AIの技術は急速に進歩しており、企業の業務効率化において重要な役割を果たしています。定型業務の自動化、迅速なデータ処理、戦略的意思決定の支援などにAIを活用し、競争力を高めている企業も珍しくありません。また、最近では生成AIの話題がよく取り上げられていることからわかるように、AIの活用はますます加速しています。
この記事では、AIを活用した具体的な業務効率化の事例と、AI導入のための重要なポイントについて解説します。
AIを活用した業務効率化のメリット
AIにはさまざまな種類があり、企業の業務効率を飛躍的に向上させる強力なツールとして活用することが可能です。ソフトクリエイトでもAI活用に向けた取り組みを続けており、現在は特に生成AIに注力しています。
ここでは、AIで効率化できる業務の例と、AI導入がもたらすメリットを説明します。
ルーティンワークの短縮による生産性の向上
AIを活用すれば、ルーティンワークといわれる定型的な業務を効率化し、時間を短縮できるようになります。例えば、データ入力や文書整理などの繰り返し行う作業の多くは、AIによって自動化が可能です。これにより、従業員はより創造的な業務に集中できるようになり、組織全体の生産性向上にもつながります。
また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とAIの組み合わせによる高度な自動化も導入されています。RPAは、ソフトウェアロボットを用いて定型的な業務プロセスを自動化する技術です。
AIは、データの分析や予測、自然言語処理など高度な処理を行う能力を持っており、RPAと組み合わせることでより複雑な業務も自動化できます。例えば、AIがデータ分析を行い、その結果をRPAが自動でレポートにまとめて配信するといった、一連のプロセスを自動化することが可能です。
大量のデータを迅速に処理し、リアルタイムに対応
AIは、大量のデータを短時間で処理する能力を持っています。この能力を活用すれば、データ分析やレポート作成などの業務を迅速かつ正確に行えるため、リアルタイムに必要な対応ができるのがメリットです。
一般のコンピューターも迅速なデータ処理能力を持ちますが、AIは自律的な学習や自然言語処理、画像・音声認識、予測分析、リアルタイム適応といった優れた特徴を持っています。そのため、例えば販売データ、顧客データ、在庫データなどの多様なデータを一括して取り込み、リアルタイムに処理することが可能です。
また、AIは大量のデータを多層的に分析することで、従来のデータ処理技術を超える分析精度を実現します。経営陣は、最新データにもとづいた分析結果を利用して意思決定を行うことができるでしょう。
生成AIでもこのような企業データを活用した取り組みが進められており、 kintone や SharePoint にあるデータをリアルタイムで活用することが可能です。
属人性の高い業務を標準化
AIの力を借りて、属人性の高い業務を標準化できることもメリットです。専門性の高い業務手順をAIに記録させて標準化し、業務マニュアルを作成したり、その手順書に従ってAIにできる作業を自動化したりすることができます。後述するAIチャットボットによる顧客対応などは、その好例です。
AIを活用し、個々の従業員のスキルや経験に依存しない、一貫した品質を保つ業務遂行の仕組みを作れば、企業は特定の人材に頼らずその業務を行えるようになります。
従業員の文章作成スキルやデザインスキルが向上
生成AIを使って、文章やデザインのたたき台を作ることも可能です。このような技術を活用すれば、従業員の基礎スキルが向上するのと同じ効果が得られます。
AIによる業務効率化の例
AIによる業務効率化の例を、具体的に見ていきましょう。自社でAIを導入するためのヒントにしてください。
AIチャットボットによる顧客対応
AIチャットボットとは、AIを利用してユーザーと自然言語でのやりとりができるチャットプログラムです。高度な対話能力を持ち、24時間対応可能なため、導入する企業が増えています。
AIチャットボットは、顧客からの問い合わせにいつでも即座に対応可能です。これにより、顧客は必要な情報を必要なときに、簡単かつ正確に得ることができ、顧客満足度が向上します。
一方で、従業員が手動や口頭で対応する必要がなくなるため、対応にかかっていた時間を込み入った問い合わせやイレギュラーな対応にあてることができ、業務効率が向上します。
例えば、よくある質問に対する回答や商品の在庫確認、簡単なトラブルシューティング、さらには過去のやりとりや購入履歴をもとにしたパーソナライズされた回答などを、AIチャットボットが自動で行うことが可能です。これにより、企業は迅速かつ一貫したサービスを提供することができるでしょう。
生成AIのチャットボットには、データを用意すればすぐに学習してチャットボットとして使い始めることができるものもあります。比較的敷居の低いAI活用のひとつです。
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財務、経理手続きの自動化
AIを活用すると、財務や経理手続きのプロセスの多くを自動化することも可能です。業務の自動化により入力のミスが減り、処理時間を大幅に短縮できるため、業務の効率化と精度の向上が図れます。
例えば、OCR(光学文字認識)を用いて紙の請求書をスキャンしてデジタル化し、内容を自動的に読み取って適切な項目に分類、そのデータを既存の会計システムに入力するといったプロセスを自動化できます。また、支払期日や金額を自動で確認し、不整合があればアラートを発することも可能です。
ほかにも、従業員の経費精算や財務報告レポートの自動作成、キャッシュフロー管理なども、AIによって自動化することができます。
データ分析や戦略策定の効率化
AIの導入により、データ分析や戦略策定のプロセスを効率化することもできます。AIにできる作業は、大量データの高速処理、パターン認識と予測分析、自然言語処理によるテキスト分析、自動レポート作成などです。そのため、販売データや顧客データ、市場データ、財務データ、あるいは人事データなどを分析し、企業の戦略策定に役立つ現状報告レポートや、将来の予測分析をリアルタイムにアウトプットすることができます。
また、AIとビジネスインテリジェンス(BI)ツールを統合すれば、さらに高度なデータ分析と戦略策定を行うことができます。BIツールは、企業内に蓄積された膨大なデータを集計・分析して可視化し、経営陣などがデータからインサイトを得やすくするためのツールです。AI分析による情報を必要なときに瞬時に得られるようにしておけば、戦略策定や意思決定の効率化・迅速化に役立ちます。
会議の議事録や要約の作成
AIの音声認識技術と自然言語処理技術を利用すれば、会議中の音声をリアルタイムで認識して自動的にテキスト化し、議事録や要約を迅速かつ正確に作成することが可能です。 大人数の会議でも、発言者の違いをかなり正確に識別できます。また、会議終了後の議事録の自動作成、決定事項や参加者各自の持ち帰り事項といった要約の自動作成も可能です。多言語での会議の場合は、自動翻訳もAIに任せることができます。
このように、現在ではAIの活用によって会議の議事録や要約の作成が容易になり、正確な情報を即座に記録・共有することが可能です。それにより、会議の質が向上します。
音声認識・議事録作成も生成AIの技術活用のひとつです。 Microsoft 365 を導入している場合は、Teams会議から直接 Copilot を使うことで利用できます。
スケジュール管理の最適化
AIは、スケジュール管理の最適化にも役立ちます。リマインダー送付やスケジュールの自動作成といった管理のほか、時間管理の改善や無駄な時間の削減を提案することも可能です。
例えば、定期的な作業をAIが検出してリマインダーを送信することで、忘れ物や遅れを防ぐことができます。
また、会議のスケジュール調整では、AIがメンバー全員の空き時間を検出し、最適な時間を提案することが可能です。AIの自動化機能や分析機能を活用することで、より効果的な時間管理が実現し、業務の効率化が図れます。
スケジュール管理にも生成AIを活用することができます。 Outlook や kintone 、Googleカレンダーなどのスケジュール管理のためのツールと生成AIを連携させれば、スケジュール調整や実績の出力などが容易にできるようになります。
在庫管理の自動化
AIを活用することで在庫管理を自動化すれば、効率的な在庫運営が可能です。このことにより、在庫の過剰や不足を防ぎ、コスト削減と顧客満足度の向上を実現できます。
例えば、AIで在庫レベルをリアルタイムで監視し、補充や発注を最適化することができます。また、過去の販売データや市場トレンドを分析して将来の需要を予測し、在庫データの監視と需要予測にもとづいて自動的に在庫の補充や発注を行うシステムも構築可能です。
AIを活用した在庫管理システムは、企業のニーズに応じたカスタマイズが可能で、それぞれの状況に合わせた効率的で正確な在庫運営を実現します。企業は在庫管理にかかる時間と労力を削減し、より戦略的な業務にリソースを集中させることができるでしょう。
AIを業務導入するまでの3つのSTEP
AIを業務に導入する最大の目的は、業務の質を向上することです。そのためには、既存業務の理解や、導入の見通しを明確にすることが重要です。ここでは、AIを導入するまでの3つのステップを解説します。
1. 各部門における導入の対象業務を可視化
AI導入に限らず業務改善するためには、まず現状の業務を把握し、可視化することが大切です。
プロジェクト推進の立場では、意外と現在の業務フローの詳細まで把握していないことも多いのですが、いつ・誰が・どんな手順や基準で業務しているのか可視化することで、どの部分にAIを活用するのか、具体的な計画を立てることができるようになります。
2. 対象業務における課題を特定
現在の業務を可視化したら、次は目的に対して業務の課題やボトルネックを洗い出し、特定します。
人手が足りず自動化したい、AIを使って人間以上の判断をしたい、ヒューマンエラーを減らしたいなど、AIを活用することによって実現したいメリットがあるはずです。
このような観点で、業務のどの課題に対し、どうAIを活用していくのか具体化していきます。
ここでポイントとなるのは、AIをマイナスを埋める目的で利用するのではなく、プラスを生み出す目的で利用することです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進でも同様に論じられていますが、AIを導入することで業務に付加価値が生まれることが、導入後に「成功した」と評価するためにも重要です。
3. 適切なAIのタイプを選定し、導入
業務課題やAIの活用方法が決まったら、それに適したAIの選定に進みます。
AIはツールとして提供されているものからシステム開発を前提とする技術までさまざまですが、目的を達成するために必要な製品や技術を選定します。ときには、複数のAIを組み合わせる必要があるかもしれません。
AI技術の種類としては、自然言語処理、画像・音声認識、予測分析や、生成AIによる文章・画像生成など多岐に渡ります。
特殊な事情や複雑な技術を要する場合は、まずはITベンダーに相談するのがおすすめです。
また、費用面や導入までの日数の面から、比較的導入のハードルが低いのはAIツールです。無料トライアルを提供しているベンダーもあるので、導入テストを行ってから決定するとよいでしょう。
AI活用を成功に導く3つのポイント
AIを導入する際には、しっかりと計画を立ててプロジェクトを進めることが成功のカギを握ります。AI活用を計画する上で重要なポイントは、主に下記の3つです。
AIを導入する目的の明確化
AIを導入する目的は何か、AIによる効果をどのように見込んでいるかを明確にしましょう。
どの業務がどのようになればプロジェクトが成功と言えるかという指標を決め、ゴールまでのプロットを立てることが重要です。
専任のプロジェクト体制を構築
プロジェクトをスムーズに推進するためには、専任のメンバーを選定するとともに、AIの知識を身につけた専任者を育成する必要があります。また、関係部署にプロジェクトを周知し、協力体制を作っておくことも大切です。
自社に合ったパートナー選定
自社にあったパートナーを選定することは、AI導入のプロジェクト成功に大きく影響します。
AIベンダー選定のポイントとしては、ベンダーの技術力や柔軟性、対応力を評価します。高い技術力を持っているベンダーであれば、スムーズな実装と運用が可能な上、導入後のサポートも期待できます。また、変更や追加要求に迅速に対応できる柔軟性があるベンダーであれば、業務のニーズに応じたカスタマイズも可能です。
ソフトクリエイトでは、 Safe AI Gateway の導入をお考えのお客様に、ニーズに合わせたご提案を行っております。状況に合わせて、精度改善のレクチャーや強化学習データの作成といった伴走支援サービスもご提供が可能です。
AI導入後の改善ポイント
AIの導入後も、定期的なフィードバックとデータの更新により継続的な改善が必要です。AIのパフォーマンスを最大化するポイントを見ていきましょう。
フィードバックの収集
AIの運用中に発生する問題や改善点を定期的に収集します。ユーザーからのフィードバックや運用データを分析することで、改善点の特定が可能です。運用しているAIが生成AIであれば、ユーザーが直接生成AIに向けて投げかけた言葉がそのままフィードバックとなるので、ほかのAIに比べてフィードバックが収集しやすく、内容もわかりやすいです。
AIモデルの更新
AIモデルは、学習データが増えるにつれて精度が向上します。定期的に新しいデータを追加し、モデルを再トレーニングすることは、AIのパフォーマンス向上のために必要です。生成AIの場合はある程度モデルのトレーニングが簡易化されていたり、日本語のプロンプトで処理を制御したりすることができます。ただ、AIのモデル更新は全般として専門知識が必要なので、エンジニアやAI専門のベンダーに任せたい部分でもあります。
パフォーマンスの監視
AIのパフォーマンスを継続的に監視し、定期的な評価を行います。KPI(主要業績評価指標)を設定し、目標達成度を確認することで、効果的な運用が可能です。処理の自動化やチャットボットへの置き換えであれば、業務にあてていた工数の削減などで評価できます。生成AIの場合は社員への活用推進や利用率が導入効果に関わる部分ですので、利用量の評価が必要です。
AI導入による業務効率化で競争力の強化を
AIの強力なデータ処理能力と自律的な学習機能を活用すれば、企業はさまざまな業務プロセスを自動化し、正確性を向上させ、迅速な意思決定を行うことができます。これにより、組織内の業務効率化が進み、業務の質も向上するでしょう。
AIの導入は単なるコスト削減にとどまらず、企業全体の競争力を高め、持続的な成長を支える重要な要素となります。
ソフトクリエイトが提供する Safe AI Gateway は、企業が生成AIを安全・簡単に利用できるように開発されたサービスです。企業内に ChatGPT を用いた安全な専用環境を作ることで、セキュアな生成AI活用を実現します。また、生成AI型のチャットボットを自社で簡単に作ることも可能です。
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