ファイルサーバーは多くの企業で利用されていますが、コロナ禍でハイブリッドワークの需要が高まる中、外部からアクセスできる仕組みを構築する必要があります。また、従業員が頻繁に利用するものだけに、快適性や利便性にも配慮しなければなりません。利便性を維持しつつ、情シスの負担を増大させないためにはどうすればよいのか。本稿では、ファイルサーバー利用において乗り越えるべき6つの課題を挙げた上で、さらにその先のもう1ステップを経て到達するべき「ハイブリッドファイルサーバー」の理想像とその「道標」を解説します。
ファイルサーバーでありがちな6つの課題
理想的なファイルサーバーを考える上で、まず企業におけるファイルサーバーにおいてよくある6つの課題を整理したいと思います。もしこの6つにすべて該当してしまったら「Level.1」の状態です。昨今企業に求められる柔軟性が高く働きやすい環境とはほど遠いものだと考えてください。
しかし、これらの課題を1つずつステップアップして乗り越えていくことで「Level.2、Level.3…」というようにだんだんと自社の IT 環境を改善し、利便性の高い環境を手にすることができます。
最終的に目指すのは、6つの課題を乗り越え、さらにもう1ステップをクリアすることで到達するハイブリッドファイルサーバーです。今回の前編では、まず課題の最初の3つを取り上げ、それぞれの詳細と解消方法を解説していきます。
課題1.社内ネットワークに接続できずアクセスできない
ファイルサーバーに関してユーザーからありがちな問い合わせの代表例が「ファイルサーバーにアクセスできない」です。その原因には、そもそもクライアント VPN に接続できていなかったというものもあります。そうした単純な要因はなるべく排除する必要があります。
これを実現する具体的な方法としては、クライアント PC を Azure AD に参加させ、Azure VPN クライアントを導入することで、Windows ログインの際にすでに VPN 接続している状態にできる方法があります。
こうすることで、アクセス不可能な場合に原因を究明しやすくなり、VPN へ接続できていないことに起因する問い合わせを減らすことができます。具体的な構成としては、Azure 環境に配置したゲートウェイ仮想ルーターを置き、そこを経由してクライアント側から拠点側のファイルサーバーへアクセスするかたちとします。
課題2.本社やデータセンターに行かないと、障害対応ができない
情シスの中には、24/365の緊急対応が求められるため「心の安らぎタイム」を確保できていない方も多いでしょう。これは決して健全な状態ではありません。こうした課題に対しては、現地に赴かなくとも障害対応できるインフラとして、Azure といったクラウドへ移行することがおすすめです。Azure であれば、SLA(Service Level Agreement)は99%以上であり、OS の復旧までサービスが自動で行ってくれます。
課題3.サーバースペックは、リプレイスのタイミングでしか増やせない
ファイルサーバーでよくある悩みが、利用している中でスペック不足になることです。将来的に不足しないようなスペックをあらかじめ選定することは、経験豊富な情シス担当者でも困難です。コロナ禍で仕事の仕方やサーバーの利用の仕方が大きく変わったように、今後想定していなかった使われ方をするようになるかもしれません。そうなった際に急に拡張することはできません。また、半導体不足による機器の納期も昨今では課題となります。
この課題に対しても、Azure を始めとするクラウドインフラが有効です。利用実態に合わせて、好きなタイミングでスペック変更できることがクラウドのメリットです。
ここまで触れた3つの課題は、ファイルサーバーにおける「よくある課題」であり、その解決策を簡単に紹介しました。後編では、引き続きファイルサーバーにまつわる課題と、それを乗り越えて理想的な環境へとステップアップしていく方法を解説します。
※本記事は、2022年11月7日〜11月20日に開催された「ハイブリッドワーク祭(フェス) 2022 〜 Microsoft 365 ではじめるDX〜」のブレイクアウトセッション「ファイルサーバーをLevel. Upしよう ~ ハイブリッドファイルサーバー攻略本 ~」の講演内容を再編集したものです。>>無理なくステップアップ!「ハイブリッドワーク時代のファイルサーバー」の構築方法【後編】