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生成AIの業務効率化事例- 新卒採用向け 生成AIチャットボット「ソフクリAI質問ルーム」

情報システム部門
AI
この記事の内容
[課題] 当社への理解度を高め、内定辞退者を削減したい・・・
[プロセス] 開発と連携し、新卒採用向け生成AIチャットボットを開発
[成果] 人事部門の業務負荷軽減、就活生の理解度強化や意識度の把握にもつながる
[今後] データを活用し、採用活動のさらなる高度化を目指す
[提供サービス]

いま話題沸騰中の「生成AI」。自社の業務に活用したいものの「どんなことに使えるのか、どう進めたらよいのかがわからない」「具体的な事例が知りたい」とお感じではないでしょうか?

前回の営業部門での活用編 に続く今回は、新卒採用向け生成AIチャットボットの自社事例をご紹介します。人事部門が抱えていた業務課題とは?開発部門と共に、生成AI活用でどのように解決したのか?プロジェクトメンバーが、その開発プロセスと成果を語ります。

企業における生成AI活用のヒントとして、ぜひご一読ください。

[課題] 当社への理解度を高め、内定辞退者を削減したい・・・

- 新卒採用における、人事部の業務課題をお聞かせください。

当社はソフトクリエイトホールディングスグループとしての一括採用を行っており、私の所属する人事総務本部 新卒採用推進統括部では、5名のスタッフで毎年100名規模の新卒採用を担当しています。選考に参加いただく学生さんは数千名に上り、問い合わせ対応だけでもかなりの業務負荷です。質問は説明会などの対面の機会のほか、メールでも受け付けて対応していますが、学生さんたちにとってメールでの問い合わせはハードルが高いのではないかと考えていました。

普段はメールをあまり使わない世代ですし、有給休暇や離職率、給与についてなどは、なかなか問い合わせしづらいと思います。また、それぞれ当社への関心が高まる時期も違い、異なるタイミングで聞きたいことが生まれると思いますので、学生さんが自分の知りたいタイミングで気兼ねなく、気楽に問い合わせできる仕組みがあるといいな、と感じていました。(猪野・人事総務本部 新卒採用推進統括部 主任)

[図1] 新卒採用における課題

- 生成AIチャットを開発することとなった経緯は?

ソフトクリエイトの営業本部も新卒採用に関わっており、志望する学生の当社ビジネスに対する理解度のバラつきが、採用活動の課題として捉えていました。1次、2次と選考が進む中で当社への理解度が高まっていないように感じていまして、その要因は1次面接を担うグループ長や課長クラスの面接スキルのバラツキもあると思うのですが、採用プロセス全般を通じてなんらかのミスコミュニケーションが生まれているのではと。それで人事部門にヒアリングすると、先ほど猪野さんの挙げた課題と重なりました。当社はいま、生成AIの開発に注力しており、さまざまなお客さまの業務課題に取り組んでいますので、すぐに開発部門の責任者と会話して、「就活中の学生さんを対象とした生成AIチャットを開発して活用しよう」ということになりました。(富樫・営業本部 副本部長)

左から富樫、猪野、佐々木

[プロセス] 開発と連携し、新卒採用向け生成AIチャットボットを開発

- 開発はいつからどのくらいの期間で進んだのでしょうか。

検討を開始したのが2023年の7~8月頃。初めは、人事部門が持っている質問と回答例のテキストを私が精査して開発チームに渡して、10月頃にはプロトタイプを触り始めたので、検討から形になるまで早かったですね。(富樫)

- 生成AIが回答する内容は、人事部門の方でまとまっていたのでしょうか?

ある程度は・・・です。採用説明会や面接、メールで受けた質問に加えて、インターンや中途採用の社員から寄せられた問い合わせなど、情報はいろいろありました。ただし、きちんと整理された状態ではなく、現状あるものを富樫さんに渡して、後はお任せする形でした。(猪野)

最初は50項目くらい。それをしっかりカテゴリに分けるなどの手順を踏んでいくと時間がかかってしまうので、生成AIが模範解答として回答する文面をイメージして少し手直しして、開発に渡すようにしていました。開発からも「最初から完成を目指すのではなく、現物を触りながら調整していけばいい」と言ってもらえたので、準備はそんなに大変ではなかったです。(富樫)

- ユーザー側の準備はそれほど大変ではないのでしょうか?

はい、生成AI型チャットボットは事前準備がとてもラクなのが、大きな特長です。従来型のチャットボットは設問が選択式で、シナリオ型で絞り込んで回答するものが多いのですが、一問一答形式でのすべての回答と、さらに全分岐シナリオも用意する必要があり、準備がとても大変です。生成AI型チャットボットの場合は、質問回答のカテゴリ分けや順番などは気にせずテキスト情報をどんどん投げ込めば、あとはAIが学習してその中から必要な情報を勝手にピックアップ、自然な対話形式でうまく回答してくれます。(佐々木・製品開発部 プロダクト推進グループ長)

[図2] 従来型と生成AI型のユーザー準備の違い

- 実際にプロトタイプを触った印象はいかがでしたか?

もちろん初めは思うような回答が得られないこともありましたが、実際に触ると「なるほど、こういう項目が足りないのか」ということが分かりますので、人事部とも協議して、質問と回答を足していきました。それとは別に、学生に対して事前に当社の求める人物像を理解して面接に臨んでもらいたいという思いがありましたので、そういう回答が得られるような情報を追加する、といった工夫も施しました。(富樫)

- 質問や回答の更新は、どのように行うのでしょう?

作り込みやメンテナンス、項目の追加や削除が非常に簡単なのも、生成AI型チャットボットのメリットです。従来型だと、項目を追加する場合は差し込む場所を指定して、全体のシナリオも毎回更新しなければならずかなり大変なのですが、生成AI型であればとにかく情報を追加すればあとはAI側でそれを学習して、必要な場面で回答として使用してくれます。(佐々木)

- 回答の精度はいかがでしたか?

プロトタイプの段階から予想以上に自然な会話が成立することに、驚きました。ただ単に回答例を引っ張ってくるのではなく、聞いたことに対して会話する感じできちんと答えてくれる。中にはうまい言い回しとかもあって、人事部の若手スタッフにも参考になるんじゃないかと感じるレベルでした。(猪野)

- 生成AIの回答精度を高めるのは、どういう技術なのでしょう?

生成AIの回答精度には、大きく2つの技術が関わってきます。1点目は、プロンプトと呼ばれる指示・命令技術。生成AIに対する指示は、役割・制限・質問内容・補足の情報が必要です。今回の「ソフクリAI質問ルーム」では、管理者が役割や制限をシステムプロンプトとして指定します。例えば役割は「あなたは採用のプロフェッショナルです」。制限は「必ず日本語で回答してください」「当社の情報ソース以外のことは回答しないでください」「学生向けに、わかりやすく回答してください」など。そしてユーザーが質問してきた内容が続き、補足情報として直前のやり取りを付帯して、生成AIに対する指示となるイメージです。2点目は、自社データの抽出、RAG (検索拡張生成)と呼ばれる技術です。実はここも回答精度に大きく関わっていまして、単純に自社データを抽出することは簡単にできるのですが、直前のやり取りの内容と矛盾がないように回答させるためのデータ抽出が、重要です。当社はこの辺りの技術はかなり作り込み、一部は特許を申請しています。(佐々木)

[図3]回答精度を高めるソフトクリエイトの技術

- そのほか、開発側として、採用用途ならではの工夫はありますか?

実は今回一番時間をかけたのは、ユーザーインターフェースの画面デザインです。対象が学生さんですので、なにより気軽に聞ける、使いやすい、操作がわかりやすいという点は配慮しました。あまり堅苦しくせず、ちょっとフランクな感じも残しつつ、かといってあまり軽すぎるのもよくありませんので、その辺りのバランスは気を使いました。(佐々木)

[成果] 人事部門の業務負荷軽減、就活生の理解度強化や意識度の把握にもつながる

- 実際に活用を開始して、どのような成果を感じますか?

2023年冬頃から実際に利用を開始しましたが、いまの学生さんは電話やメールよりもチャットの方が使い慣れているので、このチャットというインターフェースは採用の場面に、すごくピッタリだと思います。当社に興味を持ち、質問をくださった学生さんに応対するのは担当である我々の重要な役割ですが、お待たせできないですし、さまざまなタイミングで届く質問の一つひとつの内容をしっかり吟味して、理解してもらえるようにテキストで記述して返すのは、かなりの負荷がかかります。それがこのツールで自動化できるのは、かなりの負荷軽減につながります。学生さん側としても何か知りたいことがあっても個別にメール、OB訪問などで問い合わせる余裕もないと思いますので、チャットボットを導入することで学生さんたちの当社への理解を深めてもらいやすいと思います。(猪野)

採用活動でAIチャットボットによる問い合わせを提供している企業はまだ少ないので、先進の取り組みとしての面白さや、差別化の効果も大きいと思います。面接の際も「使ってみましたか?」との質問を投げかけると、当社への入社意欲の高い学生さんはやっぱり使ってくれていますし、「こういう用途で活用できるのでは?」といったディスカッションも盛り上がります。このツールを通じて、そんな学生さんたちの新しいテクノロジーに対する前向きな姿勢や興味が図れるのも、良い効果だと感じます。(富樫)

[今後] データを活用し、採用活動のさらなる高度化を目指す

- 今後について、どのようなアイデアがありますか?

今は新卒採用での活用ですが、今後は中途入社やインターンシップなどでも活用できると思います。今後、多く寄せられた質問はどのような項目かなど、データを解析することで当社の採用活動もより高度化できると期待しています。(富樫)

新卒採用チームは若いメンバーで構成されており、どうしても人によるスキルの差が生まれます。こういったツールを使うことで模範解答が得られやすくなりますので、業務の属人化を防ぐ効果も、期待しています。(猪野)

[提供サービス]

― 同様のニーズを抱える企業に対する、ソフトクリエイトの生成AIサービスについて教えてください。

当社では、生成AIを社内のナレッジを共有するタイプとして「 Safe AI Gateway 」、今回のような社外向けにオープンで活用するタイプを「 Safe AI Bot 」と区分けして、サービス提供しています。当社のサービスは Azure OpenAI Service のGPTモデルを利用し、当社社内にて開発したものです。生成AIの企業活用で求められる課金体系やセキュリティなども含めて、安心してご利用いただけます。(佐々木)

- それでは最後に、今後の取り組みについてのお考えをお聞かせください。

世代を問わず近年、「電話やメールよりもチャットの方がよい」という方が増えており、お客様向けサービスとしての生成AIチャットのニーズは今後、ますます高まると思います。ソフトクリエイトは今回のような自社活用やさまざまな業界のお客様への豊富な導入実績などを踏まえて開発したサービスの提供により、お客様業務課題の解決を推進したいと考えています。(富樫)

※記載内容は 2024年6月現在のものです。
※記載されている会社名、製品名などは一般に各社の登録商標または商標です。

弊社では、 サービスサイト に実際に生成AIチャットボットを設置しております。ぜひお試しください!

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