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生成AIの業務効率化事例 -営業マニュアルを活用した「業務確認くん」

情報システム部門
AI
この記事の内容
[課題]マニュアル化しても業務が効率化しない…
[プロセス]開発部隊と連携し、生成AIチャットボット「業務確認くん」開発へ - 乗り越えた課題とは?
[成果]業務効率化に加え、マニュアル更新のモチベーションも向上
[今後]実際に使ってみることで、生成AIの活用アイデアが広がる
[提供サービス]社内プロジェクトの成果を活かし、生成AIを企業のインフラに

企業における活用が高い注目を浴びている生成AI。しかし具体的な業務活用まで落とし込めている企業はまだ少なく、その多くがPoC止まりではないでしょうか。弊社のお客様からも、「AI活用のイメージがつかないので、事例が知りたい」とのご要望を多くいただきます。

そこで今回は、AI分野の研究・開発と業務活用を推進している弊社の取り組み事例をご紹介します。AIに詳しい開発部門と、業務に従事する営業(業務)部門が共創し、試行錯誤を繰り返して実現した成果を、プロジェクトメンバーがあますところなく語り尽くします。

企業における生成AI活用のヒントとして、ぜひご一読ください。

[課題]マニュアル化しても業務が効率化しない…

-皆さんの業務内容と、業務上の課題についてお聞かせください。

私が部長を務めるSC業務サービス部は、営業と技術の部隊をサポートするアシスタント業務グループと、システム化を通して 業務効率化を推進する企画・推進グループ、システムを自社で開発・運用する運用グループで構成されます。今回同席する鈴木 と齊藤は企画・推進グループに所属し、鈴木は元営業本部、齊藤は現在も営業本部と兼務しています。(古田島・SC業務サービス部 部長)

部門連係イメージ

営業本部には見積作成や受発注時の業務フローにおいて、さまざまなルールがあります。取り扱う製品やサービスのメーカーであるパートナーが数十社に上り、独自ルールがある場合は取引先の会社や部署ごとのルールもあります。営業関連のマニュアル点数が非常に多いことと、そのマニュアルが社内のあちこちに点在していることが課題でした。(鈴木・SC業務サービス部 企画・推進G)

-各マニュアルの整備はどのように行ったのでしょう?

直近では、それらの情報をまとめた統合的な受発注マニュアルを作ろうという動きがあり、2023年の6月頃から約半年かけて営業や業務の有志が10名ほど集まり、各人の頭の中にある情報をアウトプットして、手分けして文章にして集めてマニュアルとしてまとめました。(齊藤・SC 業務サービス部 企画・推進G 兼務 アカウント営業統括部)

-業務マニュアル活用におけるお困りごとは?

マニュアルを整備しても、営業は忙しいのでじっくり読む余裕がありません。なにしろ点数も多いので、どれを見ればよいか分からない、探してもどこに載っているか分からないといったことも多く、営業部内のグループチャットで質問して、分かる人が答える、それでも分からないときは業務サービス部 に質問が来るといったことが頻発していました。私も時には同期のグループチャットとかも使って、社内で知っている人を探すとか。なので、これがAIチャットで解決できたら助かるよね、というのは以前から社内でよく話題に上っていました。(鈴木)

マニュアルの更新についても任意なので、各人がキャッチアップした情報や、情報が古いですよ、この情報ないですよって連絡があったら誰かが追記するみたいな状態で、更新性にも不安がありました。(齊藤)

左から古田島、鈴木、齊藤、畠山

[プロセス]開発部隊と連携し、生成AIチャットボット「業務確認くん」開発へ - 乗り越えた課題とは?

-こうした営業部門の課題感を、開発としてどう捉えたのでしょうか?

当社は生成AI開発をスタートするにあたって3年間のロードマップを描き、最終的に「暗黙知の領域を生成AIで汲み取って回答できる」仕組みの開発を目指しました。生成AIは学習したことは回答できますが、業務活用においては「知らないこと自体が分かっていない」「これまでの慣習的にこうなっていた」といった暗黙知の存在が問題です。ですのでその部分をしっかり生成AIの中に組み込んでいって、「誰よりもよく知っているアシスタント」みたいな形で位置づけられれば、生成AIを企業のインフラ としてご活用いただくところまで持っていけるのではないか、との仮説を立てました。

その上で、2023年末頃から社内で情報システム部門などいくつかのマニュアルについて生成AIを利用したチャットボットに仕立て、社内展開する動きを開始しました。今回の営業業務のアシスタントチャットボットもその一環です。ところが、やってみるとなかなか大変で、実際にやってみないとわからないことも、たくさんありました。(畠山・製品開発部 部長)

畠山・製品開発部 部長

-どういった点が大変なのでしょうか?

1点目は、生成AIでの回答作成はドキュメントの内容により得手不得手、得意な領域と得意ではない領域があるため、学習の元となるデータの整備が必要になる点です。

今回は Microsoft OneNote に書かれた業務マニュアルを基にしたのですが、章立て、ページ立て、項目の整理といったマニュアルとしての整備に加えて、段落や句読点などの書いた人による文章のクセなどを含めて、生成AIでの回答作成に必要なデータ抽出がしやすい形に整えてもらう手間が、最初の課題でした。(畠山)

確かに、マニュアルはメンバーで手分けして作成していますので、そういった整理は追いついていなかったと思います。(齊藤)

-そうなると、生成AI活用前にユーザー側でマニュアルをしっかり整備する必要がある?

開発当初はそうでした。しかし、実際に社内でPoCを行ってみてユーザーの皆さんにその負担はかけられないと判断し、現在はそこを自動的に成形するプログラムを開発、実装しました。およそほとんどのドキュメントは読ませると自動的に内部で段落などを整形して、かつ文章ごとに文意を抽出、それらをベクトルデータ形式に変換する作業までを自動的に行います。(畠山)

-そのほかの難しさとは、何でしょうか?

2点目は、日本語特有の課題です。主語がなく、英語などに比べて文法が複雑な日本語をいかに精度良く学習させて、生成AIから精度の高い回答を引き出すのかというテクノロジーは、かなり試行錯誤を繰り返しました。これについては単語ではなく質問に対する「文意」を捉えて、その回答を生成するために必要なデータを取得するセマンティック解析というテクノロジーを利用。回答精度が上げられないか何度もトライしました。

文意を捉えることで、例えば同じ回答が複数のソースにあるという場合も、その質問に応じてもっとも適した、精度の高い回答を導き出すことが可能になりました。(畠山)

-そのほかの生成AIの業務活用におけるハードルは?

3点目は、マニュアルの文中にある図の扱いです。マニュアルでは業務フローとか、取引先システムの画面キャプチャーなど、図を絡めて説明されています。開発したシステムはテキスト解釈できますが、図は読み飛ばします。

当社では画像の位置関係を生成AIに把握させて、前後の文章から回答を生成する際に参考画像として示す方法を考えました。説明に関連する図が一緒に表示されれば、マニュアルの説明としては事足りる場合が多いと考えました。こちらの技術は、特許出願中です。

そして4点目、社内にナレッジが散在している課題。これについては、今回の学習対象は Microsoft OneNote でしたが、社内のファイルサーバーやMicrosoft SharePoint、Microsoft Teams などとも連携させて、横串で学習対象とする連携性も強化しています。今年中にはわざわざ生成AIに学習させるアクションを取らなくても、連携先から回答に必要なデータを自動的に取得し、瞬時にベクトル化、必要な回答を生成する、といった技術もロードマップで計画しています。(畠山)

生成AIチャットボット開発における課題

-利用中にマニュアル情報に更新、変更が生じた際は、ユーザーはどういう作業が必要なのでしょうか?

その追加・変更が書かれたテキストファイルを管理画面からアップロードするだけで、チャットボットの更新は終わりで、およそ1分ぐらいで学習が完了します。特段、更新箇所を提示する必要もありません。

これに関連して、もし特定のルール付けやバイアスをかけたい場合、たとえば自社や部門、取引先に応じた専門用語などがある場合も、そのルールをテキストファイルで作成して学習させれば、強化学習の仕組みで全体的に上書きされます。

これまでのAI チャットボットのようにFAQの一問一答を作成する必要がないことが、生成AIならではの強みです。(畠山)

「業務確認くん」活用イメージ

-普通の会話形式でやり取りできる点も、生成AIならではの強みなのでしょうか?

その点はよく誤解されるのですが、実は質問を受け付けたあと、生成AIに対する指示を組み立てる部分は、生成AIとはまったく無関係のシステムなのです。その部分をさまざまな会社が異なるシステムを組んでいて、各社の技術によって回答精度が異なります。同じ質問でも求めた回答が得られるかどうかは、そのシステムの能力の違いです。当社は、この生成AIに対する指示のチューニングはかなり作り込み、一部は特許出願も行っています。(畠山)

-企業で生成AIを活用する場合、情報漏えいを不安視する声もあると思います。

当社のシステムは安全性の部分も、何重も配慮したシステムとなっています。データを置く場所、認証、再学習しないといった点については完全に指定通りに動くようにしてあるのと同時に、第三者のセキュリティチェックも受けており、ご安心いただけると思います。(畠山)

ユーザー画面
チャットボットを再定義、「誰(どのチャットボット)と会話をしますか」を選択して利用する設計で、
目的ごとにURLの乱立を防ぎます。
マニュアルを見なくても直感的に操作しやすい設計です。

管理者画面
「学習データ登録」からファイルをドラッグアンドドロップでアップロードすれば、およそ1分で学習が完了。
チャットボットの一元管理もしやすい設計です。

[成果]業務効率化に加え、マニュアル更新のモチベーションも向上

-2024年1月から取り組まれて、どのくらいでテスト利用が始まったのでしょうか?

2月には使い始めましたので、早かったですね。マニュアルをシステムに組み込むのも開発部隊に依頼する必要もなく、インターフェースからドラッグアンドドロップでアップするだけなので、オペレーションもすごく簡単。思うような回答が得られなければマニュアルを更新すればどんどん良くなるので、使う側としては非常にシンプルでいいなと思いました。(古田島)

「業務確認くん」開発プロセス概要

-利用を開始してみての感想はいかがですか?

マニュアルを自分で探すのではなく、知りたいことをチャットで投げればすぐに回答が得られるのは、やっぱりすごく便利で、忙しい営業のストレスもかなり緩和される気がしています。回答の精度についてはシステムよりマニュアル側の書き方にあると思っていまして、きちんと書かないと、しっかり情報を載せないと、常に更新しないと、というモチベーションにつながるのが、やってみて気付いた成果ですね。これまではマニュアルを苦労してまとめてもあまり見てもらえなくて結局、直接質問がくることが多かったのですが、このシステムを使うことでマニュアルや情報を更新する重要性が、社内で再認識できた印象があります。(齊藤)

生成AIが返した回答についてちょっと違うなと感じたとき、参照元はどこ?と探す必要があったのですが、それもアップデートしてくれて、いまは回答に参照元が表示されるようになり便利になりました。(鈴木)

開発チームも試行錯誤を繰り返してくれて、我々のニーズを捉えて知らない間にどんどんシステムがバージョンアップするのは、見ていて驚きました。(古田島)

システムは毎月バージョンアップしてますね。実際にご利用いただいているお客様もいますので、ユーザー インターフェースの文字サイズなどの細かな箇所も、ご指摘を踏まえて改善しています。この3ヶ月で4回リリース、改善箇所で言えば60ヶ所以上です。(畠山)

[今後]実際に使ってみることで、生成AIの活用アイデアが広がる

-今後について、どのようなアイデアがありますか?

まだまだ当社には多くのマニュアルがありますので、それらを反映させてシステムを充実させることに加えて、やっぱり生成AIの学習の元となるマニュアル自体の整備、ブラッシュアップが重要だと感じています。(鈴木)

システム側としても、さらにユーザー側での更新のしやすさを追求すると共に、更新履歴の管理も必要と認識しています。あとは、回答の精度をユーザー側からフィードバックしてもらう仕組みだとか、まだまだやることはたくさんあります。(畠山)

社内ユーザーからの質問がデータとして見える化すると、どんな情報を更新、追加したらよいかも把握できるようになりますよね。あとは、ユーザー側の理解度チェックみたいな使い方もできるかもしれないですね。(鈴木)

当社は毎年10名くらい新入社員が営業部署に配属されるので、これまで毎年、同じ時期にお約束のように同じ質問を個別にチャットやメールで対応していました。それも自分の知りたいタイミングで聞ける仕組みがあれば、業務側の負荷もかなり軽減しますし、聞く側のストレスも解消するでしょう。新入社員に限らず中途入社の方も多いので、忙しそうな周囲の人に聞くより、チャットボットの方が聞きやすいですよね。(鈴木)

そのほか、この仕組みは営業活動にも使えたらいいんじゃないかなと。当社は取り扱い製品がたくさんあるので、すべてを把握するのは難しい。これはどんな製品なの?とか、このお客様にお勧めの製品や機能は?とかに答えてリコメンドしてくれたら、営業はすごく助かると思うので、取り組みたいです。(齊藤)

[提供サービス]社内プロジェクトの成果を活かし、生成AIを企業のインフラに

-今回の「業務確認くん」は、お客様への販売実績があるのでしょうか?

名前は違いますが、同様のことが実現できる「 Safe AI Gateway 」を、2024年2月に販売開始しました。5月時点で10数社のお客様にご利用いただいています。就業規則などを学習させて社内問い合わせに対応する、製造業ではISOとJISのマニュアルの差分を回答する、Webサイトの情報を学習してお客様向けチャットボットとして公開する仕組みなど、概念は同一ですが、利用目的は業種業態、会社によって千差万別です。

-それでは最後に、今後の取り組みについてのお考えをお聞かせください。

社内に開発がいることで双方のナレッジやノウハウが蓄積しやすいのが当社の強みだと思います。自社で活用しているからこそお客様に安心してお勧めできますし、サポートもしやすい。当社が感じている課題は多くのお客様企業でも同様だと思いますので、より良いサービスを提供することで少しでも貢献できたらと考えます。(古田島)

開発としても社内でダイレクトなユーザーの声が聞けるのは、非常に参考になります。当社は生成AI部分以外ほぼ社内メンバーで開発しており、迅速な改善が強みです。今後もさらなるブラッシュアップを重ねて、お客様の企業インフラの1つとして安全な生成AIを取り入れていただけるよう、邁進します。(畠山)

※記載内容は 2024年5月現在のものです。
※記載されている会社名、製品名などは一般に各社の登録商標または商標です。

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Safe AI Gateway

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