チャットボットの導入は、多くの企業で注目されています。チャットボットを導入することで、業務の効率化、顧客対応の向上、24時間体制のサポートの実現など、そのメリットは多岐にわたります。しかし、チャットボットの導入のメリットを最大限に活かすには、適切な準備が不可欠です。
この記事では、チャットボットの仕組みや種類、導入のメリット・デメリットのほか、具体的な導入のステップと注意点を解説します。チャットボット導入の参考にしてください。
チャットボットの仕組みと種類
ビジネス利用が進むチャットボットとは、どのような仕組みなのでしょうか。まずは、チャットボットの仕組みと種類について解説します。
チャットボットの仕組み
<チャットボットの基本的な動作>
- 1. ユーザーが質問を入力
- 2. チャットボットが質問を解析
- 3. チャットボットが質問に応じた回答を選択、あるいは生成
- 4. チャットボットが回答を出力
近年のチャットボットは、この基本的な動作を瞬時に行えるため、ユーザーが質問を入力すると即座に回答が返ってくるように見えるのです。
技術の革新によるスピードや精度の向上によって、チャットボットは企業のカスタマーサポートや情報提供など、幅広い用途で活用されるようになりました。
チャットボットの主な種類
チャットボットは大きく「シナリオ型」と「生成AI型」の2つに分類されます。それぞれの特徴は下記のとおりです。
- ・シナリオ型
- シナリオ型のチャットボットとは、あらかじめ設定されたシナリオにもとづき、決まった回答をユーザーに提供するものです。主に1問1答式のFAQのような、シンプルな問い合わせ対応に適しています。
- ・生成AI型
- 生成AI型のチャットボットは、機械学習を用いて、ユーザーの入力に対して柔軟な回答を生成します。シナリオ型よりも複雑で柔軟な対応が特徴です。
シナリオ型と生成AI型のどちらを選択するかは、チャットボットを使用する業務内容に応じた検討が必要です。
チャットボットの種類については、下記の記事をご覧ください。
チャットボットの種類とは?仕組みや目的による分類と使用例を解説
チャットボット導入のメリット
チャットボットの導入には大きなメリットがあります。ここでは、具体的なメリットをいくつかご紹介します。
従業員の負担軽減
チャットボットは、ルーティン業務の自動化により、従業員の負担を軽減することが可能です。問い合わせ対応にかかる人的コストは企業にとって無視できないものですが、一次対応をチャットボットに任せることで、大幅なコスト削減につながります。
社内人材がより複雑な問題に集中できるようになり、企業の業務の効率化と利益最大化に貢献します。
24時間365日稼働が可能
チャットボットは、時間帯や曜日に関係なく稼働させることが可能です。顧客対応にチャットボットを利用する場合、いつでも一次対応をすることができます。
また、社内向けにチャットボットを構築し、問い合わせ対応に活用すれば、特定の担当者が不在であっても対応できます。シフト勤務、フレックス勤務などの対応も可能です。
顧客サービスの質の向上
顧客にとっては、いつでも問い合わせに対応してもらえることで満足度が向上します。チャットボットが蓄積したデータを活用して、個別のニーズに応じたパーソナライズされた対応も可能です。
また、チャットボットは人間のオペレーターのように疲れや感情に左右されないため、安定したサポートが期待できます。
チャットボット導入のデメリット
チャットボットの導入にはメリットが多い一方、デメリットがあることも否定できません。主なデメリットをご紹介します。
導入コストがかかる
チャットボットの導入には、初期費用や運用コストがかかります。ベンダーを選定して導入する場合と、自社で構築する場合が考えられますが、後者は開発コストがかかる分、高額です。
複雑・高度な対応には限度がある
チャットボットを導入すると一次対応の負担は軽減できますが、複雑な質問やクレームなどは対応しきれません。特に、シナリオ型のチャットボットはあらかじめ設定されたフローに従って回答するため、想定外の質問に対応する能力が限られており、ユーザーにとって便利に感じられないシーンもあるでしょう。
高度な対応が必要なケースでは、生成AI型の導入を検討するか、すぐに人間に引き継げるような体制を構築する必要があります。
メンテナンスが必要
チャットボットの精度を保つためには、定期的なデータ更新やトレーニングが必要です。システムのメンテナンスも重要であり、放置すると性能やセキュリティが低下するリスクがあります。
継続的なメンテナンスが必要なことから、担当者には負担となるかもしれません。
社内チャットボット導入のステップ
1. 導入する業務範囲と目的を検討
まず、チャットボットを導入する業務範囲とその目的を明確にします。どの業務を自動化するのか、どのような効果を期待するのかを定義しましょう。
例としては、社内ヘルプデスク窓口の一本化、よくある質問への迅速な対応、社員教育の一環としての利用などです。目的を明確にすることで、チャットボットに求める機能や必要なデータを特定しやすくなります。
2. チャットボットの種類や使用環境を検討
次に、導入するチャットボットの種類や使用環境を検討します。チャットボットの種類は、主にシナリオ型と生成AI型があり、導入したい業務に適したものを選ぶことが大事です。
また、 Slack や Microsoft Teams などの既存のコミュニケーションツールや社内システムと連携させるかどうかも検討すべきポイントです。
3. ベンダーか自社開発かの選択
チャットボットは外部のベンダー製のものを利用するのか、自社開発するのかを決定します。
外部のベンダーには多くの選択肢があり、機能、価格、サポート体制などを比較して選ぶことが重要です。また、導入後のサポートやトレーニングが充実しているかも選定のポイントとなります。
自社開発の場合は、自社に合わせて柔軟性の高い開発が可能ですが、費用が高額になることと開発期間が長くなってしまうことを考慮しなければいけません。
4. ベンダー製品の試用、もしくは自社でシステム設計
ベンダー製のチャットボットを使うのであれば、無料トライアルなどで機能や使い勝手を確認し、必要に応じてカスタマイズを検討します。
自社開発の場合は、業務フローに合ったシステム設計を行い、テストとフィードバックを重ねて改善することが必要です。
5. データ準備とトレーニング
シナリオ型の場合はQA表や分岐の設計書であるシナリオデータ、生成AI型の場合は業務マニュアルなどの学習データを準備し、チャットボットのトレーニングを行います。
チャットボットが高い精度で機能するためには、データの質と量を担保することが必要です。特にシナリオ型の場合は、QAや分岐の数が多くなってしまうとシナリオデータの量も膨大になりがちです。
6. テスト運用とフィードバックの収集
ローンチ前にテスト運用の機会を設け、ユーザーからのフィードバックを収集します。問題点を洗い出して改善策を講じ、必要な調整を行わなければなりません。
7. ローンチと継続的な運用
チャットボットを正式に導入し、運用を開始します。導入後も継続的にパフォーマンスをモニタリングし、改善を行うことが重要です。また、KPIを設定して効果を測定し、必要に応じてデータの更新や機能の追加を行います。
これらのステップを踏むことで、社内チャットボットの導入がスムーズに進み、業務の効率化や社員の満足度向上に寄与することが可能です。
チャットボットを導入する際の注意点
チャットボットを導入する際には、どのようなことに気をつけなければいけないのでしょうか。ここでは、主な注意点を解説します。
システムの使いやすさを検討する
チャットボットを継続的に利用するには、使いやすさが重要です。デザインが見づらかったり、選択肢が複雑だったりするとユーザーにはストレスとなり、利用率の低下を招く可能性があるため、ユーザーが直感的に使えるシンプルなデザインや、理解しやすい選択肢を提供しなければなりません。
また、管理画面についても使いやすいインターフェース設計かどうかを検討します。高度な知識がなくても運用できるシステムを構築すると、導入後の運用がスムーズです。
セキュリティについて検討する
チャットボットをビジネス利用する場合、セキュリティについて検討する必要があります。チャットボットが扱う情報は機密性が高い場合が多く、データ漏洩を防ぐための措置を講じなければいけません。
また、個人情報保護法や関連する法令に従った運用が求められます。社外向けのチャットボットを構築する場合は、データの取り扱いや保存に関するポリシーを明確にし、自社サイトなどに掲示する必要があります。
継続的なトレーニングと更新が必要
チャットボットの性能を維持・向上させるためには、継続的なトレーニングとシステムの更新が不可欠です。常にデータベースを更新し、シナリオを見直すことで、正確な情報を提供できます。また、ユーザーフィードバックを取り入れ、常に改善を図りましょう。
これらの注意点を考慮することで、チャットボットの導入がより効果的かつ安全に行えるようになります。
チャットボットの導入の際は、ベンダー製品か自社開発かを早期に決めよう
チャットボットの導入は、業務の効率化や顧客満足度向上に大きな効果をもたらしますが、適切な準備と継続的なメンテナンスが必要です。チャットボットを導入する際には、まず導入したい業務の範囲や目的について検討し、ベンダー製品を利用するか自社で開発するかを早めに決定することをおすすめします。
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