多くの企業で使用されている Office 製品ですが、パッケージ版の Office にはサポート期限があることをご存知でしょうか。この記事では、サポート期限が切れた Office 製品のリスクを解説するとともに、乗り換え先として Office 2019 と Microsoft 365 (旧称 Office 365)を比較します。
パッケージ版のOfficeにはサポート期限がある
Microsoft Word、Excel、PowerPoint などを中心とした Microsoft 社の Office 製品は、現在多くの企業で用いられているビジネスツールのデファクトスタンダードと言えるアプリケーション群です。Office 製品を利用プランで大別すると、「Office 2019」のように西暦年でナンバリングされたパッケージ製品とクラウド型の「Microsoft 365」の2種類があります。パッケージ版の Office 製品と Microsoft 365 にはいくつか違いがありますが、その代表例が「サポート期限の有無」です。
クラウド型のMicrosoft 365 はサブスクリプションの契約期間中、Microsoft社のサポートを受け続けられるのに対して、パッケージ版の Office 製品にはサポート期限があります。例えば Office 2010 は2020年に延長サポートが終了、Office 2013 は2023年、Office 2016 と Office 2019 は2025年に延長サポートが終了する予定です。
なお、Office 2019 は延長サポート期間が従来設定されていたものより3年間短縮されていますので、既に導入されている企業の方は、サポート期限切れにくれぐれもご注意ください。
パッケージ版のサポートとは?
パッケージ版の Office 製品で受けられるサポートには2種類あります。
1つ目は、製品が発売されてから最初の5年間提供されるもので、「メインストリームサポート」と呼ばれます。メインストリームサポートでは、セキュリティの脆弱性対策のほか、バグの修正のような製品の機能面に関わるサポートを受けられます。
2つ目は、メインストリームサポートの終了後に提供される「延長サポート」です。例えば、Office 2016 では5年間、Office 2019 では2年間提供されます。延長サポートでは、メインストリームサポートで提供されていたサポートのうち、セキュリティプログラムの更新のみが提供されます。
パッケージ版の Office 製品のサポート期限は、基本的に上記のメインストリームサポートと、延長サポートを合わせた期間を指します。
サポートの期限切れによるリスク
パッケージ版は、一度購入すると永続的に該当バージョンの Office 製品を使用するライセンスを得られます。しかし、サポート期間が過ぎた Office製品を使用し続けるのはおすすめできません。なぜなら、サポート切れのOffice 製品を使い続けるのは、企業にとって次のような3つのリスクがあるからです。
- ①最新版の Office 製品と互換性の問題が生じる可能性がある
- メインストリームサポートが終了した後、該当の Office 製品は機能面でのアップデートがなくなります。そのため、例えば取引先が最新の Office 製品で作成したファイルを送信してきた場合、それを正常に開けなかったり、読み取れなかったりする可能性があります。つまり、異なるバージョンの Office を社内で使うことで、スムーズな情報共有ができなくなる可能性があります。
- ②旧バージョンの Office 製品は入手しにくくなる
- 例えば、新しいPCを導入すると、社内の一部のPCだけ最新版の Office になるため、社内のデータ共有で互換性の問題が生じるかもしれません。一方、互換性の問題を取り除くために、旧バージョンの Office 製品を入れようとしても入手することが難しい場合があります。
- ③セキュリティリスクが高まる
- サポート期限が切れると、一般的にセキュリティ面でのサポートも終了します。セキュリティ面でのサポートが切れた Office 製品を利用することは、セキュリティ被害へのリスクが高まります。セキュリティ上の脆弱性を利用し、社員や顧客の個人情報といった機密データが漏えいすれば、企業の信用は大きく損なわれます。
サポート期限切れを機にクラウド化する場合、クラウドとオンプレミスのどちらを選ぶ?
これまでお伝えした理由から、サポート切れの Office 製品を使っている場合は、新しいバージョンの Office 製品に乗り換えることがおすすめです。その際、現在(2021年8月)の選択肢となるのは、従来型のパッケージ製品である Office 2019 とクラウド型の Microsoft 365 です。
クラウドサービスの普及に伴い、現在は Microsoft 365 に乗り換える企業が増えています。そこで以下では、両者の主な違いを比較しつつ、Officeアプリの運用をクラウド型に切り替えるメリットについてご紹介していきます。
購入し所有するか、サービスとして利用するか
Office 2019 などのパッケージ版は導入時に料金を支払い永続的なライセンスを購入し自社で所有します。対して Microsoft 365 の場合は1ヶ月単位または1年単位で利用料金を支払うサブスクリプションサービスです。
Microsoft 365 と Office 2019 の費用を比較する場合、Office 2019 の導入時期から、サポートが切れる2025年10月まで支払うことになるサブスクリプション費用を考える必要があります。とはいえ、少なくとも初期投資は、Microsoft 365 の方がパッケージ版より安く済ませられるでしょう。また、月々での支払いが可能な Microsoft 365 は、社員の増減に合わせ、アカウントの追加や削除で柔軟にコストの最適化を図れるメリットがあります。
サポートの更新期限は有限か、無期限か
パッケージ版の Office 製品にはサポート期限があり、最新の Office 2019 も2025年にはサポート期間が終了します。対して、サブスクリプション型の Microsoft 365 はサービスを利用し続ける限り継続的にサポートを受けられます。
また、Microsoft 365 の利用者は常に最新バージョンの Office アプリケーションを使えるので、最新機能を使い続けられます。しかし、パッケージ版の Office 製品の場合は、サポートの期限切れに対応し、最新版を利用するためには、新しいバージョンのパッケージ版を購入する必要があります。
新しい働き方、複数デバイスへの対応
パッケージ版のOffice製品は、アプリケーションをPCにインストールすることで利用できるようになります。Office 2010 の場合には2台までインストール可能で、パッケージ化された基本的な Office アプリケーションが利用できるというものです。
Microsoft 365 は、同一ライセンスを様々なデバイスにインストール可能です。また、クラウドを利用した共同編集・共同作業が可能で、新たにチャット(Teams)やファイル共有(SharePoint や OneDrive)など様々なアプリケーションや、バックアップ機能が利用できます。未使用の機能を使い始めたいという企業にとって費用が発生しないので、始めやすくなるというメリットがあります。
情シスの運用管理業務について
情シスの管理業務という観点からは、パッケージの Office 製品と Microsoft 365 で共通するのは定期的な更新です。双方とも品質更新やセキュリティ更新プログラムが実施されます。これは自動更新により、運用を効率化することができます。しかし、パッケージ版の Office では、プロダクトキーの管理や従業員が正しくアップデートできているのかを管理するのは煩雑な業務かもしれません。
その点、Microsoft 365 では、アップデートなど一部の運用を自動化できるプランもあります。このような新たな機能を活用し、普段から少しずつ自動化を利用して更新することに慣れていけば、大きな更新作業が必要なくなるでしょう。
まとめ
パッケージ版Office | Microsoft 365 | |
---|---|---|
サポート期限 | あり (メインストリームサポートと延長サポートが存在) |
なし (サービスが続く限りサポートが続く) |
導入・利用コスト | 導入時の購入費用のみ | サブスクリプション費用 (月額または年額課金) |
利用形態 | オンプレミス | クラウド |
インストール台数 | 1台 | 5台 (PC、Mac、スマートフォン、タブレットなど) |
共同編集 | 別途追加設定やライセンスが必要 | 共同作業しやすい |
バックアップ機能 | なし | あり |
本コラムでは、サポート期限が切れた場合の際の選択肢には最新のパッケージ版と、クラウド型の Microsoft 365 があることを紹介しました。ぜひ、それぞれを比較し、自社の利用形態に合う製品を選ぶヒントとして活用してください。
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