生成AI

Withコロナで気がついた、テレワークの継続を前提とした将来の情報システム運用

情シス
熱海 徹 氏
この記事の内容
1. ワークスタイルのハイブリッド方式と情シスの関わり方は?
2. 会社の事業を円滑に進めるには、情シスの役割が大切
3. 社員のITリテラシー強化は重要な課題
4. 情シス担当者同士の情報共有は、属人化を作らない
5. テレワーク環境での効果的な情シス運用
6. まとめ

1. ワークスタイルのハイブリッド方式と情シスの関わり方は?

「流れる雲に秋の訪れが感じられる」…9月は暦の上では秋になる。残暑が長引いていないとよいのだが、夏の疲れは残していないだろうか。

この2年間は、新型コロナウイルスの影響によりテレワーク導入の動きが加速した年だった。必要に迫られてとりあえず導入した企業も多いが、アフターコロナになっても従来の形態に戻す企業は少ない。テレワークに関しては、いつ同様の災禍にみまわれるか予測できないからだ。出社とテレワークが選択できるハイブリッド方式が新しいワークスタイルになりそうだ。

さらに、企業の目標として、ビジネスの新たな価値創造を目指し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させようとしている。企業が導入するITシステムや機器の種類も増加傾向にあり、情シスがどのように関わっていくか、今までと何が違うのか、今後の進め方についてお話しをしたい。

2. 会社の事業を円滑に進めるには、情シスの役割が大切

テレワーク環境が主流になって、情シスの役割がヘルプデスク化してしまったところはないだろうか。そもそもヘルプデスクとは、トラブルに対処したり、疑問や質問に答えたりする社内の「なんでも屋さん」のような役割があり、業務を円滑に進めるためには欠かせない存在だ。

企業によっては、総務や経理などのバックオフィス部門の担当者が、ヘルプデスクの役割を担うケースがある。しかし圧倒的に多いのが、情シスにヘルプデスクを兼任させているスタイルだ。あくまでも会社内での業務であり、テレワークでの環境になると従来のように対応するのは難しくなり、実際は、情シスがかなり苦労していることを知って欲しい。

テレワーク環境では、今までのように顔を見て話したり、実際に一緒にシステムを操作したりして説明できない。これで業務量が減ればいいのだが、逆に「未解決」が多くなっているのも実態として存在する。これらの不具合に対する社内の困りごとを引き受けるヘルプデスクが機能しないと、会社の事業を円滑に進めることが難しくなることを意味している。

ヘルプデスクも問題なく機能できるような環境を構築しておくことは、経営的な課題でもある。テレワーク環境での問題点は、社員のITリテラシーが低いことと、セキュリティに対する危機感がないことだ。運用ルールがあっても守らない社員が多く事故が減らない。社員が自分自身で調べる前にヘルプデスクに問い合せしてしまうケースも多い。気になるのは、その陰で重大対処に気がつかず対応が遅れてしまっては元も子もないのである。テレワーク環境では社員一人ひとりの意識と協力が必要になってくる。

3. 社員のITリテラシー強化は重要な課題

誰もが当たり前にITを利用するようになった現代において、社員のITリテラシー強化は重要な課題だ。自社の社員のITリテラシーが不足していると感じているなら、「自社はITリテラシーが低い」と結論付けて終わるのではなく、具体的な対策を取ることが大切。
リモートワークが始まってからいきなりWeb会議システムをインストールさせたり、操作を指示したりしても、使いこなしてもらうのは困難だ。そのため、少人数のグループごとの学習会を開くなどし、社員のITリテラシーを高める工夫が必要なのかもしれない。

社内のアプリケーションが上手く活用されないのは、社員だけが悪いのではなく、そもそも使いにくい画面だからだ。いちいちマニュアルを見なくても、ある程度使えるシステムにしておくことは、使ってもらう側の課題なのである。社員のITリテラシーを身に付けるハードルを下げるためには、デジタル環境に積極的に触れさせる環境づくりを優先してもいいのである。

4. 情シス担当者同士の情報共有は、属人化を作らない

新型コロナウイルス感染対策が強化されていた時期は、情シス担当者もテレワーク勤務が実施されていた。運用をするうえで最も注意したいのが、ナレッジに関するデータ共有である。同じオフィス内にいれば、互いに声を掛けながら問い合わせ対応を進められるので問題はなかったが、テレワークと混在しての業務では、誰がどのような仕事をしているのかわからず業務の稼働状況が見えづらい現象が発生する。

障害PCを確認する時でも、物理的な回収が迅速にできないためリモート接続対応になる。社外にいる社員の協力は不可欠になるため、対応できる時間管理も大変だ。弊害として考えられるのは、ナレッジの共有が不十分になってしまうと、対応の属人化が起きてしまうおそれがあることだ。見えないところでの個別の対応依頼が発生する傾向を意味している。依頼を受けた側も、ほかのヘルプデスクメンバーの稼働状況が見えないので、声をかけられず、自分自身で対応せざるを得なくなり、テレワーク環境であればなおさら情報共有が必要であることを言いたい。

5. テレワーク環境での効果的な情シス運用

ヘルプデスク担当もリモート環境下にいる場合、対応効率が下がる。オフィスにいれば、対応に必要なデータをすぐに引き出し回答できるような問題でも、自宅にいると手元に資料がなく、調べるのに困難を要するからだ。さらにシステムやIT機器のトラブルに関しては、リモートで指示を出すのは難しく、新型コロナウイルス感染リスクはあるにせよ、緊急事態の場合には自宅からオフィスに駆けつける必要がある。

オフィス内にいればすぐに解決できることでも時間と手間を要するようになり、対応効率は落ちていく。ヘルプデスクの対応効率が落ちてしまうがために、業務全体がスムーズに進まなくなることは避けたい。既に対応済みの企業は多いと思うが、改めてポイントを挙げてみる。

■チャットボットの導入
チャットボットは、「チャット=会話」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、会話形式の自動応答システムを指す。チャットボットをクラウド型の社内ポータルサイトに表示するように設定しておけば、社員からの質問に24時間365日、どんな時でも対応できるため、効率化が図れるツールだ。
■トラブル対応の環境を準備する
リモートワーク環境下で、社員のPCなどを遠隔操作できる環境を構築しておく。例えば、Web会議ツールで画面を共有しながら操作指示すると便利である。
■FAQやマニュアルを作成し、社内ポータルサイトに公開する
社内ヘルプデスクの問い合わせ先を掲載しているページに、FAQやマニュアルを参照するようリンクを設置する。FAQやマニュアルを準備する場合、フォルダを階層分けするとか、タグをつけて検索性を高める工夫は必要。
■期待を裏切らない電子マニュアル
ペーパーレスは必須で、電子データによる効率のいい管理を利用する。マニュアルの検索精度を高めるためには、まずは必要な情報を取捨選択し、最新のものにしておく管理が必要である。間違っても古いマニュアルを残しておかないように注意しなければならない。
誰もが経験しているが、検索する項目から思った通りにヒットするかなど、ユーザ目線で構築することが重要になってくる。マニュアルに対する信頼度が高まれば「また使おう」と思ってもらえるものになり、社員のリテラシーも向上するのである。
■ナレッジツールは「マニュアルを見なくても誰でも操作できる」が重要
ナレッジが共有できていると、問い合わせ対応の品質の標準化に役立つと同時に、属人化を防ぐのにも有効だ。ナレッジは、資料や情報をいかに整理して必要な時にすぐ取り出せるようにするかがポイントと考える。
ナレッジツールは、基本的に「マニュアルを見なくても誰でも操作できること」が重要かと思う。なんとなく直感的に使えるツールの方が使いやすかった。色んな機能があるものを選ぶより、できる限りシンプルなものを選びたい。社内ポータルサイトでナレッジを共有すれば、問い合わせを減らす効果も期待できる。

耳を傾けてくれるコミュニケーション

まとめ

withコロナ環境ではハイブリッドと言われるワークスタイルが主流になり、事業を円滑に進めるには、情シスの役割が重要であることを説明してきた。それにはITツールの使用が不可欠で、ITツールを使うことで情シスの業務負荷も減らせる。これにより、DX推進への目標に向けた業務に集中することもできるだろう。

また、社員の協力も必要で、ITリテラシーの向上が必要になってくる。ITリテラシーの向上を阻む要因の一つには、「デジタル化を受け入れようとしない、使ってみようと思わない消極的な姿勢」がある。基本的な使い方を学んで使ってもらう活動は大切だが、個人的には新しいシステムを使うにあたって、「遊び感覚」があってもよいのではないかと考える。デジタル化された環境にまずは積極的に触れてもらい、興味を持ってもらうことを優先してもよいのではないだろうか。

<< 関連コラムはこちら >>

■情シスに求められるスキル! 聞き手が耳を傾けるプレゼン力を身につける方法

■アフターコロナの時代は情シスの大きな転機になる~チャンスを生かし、今すぐ実践できること~

■「ソロ情シス」だからできるDXの進め方

■会話のキャッチボールから人脈作りは始まる

■システム障害時、パニックから抜けすためには?

■これからの情シス部門に求められる「あるべき姿」とは?

■目標設定と成功するためのタイムマネジメント「時間管理」について

■2022年を迎え、改めて情シスとDXについて考える

■2021年の振り返りと2022年の展望

■業務引き継ぎは、未来から逆算して臨む

■システム障害は、「気の流れ」が変わった時に発生しているのではないか

■情シス部門の必須知識! 経営層の理解を得て予算を獲得する方法

■デジタル変革(DX)に求められる人材はなぜ確保できないのか?

■テレワークにおける重要課題「気軽な雑談」方法とは?

■嫌われる「情シス」と「ベンダー」の共通点とその改善策

■テレワークによるコミュニケーション不足解消と、メンタルヘルスケア

■組織で挑む、ヒューマンエラー抑止(全1話)

■情シス業務の醍醐味(全3話)

■有事に備えよ!(全3話)

熱海 徹(あつみ とおる)氏

■著者紹介■

熱海 徹(あつみ とおる) 氏
1959年7月23日、仙台市生まれ、東京都在住

40年近く日本放送協会 NHK に籍を置き、一貫して技術畑を歩んできた。転勤の数は少ないが、渡り歩いた部署数は軽く10を超えている。その中でも情シス勤務が NHK 人生を決めたと言っても過言ではない。入局当時は、放送マンとして番組を作るカメラマンや音声ミキサーに憧れていたが、やはり会社というのは個人の性格をよく見ていたんだと、40数年たった現在理解できるものである。20代の時に情シス勤務をしたが、その後に放送基幹システム更新、放送スタジオ整備、放送会館整備、地上デジタル整備等、技術管理に関する仕事を幅広くかかわることができた。今まで様々な仕事を通じてNHK内の人脈が自分としては最後の職場(情シス)で役に立ったのである。考えてみたら35年は経過しているので当たり前かもしれない。2016年7月には自ら志願して、一般社団法人 ICT-ISAC に事務局に出向し、通信と放送の融合の時代に適応する情報共有体制構築を目標に、放送・通信業界全体のセキュリティ体制整備を行った。ここでも今までの経験で人脈を作ることに全く抵抗がなかったため、充実した2年間になった。私の得意なところは、人脈を作るテクニックを持っているのではなく、無意識に出来ることと、常に直感を大切にしているところである。

関連キーワード