2021年3月1日(月)、「SC Relationship 2021 ONLINE」が開催されました。本イベントは、ソフトクリエイトの取り組みと今後の展望を中心に提供してきましたが、今回は初のオンライン開催となりました。本レポートでは、4つのセッションをダイジェストでご紹介します。
物事のとらえ方を「リフレーム」し、新たな環境、生活、働き方を作り出していく
今回の「SC Relationship 2021 ONLINE」は、申し込み人数は589名に上りました。「情シスサミット」に引き続き、オンライン開催でしたが、「当日参加が難しくても後から聞ける」、「業務中に外出できないので、会場まで行かなくていいのが助かる」、「何度も見返したりできる」など、ポジティブな意見が数多く寄せられました。
「SC Relationship 2021 ONLINE」のテーマは「リフレーム」。まずは、ソフトクリエイト 代表取締役社長 林 宗治のセッションより、2021年のテーマである「リフレーム」の意味するところを紹介します。
林は「リフレーム」とは「ある出来事や体験によって、物事の見方の枠組みが変化して、それによって見方そのものに変化が訪れること」と説明しています。この1年、私たちやその周りで起こった様々なことが「リフレーム」のきっかけとなると言及し、本イベントの中からぜひ、視聴している皆様自身で新たな「リフレーム」を発見してほしいというメッセージを伝えました。大きな変化があったこの1年の中、ソフトクリエイトが取り組んできたことや今後の展望について、皆様にお伝えするべく次の4つのセッションをレポートします。
① 【キーノート】「テレワークが企業のチカラとなる新しい働き方・考え方」 ②【スペシャルセッション】ニューノーマル社会の情シス行動変革とは?〜 成長の鍵は「雑談」にあり 〜 ③ソフトクリエイトの展望2021 Re-Frame ④ソフトクリエイトの業務改善日記〜 ペーパーレス・脱はんこ・ネットワーク10G化 ~
【キーノート】「テレワークが企業のチカラとなる新しい働き方・考え方」
基調講演では、日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリストの西脇 資哲 氏が「テレワークが企業のチカラとなる新しい働き方・考え方」というテーマで講演を行いました。セッションでは、「働き方のDX」の時代が訪れていること、「働き方のDX」を成功させるためのポイント、テレワークにより仕事での時間の使い方が変化していること、自らオン・オフを切り替えてタイムマネジメントすることの重要性などが語られました。
西脇氏はまず、新型コロナウイルスの拡大に伴い、今までの世界が大きく変わったことに触れ、マイクロソフトはテレワークやイベントのオンライン化をはじめとする、「ニューノーマルを形成」する様々な対応を行ってきたことを紹介しました。
このうち多くの企業でも実践したテレワークについては、「移動の必要がない」「キャパシティの制限がない」といった様々なメリットをもたらした一方、経営者や従業員は「本当に営業ができるのか」「顧客や従業員との距離感がつかめない」といった悩みを持っていると西脇氏は言います。これらの悩みに対して、西脇氏はビジネスにおける「アプローチ方法とツールが変わり、テレワークという選択肢が増えただけ」と述べ、「テレワーク、リモート勤務を前提とした、働き方のデジタルトランスフォーメーション(DX)ととらえるべき」としています。
「会話をしながら、ファイルを共有しながら、会議に移行できる」、「統合されたコミュニケーション、ファイル共有、会議ツール」で、サービスごとのアカウントの切り替えから解放され、セキュリティと生産性を保つことができると西脇氏は語りました。
次に、西脇氏はテレワークによる時間の使い方の変化にも触れています。具体的には、1週間のオンライン時間の拡大、18時以降のコミュニケーションの増大、短い時間のミーティングの増加などを例に「オンオフの切り替えが難しくなっている」ことを指摘。時間の使い方、生産性を高めるためのポイントとして、次の6つの手法を提言しました。
①チャットとクイックコールの併用
②1on1ミーティングの実施
③オンライン会議の役割分担・目的の明確化
④会議時間を45分に設定
⑤違う種類の仕事を入れる・時間を区切る
⑥積極的に反応する
テレワークによって「生活優先、健康優先」の働き方ができるようになった一方、場所や通信環境など「同じ時間感覚や生産性を期待してはいけない」と西脇氏は語ります。「それぞれの状況を尊重したコミュニケーション」が重要と強調し、企業もそれを前提とした働き方が求められるとして、講演を締めくくりました。
【スペシャルセッション】ニューノーマル社会の情シス行動変革とは?〜 成長の鍵は「雑談」にあり 〜
続いて、SOMPOリスクマネジメント株式会社 サイバーセキュリティ事業本部 上席フェローの熱海 徹氏によるスペシャルセッション、「ニューノーマル社会の情シス行動変革とは?〜 成長の鍵は『雑談』にあり 〜」を紹介します。熱海氏は、「 情シスの現場から 」にコラムを寄稿していますが、本セッションでは「雑談」こそ情シスの価値向上、行動変革のチャンスというテーマでセッションを行いました。
まず、テレワークの普及により他愛もない「雑談」が減ったと熱海氏は語ります。熱海氏は、雑談は「情報の交換ではなく、気持ちの交換」であり、次のような点が期待できるとしています。
●心理的な安全性が高まる
●報告が上がりやすくなる
●メンタルへの好影響
●生産性向上
●エンゲージメントの高い働き方になる
テレワーク普及以前は、雑談の中で会社の話やお互いの気持ちを言い合う機会がありました。現在は、見かけ上同じ場所に集まってスムーズに会話をしていても、実際には家にひとりで会話も減っていると熱海氏は言います。
その中で、「ニューノーマル時代の雑談スタイル」が必要であり、情シスが組織を変えるポジションとして取り組むべきだと熱海氏は提言します。
情シスが取り組むべき理由として、熱海氏は「ビジネスにおけるIT技術活用は不可欠」となった今、情シスは従来からの「コミュニケーション不足」という課題をとらえ直し、社員の望む環境を提供すべきだと述べています。これこそが、既存の「当たり前」という考え方から脱却する「リフレーム」につながるのではないでしょうか。
「雑談」のための環境、ツールやチャネルを用意するにあたり、3つの案を熱海氏は提案しました。
①チャットツールで「雑談専用」のスレッドを作る:業務の話題以外の接点を持ち、心理的な距離感を縮める
②オンラインのコミュニケーション機会を作る:上下関係を意識しないコミュニケーションを行い、「雑談してもいい」という空気を醸成する
③1on1ミーティングの頻度を増やす:普段しにくいカジュアルな質問や雑談を行い、エンゲージメントを高める
最後に熱海氏は、これまで無意識に行っていた「雑談」が、ニューノーマル社会だからこそ必要であるとし、「雑談」を活用することでコミュニティを形成し、メンバーの強みを発揮できるようになると述べセッションを締めくくりました。
ソフトクリエイトの展望2021 Re-Frame
次に、株式会社ソフトクリエイトの技術本部長 小嶌 尚臣、営業本部長 白岩 健一、事業戦略副本部長 武井 直孝によるセッション「ソフトクリエイトの展望2021 Re-Frame」をご紹介します。
21年度は「ニューノーマルな時代にカスタマーサクセスを届けたい」
まず、技術本部長の小嶌が2020年度の振り返りと2021年度の展望について話がありましたので概要をお伝えします。振り返りのポイントは次のようになります。
●2020年度は新型コロナウイルスの拡大を背景に、様々な課題が浮き彫りになった
●サイバー攻撃の脅威がますます深刻化しランサムウェア被害を受けた企業からの問い合わせが相次いだ
●Windowsの脆弱性を利用したActive Directoryへの攻撃が行われている
2021年度の展望としては、小嶌は次の3つのテーマに注力すると述べました。
①Teams をはじめとした Microsoft 365 の活用推進への取り組み
②クラウド化の加速を受け、パブリッククラウドを利用したサーバ・ネットワークインフラ構築の強化
③Work FlowやPower Appsを利用した顧客の業務改善への取り組み
これらのテーマに取り組み、「ニューノーマルな時代にカスタマーサクセスをお届けしたい」とまとめました。
21年度IT投資のキーワード、ネットワーク改善・MS365活用
続いて、営業本部長の白岩のセッションから、次の3つのトピックをご紹介します。
- ①「来期検討IT投資」のTop5
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白岩はまず、来期に検討するIT投資をソフトクリエイト顧客に聞いたアンケート結果を紹介。白岩は「ネットワークへの投資予定が伸びている」と語り、その理由として次の3つを挙げています。
1.クラウド活用を見越し、Azure、Microsoft 365を使うためにネットワーク投資が伸びた
2.在宅ワークに適したネットワークを来年度導入するのではないか
3.ノートパソコンの売り上げが伸びており、社内のフリーアドレス化が進むことで社内の無線LANの導入が拡大しているのではないか加えて、仮想・VDIを選んだ回答者の3割が「Azure」を選択していることもわかっています。「サーバが所有から利用へと向かっている」こと、「プラットフォームのパブリッククラウド化が進行している」傾向が進んでいることがわかる結果となっていると白岩は述べました。
- ②「ソフクリ365倶楽部」がオープン
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ソフトクリエイトでは、2021年2月1日にMicrosoft 365 や Azure の活用・定着を目的とした会員コミュニティ「 ソフクリ365倶楽部 」をオープン。白岩は、今後はこの活動を積極的に展開する予定であることを伝えるとともに、Microsoft 365 が使いこなせるようになるために提供する次の3つの価値を紹介しています。
1.新機能を告知:SaaSの機能追加情報をソフトクリエイトが案内
2.情シスの知恵袋:例えば「Teamsの使い方」案内資料などをソフトクリエイトが作成・展開
3.管理者向けコミュニティ:勉強会コンテンツ・イベント発信 - ③まずソフトクリエイトが実践…脱ファイルサーバ、10GB回線への取り組み
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白岩は、「自らが実践したもので、その中でいいものをお客様に提供する」と述べています。現在ソフトクリエイトはTeamsやSharePoint、Onedriveを使った「脱ファイルサーバ」へ取り組み、顧客にも紹介していくことを伝えました。また、これまでの1GBだった回線を10GBに変更したことで、Web会議などオンラインにおける改善点などを顧客に伝えていくとのことです。
2020年、2021年に注目したい7つの製品・サービス
事業戦略副本部長の武井のセッションでは、2020年度リリース、2021年度リリース予定のサービスを紹介しました。下記がその一覧です。
1.
トラスト・ログイン Provided by SCCloud
【シングルサインオン】
2.
GMOサイン・ AgileWorks /X point 連携サービス
【電子契約】
3.
LanScope An Provided by SCCloud
【次世代MDM】
4.
AD 脅威診断・監視サービス
【AD監視】
5.
パソコン監視サービス
【EDR+SOC】
6.
Ver.4.8.2 SonicWALL 連携【サイバー攻撃対策】
7.
モビリティ・コネクト V2 on SCCloud
【リモートアクセスサービス】
ソフトクリエイトの業務改善日記〜 ペーパーレス・脱はんこ・ネットワーク10G化 ~
最後に、株式会社ソフトクリエイトの業務推進部 二木 涼、業務改革グループ 森 聖子、技術本部 菊池 一裕によるセッション「ソフトクリエイトの業務改善日記〜 ペーパーレス・脱はんこ・ネットワーク10G化 ~」を紹介します。本セッションでは、入出荷業務のペーパーレス化、請求書のWeb化、ネットワークの10Gbps化に取りみをテーマに、二木、森、菊池それぞれの立場から、現場ならではの声をお伝えします。
〜入出荷を止めてはならない〜 ペーパーレスの道のり
まず、業務推進部の二木が、入出荷業務のペーパーレス化の取り組みを紹介しました。ソフトクリエイトでは、複数社の取引先から製品を入荷し、技術担当によるセットアップ・出荷を行なっており、案件数が月1,000件となっていました。
必要書類は全て印刷し、各タスクを全て手書き、月間で2,000枚という書類を処理していました。「このような状況が20年続いた」と二木は振り返ります。しかし、新型コロナウイルスの拡大により、在宅勤務を余儀なくされたことからペーパーレス化を推進することになったと語ります。ここでのポイントは2つあり、紙運用からの脱却は電子化で対応、システム変更を少なくするためにRPAを導入することにしたとのことです。
システムの導入にあたっては、「既存業務を洗い出して、本当に必要な業務の選定・スリム化」を行い、「業務を標準化して、人に依存しないフローを構築した」、加えて、「実際に使いながら改善点をもらって改修を繰り返し」、「項目やデータの呼称を調整するなど、画面表示にもこだわって」設計を行なったと二木は語ります。
その結果、受発注、入出荷、納期データ等をRPA(WinActor®)で入出荷管理アプリ(kintone)に自動連携できるようになりました。現在は、各担当、営業、業務スタッフ、営業上長が出社しなくても業務が完結できるようになりました。社内関係者からは、「会社に行かなくても運用できる」、「目的の情報をすぐに見つけることができる」、「紙の置き場がなくなり、効率的に場所を使える」、「手作業が減り、時間の余裕ができたため、新しい業務に着手できた」など、ペーパーレス化により業務改善につながった声が寄せられたとのことです。
請求書Web化までの道のり
次に業務改革グループの森が取り組んだ「請求書のWeb化」を紹介します。ソフトクリエイトでは請求書業務を基幹システムへの「売上計上」、「請求書印刷」、「社印の捺印」、「封入・郵送」というフローで運用しています。しかし、基幹システム導入当時から請求書の枚数は月3,000枚に増加し、取扱サービスにサブスクリプションやクラウドなどが増えるのに比例し処理パターンは10パターン以上増えたと森は語ります。
さらに、新型コロナウイルスの影響により、顧客から請求書をメールで送って欲しいという依頼が増えたため、「請求書のWeb化への動きが始まった」と森は振り返りました。
請求書Web化プロジェクトが進められたものの、Web化の前後に様々な懸念が生じ、森は2つの課題について紹介しました。
1つ目は、お客様のメールアドレスを集める方法。こちらは、「お客様自身にメールアドレスを登録してもらう方法」と「別途メールアドレスを収集して登録する方法」のいずれかで対応することになったとのことです。
2つ目は、「Web請求システムができることで、運用の負荷が増えるのではないか」という懸念が生じたこと。こちらは、基幹システムとのデータ連携を自動化することにし、Power AppsとWinActor®を利用した外部連携システムを自社で開発することにしたと森は説明します。
請求書Web化の結果として、発行ステップが削減され、手作業も省略されることになりました。コストが40%ダウンし、効率化も実現でき、在宅勤務も可能になったと森は締めくくりました。
社内ネットワークを10Gbps化せよ!〜年始挨拶ライブ配信を成功に導け〜
最後に、技術本部の菊池が取り組んだ「社内ネットワークの10Gbps化」を紹介します。菊池はこれまでのソフトクリエイトのネットワーク環境を振り返り次のように語りました。
ソフトクリエイトは10年前から現在のオフィスに入居し、10年前に最速だった1Gbpsの回線を導入し利用し、社員数が800人でも業務上問題なく利用できていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大すると、動画コンテンツ、オンラインミーティングが増え、その結果、「回線が遅くなった」という報告が増えました。このままでは、全社員向けの「年始挨拶ライブ配信」が危ぶまれると考え、回線の増強を行うことになりました。
ライブ配信を成功に導くためには、「フルHDで800人が視聴する場合、2.4Gbpsを利用することになる」と試算し上下最大10GBのインターネット回線による安定した通信環境、「UTM」、「スイッチ」、「アクセスポイント」の強化を行なったと菊池は言います。回線速度以外にも、「セキュリティや冗長性、可視化と監視」も含めて製品を選定したと菊池は説明しています。大幅な回線増強を実現した結果、年始のライブ配信は無事成功。その後、ソフトクリエイトでは多様な働き方に対応できる通信環境を実現しています。
まとめ
オンラインで開催した「SC Relationship 2021 ONLINE」は好評のうちに終了しました。参加者からは、次のような声が寄せられています。
「『見える化』から『見せる化』といったワードはシンプルながら今までなかった発想で強く感銘を受けた」
「請求書のWeb化(ペーパーレス)は自社の課題なので、導入の参考になった」
「プレゼンが非常にうまく勉強になった」
「具体的な内容で、改善までの過程などがわかりやすかった」
「紹介された事例が、自社で検討している内容とも似ているので参考になる」
講演の内容に加え、繰り返しの視聴や、巻き戻しが可能であることなど、オンラインイベントならではの利便性についても数多くコメントをいただくことができました。
いただいたご要望などは、今後のセミナーにもぜひ反映し、さらに内容を充実させていきます。