ChatGPT に自社データを学習させるには?RAGや外部ツールの活用法

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ChatGPT などの生成AIは、あらかじめ学習したデータにもとづき回答を生成します。生成AIに、さらに追加学習をさせることで、最新の情報を反映した回答や、自社に特化した回答を生成できるようになりますが、この「学習させる」過程には専門的な技術が不可欠です。
この記事では、開発者向けの手法に加え、専門知識がない人向けに外部ツールの活用方法を解説します。

この記事の内容
ChatGPT に学習させることで期待できる効果
ChatGPT に学習させる方法
生成AIの学習に利用できる外部ツールの特徴
生成AIの学習に外部ツールを導入・活用する際のポイント
ChatGPT に学習させるのが難しい場合は、外部ツールを活用しよう

ChatGPT に学習させることで期待できる効果

ChatGPT などの生成AIに「学習させる」とは、特定の追加情報を与え、より的確な回答を得られるようにすることです。まずは、生成AIに学習させることで、期待できる主な効果について見ていきましょう。

業界や業務に特化した回答ができる

ChatGPT は通常、インターネット上の公開情報などをもとに学習しているため、デフォルトの状態では一般的な回答しか提供できません。しかし、特定の業界データや自社データを学習させることで、より専門的で具体的な回答をすることが可能となります。

例えば、製造業の場合、自社の製品情報や技術仕様を学習させると、顧客からの技術的な質問に対してより正確な回答ができるようになります。また、自社の業務プロセスや社内規程を学習させれば、社内の問い合わせに的確に対応させることも可能です。

回答の信頼性が上がる

ChatGPT などの生成AIに追加データを学習させると、生成AIが回答を生成するために参照するデータの量が増えます。そのため、一般的な生成AIに比べて、より正確で信頼性の高い回答を生成できるようになるでしょう。

ただし、これは追加データの内容が信頼できるものであることが大前提です。その前提が守られていれば、データ量が増えるほど、生成AIが信頼性の高い応答をする確率が上がっていきます。

最新の情報をもとに回答できる

ChatGPT の場合、あらかじめ学習しているデータにカットオフ日(データの更新が停止された日)が存在します。例えば、 ChatGPT にはいくつかのモデルがあり、2025年1月時点では GPT-4o が最新情報を取得できるモデルのひとつです。しかし、 GPT-4o のカットオフ日は2023年10月で、それ以降の情報は反映されていません。

追加学習は、このカットオフ日以降の新しい情報を生成AIに取り込むためにも役立ちます。常に新しい情報を学習する環境を整えておけば、最新の出来事や最新の業界動向にもとづいた回答ができるようになり、実用性が向上します。

従業員教育に活用できる

ChatGPT などの生成AIに自社のマニュアルや事例を学習させれば、従業員教育ツールとしての活用も可能です。例えば、新入社員研修や継続的な社員教育において、生成AIを利用して業務上の疑問に回答することや、実際の業務を想定したロールプレイングを実施することができます。

社内FAQデータを追加データとして活用し、生成AIと組み合わせると、社員が日常業務で遭遇する疑問や問題に対して即座に解決策を提供する仕組みを構築できます。従業員からのさまざまな質問に答えるようなチャットボットを設置しておけば、業務効率向上や社員の満足度向上にもつながるでしょう。

コンプライアンスを強化できる

生成AIに追加学習を行わない場合の課題は、法律の改正や新しい規制に対応できなくなることです。そこで、最新の法律や規制情報を学習させる仕組みを整えれば、常に最新のコンプライアンス要件にもとづいた、適切な応答ができるようになります。

例えば、金融業界では頻繁に法律や省令が改正されますが、それらに対応した回答やアドバイスを得るには、生成AIに新しい情報を学習させることが必要です。
常に新しい規制や法律改正に関する情報を取り込む仕組みを作っておけば、法的リスクを軽減し、組織全体のコンプライアンスを強化できます。

ChatGPT に学習させる方法

ChatGPT などの生成AIに追加学習させるための仕組みは実装が難しく、専門的な知識や技術が必要です。自社で開発することが難しい場合は、ベンダーが提供する外部ツールを導入するという方法もあります。ここでは、開発者向けと利用者向けに、 ChatGPT に学習させる方法をご紹介します。

■ChatGPT に学習させる主な方法ChatGPT に学習させる主な方法

RAGを組み込む(開発者向け)

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、生成AIと外部データを連携させる方法です。生成AI自体にデータを取り込むのではなく、外部データから抽出されたデータを生成AIが参照できる仕組みで、一般的な生成AIよりも信頼性の高い回答を返すことができるようになります。

例えば、外部データとして自社独自のデータを登録すれば、業務に特化した回答を生成できるようになり、専門性の高いAIチャットボットとして機能させられます。RAGを用いても生成AI自体は学習をしないため、セキュリティ面の問題が生じにくいこともメリットです。

RAGは、特にめまぐるしく状況が変化する分野や、常に最新情報を必要とする利用環境において大きな効果をもたらします。ただし、導入には専門的な技術が必要で、開発者向けの手法といえるでしょう。

RAGについては、下記の記事をご覧ください。
生成AIの回答精度を高めるRAG(検索拡張生成)について徹底解説

ファインチューニングを実施する(開発者向け)

ファインチューニングは、生成AIの種類のひとつであるLLM(大規模言語モデル)を、特定のデータセットを使って調整する方法です。LLMは大量のテキストデータをもとに学習し、文脈を理解して適切な回答を生成しますが、ファインチューニングによって、自社や業界に特化した回答を生成できるようになります。

ChatGPT の場合、OpenAIが公開しているAPIを使って特定のデータセットを学習させることで、自社に特化した生成AIモデルとして調整が可能です。
ただし、この方法も導入には専門的な技術が必要となります。また、トークン数が膨大になるために、APIの利用料金が高くなる傾向があることには注意が必要です。

ベンダーが提供する外部ツールを導入する(利用者向け)

専門的な知識や開発技術がない場合でも、ベンダーが提供する外部ツールを導入すれば、生成AIを自社業務に適合させることができます。ベンダーに自社のニーズに適合したカスタマイズを依頼して、専門的な情報や独自データにもとづいて回答する生成AIの利用が可能です。

直感的に使用できるUIの管理画面が用意されている外部ツールを選べば、コーディングやプログラミングの知識がなくても、自社内で学習データを追加して運用できます。
また、セキュリティやデータ保護に関しても、ベンダー側で十分な対策を講じていることがほとんどです。

生成AIの学習に利用できる外部ツールの特徴

自社で生成AIに学習させ、業務利用できるレベルにするには、専門的な技術と知識が欠かせません。生成AIに関する開発リソースを持たない企業であれば、外部ツールを活用する方法が最も現実的な選択肢といえます。
あらためて、生成AIの外部ツールの、主な特徴を見てみましょう。

<生成AIの外部ツールの主な特徴>
  • 専門知識が不要:高度なAI開発スキルがなくても利用可能
  • 管理画面の提供:直感的なインターフェースで設定や運用が可能
  • セキュリティ対応:企業データの保護に配慮した設計
  • 既存ツールとの連携:多くの場合、企業が導入している各種既存ツールとの連携が可能
  • カスタマイズ性:企業独自のニーズに合わせた調整が可能

ベンダーが提供する外部ツールは、企業が生成AIを自社のニーズに最適化して活用するために設計されています。例えば、生成AIにRAGを組み込むには高度な技術が求められますが、外部ツールを用いれば、管理画面からRAGと同様の機能を設定可能です。

外部ツールの核となる生成AIは、 ChatGPT ではないこともありますが、「GPTモデル」を使用しているサービスであれば、 ChatGPT と同様の機能が使えると考えられます。
また、セキュア対応の外部ツールを利用すれば、 ChatGPT 単体での利用よりも、むしろセキュリティ強度は高くなります。

生成AIの学習に外部ツールを導入・活用する際のポイント

外部ツールを活用して生成AIに学習させるには、事前の検討や準備が必要です。ここでは、外部ツールを導入・活用する際に、検討すべきポイントを解説します。

■外部ツールを導入・活用する際のポイント外部ツールを導入・活用する際のポイント

外部ツールの使用環境や互換性を確認する

外部ツールを導入するには、そのツールが自社の環境で問題なく使用できることは必須要件です。可能であれば無料トライアルを利用して、ハードウェア環境やソフトウェア環境、クラウド環境などに適合しているかどうかを確認しましょう。

現在業務で使用しているツールとの互換性のチェックも重要です。すでに導入済みのツールと連携したり、データを共有したりすることで、外部ツールの活用方法が広がります。また、互換性があるかどうかのチェックを万全にすることで、導入後のトラブルだけでなく、追加コストも避けることができます。

外部ツールのセキュリティ管理を確認する

外部ツールを使用するときは、自社データが適切に保護されるよう、暗号化やアクセス制限を行わなければなりません。特に、機密情報や顧客データを扱う場合は、安全性の確保は最も留意すべきポイントです。ベンダーの選択においても、セキュリティポリシーやデータの取り扱い方法を入念に確認する必要があります。

ベンダーから提供される外部ツールは、高いセキュリティ基準にもとづいて設計されているかどうか、セキュアなシステムを構築できるかを確かめた上で導入することが重要です。
同時に、アクセス権の管理やログイン制限の設定、ログの定期的な確認など、自社内におけるセキュリティ対策も徹底する必要があります。

適切なデータを準備する

生成AIの学習に使用するデータは、その信頼性と質により効果が大きく左右されます。学習に使用するデータの量は多いほど信頼性が上がりますが、それ以上に正確で偏りのないデータの選定と準備が欠かせません。不要なデータや誤った情報を排除し、構造化した質の高いデータを用意することで、学習効果は向上します。

特に、業務に利用する場合には、該当する業務に特有の関連情報や過去の事例なども含めた多様なデータセットを準備することで、より実用的な回答が得られるようになります。
準備作業にはある程度の時間と労力がかかりますが、丁寧に行うほど成果につながるでしょう。

ChatGPT に学習させるのが難しい場合は、外部ツールを活用しよう

ChatGPT などの生成AIに追加学習させるには、高度に専門的な技術が必要とされ、ビジネス活用の際のハードルとなることがあります。この課題を解決するのが、ベンダー製の外部ツールの活用です。
専門的な技術や知識がなくとも、新しいデータの学習とカスタマイズが可能で、既存ツールと連携した利用も可能です。信頼できるベンダーを選べば、セキュリティに関しても問題なく安心して導入を進められるでしょう。

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