いまや多くの企業にとって重要な経営課題の1つとなった「DX」。DXの目的や情シスの関与状況、取組状況などの実態を、2021年12月〜2022年1月にかけてソフトクリエイトが実施したアンケート結果※をもとに解説します。
※情報システムの現状とIT システム活用実態アンケート 2022
情シスはDXにどれくらい関与しているのか?取組状況は?
情シスはDXにどのくらい関与しているのか――その関与状況の調査結果は「DX推進チームで大きな役割を担っている」が16.6%、「DX推進チームの一員として関与している」が21.8%、「経営・企画が主導し、必要に応じて参加している」が21.5%という結果となりました。現在はまだ、「あまり関与していない」が33.8%と最も多いことがわかりました。
「その他」の回答からは、DXについて情報収集や検討段階というケース、部署やチームごとにバラバラに動いているケースなど、まだDXについてどのように取り組むのか見えていない段階の企業もあることが見られました。DXの目的や取組状況についても自由回答にて調査したところ、ポジティブな声、ネガティブな声の双方が見られましたので、代表的なものをいくつか紹介します。
- <ポジティブな声>
- DXプロジェクトが発足。まずは業務アプリケーションの変更や更新を検討しています。
- 紙文書のワークフロー電子化を推進中。社外文書の電子化にも取り組んでいます。
- 紙で運用している各種情報のやりとりを、デジタル化しているところ。
- まずは見える化から。必要になるデータの整理をしています。
- 目的は生産性の向上やコスト削減、時短など。課題は山積み。
- 店舗業務の省力化が目的。発注・商品分析・経理処理に取り組んでいます。
- 製造ライン・単純業務をロボット化して、省人化する。
- アナログ業務が多数。まずは現状把握とDXに向けた優先順位を付けるところから。
- <ネガティブな声>
- DXという用語が先行。経営層の具体的なビジョンが見えない。
- DX推進といっても、クラウド化を進めているだけになってしまう。
- 経営層と情シスにギャップあり。DX自体が目的ではない。経営・社員の知識が乏しいのが実情。
- 経営層はITシステムの変更だけで、ビジネスモデル変革が実現できると思っているのでは。
- 外部招聘のDX推進リーダーと情シスの間に考え方のギャップがある。
- DX推進しているが、取り組みを進めるにはリソースが不足している。
- 社内でDXのイメージが共有できていない。どう説明すれば協力を得られ、予算化できるのだろうか。
DXへの取り組みの中には、経営者との考えのギャップや社内への知識浸透の難しさを訴えるものも数多くありました。情シスのみで完結するものではないので、現在はまだDXへの取り組みに苦慮している声が少なくありませんでした。その一方で、情報収集したり、関係部署と連携したりしながら少しずつ進めているケースもあり、多くの企業がDXに向けた過渡期の中にいることがうかがえました。
DX推進で注目される「紙文書・ワークフロー等の電子化」
- 「情シスとしてDX推進に必要と考えるシステム上の取り組み」を聞いたところ、次のような結果となりました。
- 1位:情シスの継続的な学習…53.6%
- 2位:社内・経営層へのDXの教育、認知向上…50.4%
- 3位:紙文書・帳票・ワークフロー等の電子化…50.2%
- 4位:セキュリティ対策強化…41.5%
具体的な取り組みとしては、紙文書等の電子化への関心が高いことがわかりました。次に、社内・社外文書の電子化状況を比較してみましょう。
社内の紙文書では、「紙文書に押印する業務は一切ない」が7.6%、「一部、紙文書に押印する業務が残っている」が42.1%となりました。一方、社外の契約書の電子化状況では、「紙文書に押印する業務は一切ない」が2.7%、「一部、紙文書に押印する業務が残っている」が30.7%となりました。
年次推移を見ると、社内・社外いずれも電子化が進められていることがわかります。今後もこの傾向が進めば「押印しなければならない紙文書」が少なくなっていくものと思われます。
話題のノーコード・ローコード開発、導入+導入検討は5割以上
昨今注目を集めている、ノーコード・ローコード開発。アプリケーションを社内で手軽に用意できるものとして多くの企業が関心を示しているようです。
「すでに取り組んでいて、業務に活用している」が9.7%、「これから取組みたい(導入済み)」は13.9%という結果となりました。「取り組みを検討している(未導入)」の30.3%を含むと、導入または導入検討中が半数を超え、前向きにとらえている企業が多いことがわかりました。
では、ノーコード・ローコード開発を実際にどのような用途で用いているのでしょうか。「すでに取り組んでいて、業務に活用している」企業に聞いたところ、次のような回答が得られました。これから取り組みを考える方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
- RPA、BOT開発、自動化(データ仕分け自動化、帳票出力自動化、情報共有、集計業務の自動化など)
- Microsoft Excelのマクロや、Microsoft Access の代替として
- 各種業務アプリケーション開発(営業部門でのCRM、画像解析ツール、写真やバーコードの電子化、店舗の売り上げデータ取り込み、台帳管理、注文書の受領・請求書発行など)
- 人事・経理向けアプリケーション
- IT資産管理ツール
- 入出荷予定
- データ活用・分析ツール
- 記録システム等
- 人事システム
- 自社WebサイトのCMSとして
- 基幹システムの開発・管理等
- 問い合わせ業務(ナレッジサイトへの投稿、検索機能の社内提供など)
- 社内の情報伝達ツール …など
まとめ
今回の調査では、情シスのDXへの関与や考え方、紙文書電子化の状況やノーコード・ローコード開発への取り組み状況の実態がわかりました。DXへの取り組みはまだ過渡期であり、難航する部分も多いと思われますが、今回の記事のような情シスの声を参考にしながら進めてみてはいかがでしょうか。
しかし、それはコロナ禍以前に戻るということではなく、情シスの体制が徐々に変化しているように、新たな時代に求められるIT環境に合わせた変化の結果と言えるのかもしれません。
また、今回は調査結果の一部を取り上げましたが、ほかの調査結果については、下記の「数字で見る“情シス”の実像 2022」をダウンロードして御覧ください。
- <<本文中の他年度の「情報システムの現状とIT活用実態アンケート」について>>
- ・2020年度アンケートは、2020年12月〜2021年1月に実施 n=522
- ・2019年度アンケートは、2020年1月に実施 n=867
- ・2018年度アンケートは、2018年9〜10月に実施 n=550