企業が顧客向けのFAQを構築するには、ウェブサイトにテキストとして掲載する方法や、チャットボットを設置して利用者の質問に回答する方法があります。チャットボットを利用する場合、シナリオ型か生成AI型かといった選択も必要です。
この記事では、それぞれの構築方法のメリット・デメリットや、選び方について解説します。
FAQが必要とされる業務
FAQはFrequently Asked Questionsの略で、日本語に直訳すると「頻繁に尋ねられる質問」という意味です。一般的には、「よくある質問」と訳されます。
商品説明、各種手続きの手順説明、トラブルシューティングなどでは、多くのユーザーや顧客から同じような質問が寄せられることがあります。カスタマーサポートや技術サポート、コールセンターといった業務では、その質問に対して逐一対応しなければなりません。そこで、担当者の負担を軽減するとともに、ユーザーに素早く対応できるように、あらかじめまとめておく質問と回答集がFAQです。
また、最近では社外用だけでなく、社内の総務、人事、財務・経理、情報システムなどのバックオフィス部門に寄せられる質問に対応した、社内用FAQを設ける企業も増えています。
FAQが必要な理由
FAQは多くの企業が構築しており、円滑な業務には欠かせないものです。ここでは、FAQが必要な理由を3つご紹介します。
業務の効率化
FAQを活用することで、業務効率化が図れます。よくある質問に対する標準的な回答を用意することで、従業員が個々の問い合わせに対して一から回答を行う手間が省け、時間の節約が可能です。
質問に対する回答の均質化、一貫性の維持
FAQを作ることで回答を均質化し、一貫性を保つことができます。特に、複数の担当者が対応する場合に回答内容がばらつくことを防ぎ、ユーザーに対し一貫したメッセージを提供できます。
ユーザーや顧客とのトラブル防止
FAQを用意しておくことで、ユーザーや顧客とのトラブルを軽減することが可能です。企業としての基準がFAQとして明文化されていれば、疑問に対する顧客の納得性が高まり、トラブルに発展しにくくなります。
FAQの構築方法
FAQを構築する方法はいくつかありますが、ここでは、代表的な3つの方法をご紹介します。いずれも、社外用・社内用のどちらにも適用可能な方法です。
ウェブサイト上のコンテンツ
以前からあるシンプルで一般的な方法が、ウェブサイト上に掲載されるFAQです。よくある質問とその回答を、ウェブページ上にテキストでまとめて掲載します。
ユーザーが必要な情報を見つけやすいよう、テーマ別に分けて掲載したり検索機能をつけたりすることもあります。
シナリオ型チャットボット
シナリオ型チャットボットによるFAQは、事前に設定されたシナリオ(フローチャート)にもとづいてユーザーに選択肢を提示し、適切な回答へと導くものです。ユーザーは、示された選択肢を選びながら目的の回答にたどり着きます。
生成AI型チャットボット
生成AI型チャットボットによるFAQは、選択式ではなく、チャットによる自然な対話を通じて回答へ導くものです。
生成AI型チャットボットでは、ユーザーが自然言語で自由に質問を入力すると、生成AIが事前に学習したデータをもとに最適な回答を生成・出力します。特定企業の特定分野について事前に生成AIにデータを与えておけば、専門的な内容の回答も可能です。
生成AI型チャットボットは、ユーザーの意図を理解して適切な回答を提供するので、最も高度かつ柔軟性の高い対応ができるFAQシステムといえます。
ウェブサイト上でFAQを構築するメリット・デメリット
FAQを構築する方法には、それぞれにメリットもデメリットもあります。まずは、ウェブサイトでFAQを構築するメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット:テキストや図版で詳細な説明が可能
ウェブサイト上のFAQは、詳細な説明が必要な場合に適しています。例えば、複雑な手順や技術的な説明が必要な場合に、テキストだけでなく図版や動画を併用すれば、ユーザーによりわかりやすく情報を伝えることが可能です。
さらに、見る人によって違う情報が表示されることがなく、情報の透明性を確保できます。ウェブサイト上のFAQは、新しい情報や変更があったときに、比較的簡単に更新できることもメリットです。
また、ウェブサイトにテキストでFAQを掲載する場合、テキスト内に特定のキーワードを盛り込むことで、そのキーワードでウェブ検索した結果にウェブサイトが表示されやすくなるSEOの効果が期待できます。
デメリット:ユーザーが情報を探しにくい
ウェブサイト上に掲載されたFAQの場合、ユーザー自身がウェブサイト上で必要な情報を探し出さなくてはならないことはデメリットといえます。特にFAQの数が非常に多い場合は、検索機能が充実していないと目的の情報にたどり着くのに時間がかかるでしょう。
また、ユーザーごとの状況に合った回答が掲載されているとは限らず、満足できる情報を見つけられないケースも起こりえます。
ウェブサイト上のFAQは、ユーザー自身がどんな情報が必要なのかわかっているときには有効ですが、曖昧な場合は回答を見つけづらいことがデメリットです。
シナリオ型チャットボットでFAQを構築するメリット・デメリット
次に、シナリオ型チャットボットでFAQを構築する場合の、メリット・デメリットを見ていきます。主なものは下記のとおりです。
メリット:選択肢が端的で、回答にたどり着きやすい
シナリオ型チャットボットでは、ユーザーの質問に対して端的な選択肢が提示されるため、ユーザーは簡単な操作で回答にたどり着くことができます。これが最も大きなメリットです。
また、質問と回答が事前に対応付けられているので、ブレのない確実な回答を提示できます。フローチャートのようなステップを踏んで案内するため、条件によって回答が異なるなど複雑な手順がある場合でも、わかりやすく回答することが可能です。
デメリット:シナリオの設計や見直しに手間がかかる
シナリオ型チャットボットは、事前に詳細なシナリオの設計と十分なテストが必要です。更新の際もシナリオやフローを見直して再構築する必要があり、シナリオに手間がかかることがデメリットといえます。
また、あらかじめ設定されたシナリオにもとづいて情報を提供するため、想定外の質問や複雑な問い合わせには対応しにくいという制約があるのもデメリットです。
生成AI型チャットボットでFAQを構築するメリット・デメリット
生成AI型チャットボットでFAQを構築する場合にも、いくつかのメリット・デメリットがあります。主なものは下記のとおりです。
メリット:会話をするように利用でき、設定が比較的簡単
生成AI型チャットボットは、ユーザーが自然言語で質問すると即座に回答を返します。ユーザーは、人間のオペレーターを相手に会話するのと同じような感覚で、直感的に利用可能です。
また、生成AI型チャットボットは、導入前後の設定も比較的簡単です。複雑なシナリオ設定は不要で、既存のFAQや、過去の問い合わせ内容のデータを読み込ませるだけで準備ができます。運用後は、生成AIがユーザーの質問や対話のデータから学習し、回答の精度を向上させていきます。
さらに、特定ユーザーとのチャットでの対話履歴にもとづいて、個別のニーズに応じた回答を生成することも可能です。
デメリット:学習データの準備が必要
生成AI型チャットボットでFAQを構築するデメリットとしては、事前に学習データを準備しなければならないことが挙げられます。
通常、生成AIはインターネット上にある一般知識を学習して回答を生成するため、回答の内容は一般論となります。一般知識に加えて、自社の学習データをあらかじめ読み込ませることで、FAQとして機能するのです。
このことから、学習データを準備する手間がかかることはデメリットといえますが、このデータが会社の情報資産になることはメリットであるともいえるでしょう。
また、生成AI型チャットボットは、時として回答の内容が一貫しないことがあります。「こう聞かれたらこう答える」という固定パターンがないので、チューニングが十分でないと、本来とは異なる情報が示されるケースも考えられます。
加えて、学習データに機密情報が含まれている場合、質問の内容や仕方によってそのデータが漏洩しないようなセキュリティ対策も必要です。
FAQの構築方法を選ぶ際のポイント
3つのFAQの構築方法について見てきましたが、これらはどのように選べばいいのでしょうか。FAQの構築方法を選ぶときの、2つのポイントを解説します。
FAQを構築する目的に合ったものを選ぶ
FAQの構築方法を選ぶときには、まずは構築の目的を明確にしましょう。
例えば、SEOを重視するのであれば、ウェブサイト上にテキストでFAQを構築するのが適しています。また、FAQの対象や質問が限定的である場合には、シナリオ型チャットボットを利用するのがおすすめです。
一方、曖昧な質問や多岐にわたる質問に対応したい場合には、生成AI型チャットボットによるFAQが適しています。具体的には、商品やサービスの使い方や選び方に関する質問対応、トラブルシューティングを含む複雑な技術サポートのほか、総務や人事、財務・経理、情報システムなどにまたがる社内の問い合わせ対応などが目的の場合です。
更新頻度やメンテナンスの必要性を検討して選ぶ
FAQの構築方法を選ぶときには、更新を頻繁に行うかどうか、メンテナンスはどれくらいの周期で必要かということを検討する必要があります。対応が負担になりすぎない方法を選ぶことが重要です。
ウェブサイト型のFAQは手動で更新する必要がありますが、更新作業自体は容易です。シナリオ型チャットボットは、更新時にシナリオやフローの再設計が必要になる場合が多く、作業量が多いため、更新頻度が低いFAQに適しています。
生成AI型チャットボットは、継続的な学習とトレーニングを通じて自己学習し、質問に対する回答を自律的に更新するので、更新頻度が高いFAQにおすすめです。
例えば、新しい商品について案内したいなら、新しい学習データを与えればほぼ自動的に更新が完了します。また、社会トレンドが影響するようなFAQにも対応可能です。
FAQの構築方法は、目的や用途を考慮して選ぼう
FAQを構築するには、ウェブサイト上のFAQだけでなく、シナリオ型チャットボット、生成AI型チャットボットを活用するという選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、目的や用途にも適不適があるので、それらを考慮して選ぶことが大切です。中でも生成AI型チャットボットには、曖昧な質問に対応でき、事前準備が最小限で済むという特徴があります。
ソフトクリエイトが提供する
Safe AI Gateway
は、企業が生成AIを安全・簡単に利用できるように開発されたサービスです。企業ごとに安全な専用環境を作ることで、セキュアな生成AI活用を実現します。
また、 Safe AI Bot は、社外のユーザーや顧客向けの生成AI型チャットボットを今すぐ利用できるように開発されたサービスです。自社データを用意すれば、最短1分でお客様からのお問い合わせやカスタマーサポートなどに使えるチャットボットが完成し、発行されたURLを使ってすぐに運用を開始できます。
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