2018年9月~10月、ソフトクリエイトは100名から499名規模の企業でITシステムの運用などに携わる、情報システム部門(情シス)の担当者の実態を探るべくアンケート調査を実施しました。この規模の企業の多くは、「ひとりの情シス」と呼ばれる担当者が、多忙な業務に追われていることから、多くの企業で「情シスの働き方改革」の必要性に迫られていると考えられていますが、今回はその実情について調査しました。
クラウドサービス利用企業は約7割に
現在、多種多様なクラウドサービスが普及していますが、その中でもPaaSを除くクラウドサービスの利用状況を聞きました。「利用している」と答えた100〜299名企業は68.7%、300〜499名企業では65.6%という結果になりました。(図11)
一方で、「管理・把握できていない」は、100〜299名企業は23.7%、300〜499 名企業では29.7%と、無視できない数値となっています。
N=259
図11 クラウドサービス(PaaS 除く)の利用状況
「SaaS」利用が9割、「IaaS/HaaS」は3割
情報系業務のクラウドサービスを利用している100〜299名企業のうち86.8%、300〜499名企業のうち87.5%が「SaaS」と回答。サーバなどを必要とせず、従量課金という仕組みを持つだけに、中堅・中小規模企業でも導入しやすいSaaS が大多数を締めています。一方、「IaaS/HaaS」も3割となりました。
N=176
図12-1 情報系業務で利用しているクラウドサービス
PaaS「利用していない」は7割
クラウド利用の中でも、PaaS(Platform as a Service)を「利用している」と答えた100〜299 名企業は18.2%、300〜499名企業は8.2%にとどまりました。「利用していない」企業は約7 割という結果となりました。なお別の調査結果を引用すると、利用しているPaaSのうち、最も多いのがAWS、次が Microsoft Azure でした。
N=176
図12-2 基幹系業務で利用しているクラウドサービス
N=259
図13 PaaS(クラウドプラットフォーム)の利用状況
メール、社内情報共有・ポータル導入が6割
現在、利用しているクラウドサービスは、「メール」、「社内情報共有・ポータル」、「ファイルサーバ」、「社内承認管理ワークフロー」が多い傾向がありました。(図14)
その内訳を見ると、100〜299名企業では「社内情報共有・ポータル」が64.6%、「メール」が64.1%、「ファイルサーバ」と「社内承認管理ワークフロー」が22.7%。
300〜499名企業では「メール」が67.2%、「社内情報共有・ポータル」が49.2%、「ファイルサーバ」と「社内承認管理ワークフロー」が16.4%でした。
N=259
図14 現在利用しているクラウドサービス(複数回答)
「クラウドファースト」ではなく、「その都度」の選択を優先
今後のシステム導入・移行で最も多いのは、100〜299名企業、300〜499名企業ともに「都度判断」で約7割。(図15)「クラウド優先・前提」と「クラウド消極派」には、あまり大きな差はありませんでした。「クラウドファースト」が叫ばれ、情シスの業務負荷を軽減することが期待されているものの、クラウド移行が最優先ではない企業が約8割という結果となりました。
N=259
図14 現在利用しているクラウドサービス(複数回答)
約7割が Windows Server 2008 / R2 移行完了または移行中/ 計画中
2020 年1月14日にサポート終了を迎えるWindows Server 2008 / R2 について、その移行状況を聞きました。(図16)
100〜299名企業では、「全て移行済み」は19.7%、「移行中/ 移行計画中」は52.5%。300〜499名企業では、「全て移行済み」は13.1%、「移行中/ 移行計画中」は54.1%。双方とも約7割が移行しているか移行しようとしているという結果となりました。まだ移行していない3割の企業は、Azure 移行によるサポート延期プログラムもありますので、このプログラムを利用する可能性もあります。
N=259
図15 Windows Server 2008 のサポート終了に伴う移行状況
テレワーク・モバイルワーク環境整備は、一部にとどまっている
昨今、働き方改革が叫ばれていますが、多様な働き方を支えると期待されるテレワーク・モバイルワーク整備状況について聞きました。(図17)
原則会社に出勤しなくても業務ができるIT 環境が整備されている」「特定の部門・担当者に対して会社に出勤しなくても業務ができるIT 環境が整備されている」を合わせると約3〜4割。
「メールやグループウェアといったコミュニケーションツールのみ整備されている」が約2〜3割、「整備されているとは言えない」も約2〜3割という結果になりました。
これを見ると、テレワークは一部担当者のみに制限されている現状があることがわかります。しかし、コミュニケーションツールの整備が進んでいることからも、徐々にその範囲を広げていくことが予測できます。
N=259
図17 テレワーク・モバイルワークの整備状況
まとめ
クラウド利用企業は約7割。そのうち9割近くがSaaSであった(情報系業務)。その用途は、メールが約6割で、社内情報共有・ポータルが5〜6割。テレワーク・モバイルワークは約3〜4割が一部担当者のみ利用という状況。
<< 関連コラムはこちら >>
- 数字で見る「情シスの働き方改革」と、“ひとりの情シス”の虚像と実像 ~情報システム部門の運営状況について~
- 数字で見る「情シスの働き方改革」と、“ひとりの情シス”の虚像と実像 ~クライアントPCの管理状況について~
- 数字で見る「情シスの働き方改革」と、“ひとりの情シス”の虚像と実像 ~クラウドの利用状況について~
- 数字で見る「情シスの働き方改革」と、“ひとりの情シス”の虚像と実像 ~セキュリティについて~