
2021年10月19日から10月29日にかけて、オンラインイベント「情シスサミット 2021 ONLINE」が開催されました。情シスのために例年開催されている本イベントですが、今回は「DX時代のコミュニケーション&セキュリティ」をテーマに9日間にわたり開催されました。本レポートでは、このイベントの主なセッションをレポートします。
1. 「DX時代の情シスをアップデートする」ための70以上のセッションを開催
今回の「情シスサミット 2021 ONLINE」は、9日間にわたり4つのテーマで70以上のセッションという規模で、開催されました。申し込み人数は1,815名となり、多くの情シスの注目を集めたイベントとなりました。
また本イベントは9日間を、情シスが知っておきたい4つのテーマに分けたのも特徴的です。マイクロソフトDays、DX支援・クラウドDays、ID&セキュリティDays、情シスDaysという4テーマと、最終日にはアンコールDayとしてキーノート、スペシャルセッション等が再度公開されました。
いま、コロナ禍がDX化を加速させたと言われる中で、情シスにもまた、新たな役割が求められています。このような大きな時代の変化の中で、新たなミッションに取り組む情シスを支援するために、最新動向や活用事例、他社の情シスの取組状況など数々のセッションが配信されましたが、本記事ではそれぞれのテーマの概要と、注目セッションをレポートします。
- 10.19 tue - 20 wed
- マイクロソフトDays
- 10.21 thu - 22 fri
- DX支援・クラウドDays
- 10.25 mon - 26 tue
- ID&セキュリティDays
- 10.27 wed - 28 thu
- 情シスDays
- 10.29 fri
- アンコールDay
2. マイクロソフトDays…中小企業の活性化に向けた活用のヒントが集結
マイクロソフトDaysは、キーノート、スペシャルセッションのほか全13セッションが配信されました。
情シスにとって、Microsoft 365 や Microsoft Azure、Azure AD / Active Directory など、普段からよく扱っている製品に関する最新情報のほか、Windows 11 や Windows 365 など目新しい情報もセッションで紹介されました。ここでは、このマイクロソフトDaysより2つのセッションを取り上げます。

- マイクロソフトDays レポート1:
キーノートマイクロソフトで始めるデジタル化~ ハイブリッドワーク時代への対応 ~ - 三上 智子氏 日本マイクロソフト株式会社 執行役員 コーポレートソリューション事業本部長
パンデミックをきっかけにリモートワークが普及したことを受け、今後の理想的な働き方は「ハイブリッドワーク」になるのではないかと語る三上氏。画一的に従業員が出社し同一の場所で一定時間働くという在り方を変えることで、人々や企業の可能性を最大限に活かすことになると指摘。
ハイブリッドワークにより働き方を進化させることで、人材確保や育成、ビジネス継続性にもつながるとする。画一的な働き方に戻ると、新たなクリエイティビティや事業が成長する「種」を見失いかねず、今こそ攻める時、ハイブリッドワークを確立することがおすすめと語った。


- マイクロソフトDays レポート2:
Azure AD が中小企業を救う訳 - 村松 真 株式会社ソフトクリエイト 事業戦略本部 マイクロソフト技術部 技師長
ソフトクリエイトの Active Directory(以下、AD) 第一人者、村松 真のスペシャルセッション。このセッションでは、「Azure AD が中小企業を救う」とは一体どういうことなのかを解説。中小企業にとってリモートワークの課題として、利用クラウド増加による多重ID管理、デバイスセキュリテイ、認証強化、ランサムウェア対策などがあると村松は語る。
そして、様々な課題を Azure AD により解決することができるようになる。クラウド化の推進と Azure AD 活用、それがモダンワーク(多様な働き方)につながり、中小企業の新たな価値創造にもつながることを伝えた。


3. DX支援・クラウドDays…情シスはどのようにDXに関与するのか?
DX支援・クラウドDaysでは、スペシャルセッションのほか全15セッションが配信。経営課題となるDXを、IT活用の面から現場で支える情シスも数多いことでしょう。そのような背景もあり、ノーコード・ローコード開発に関するセッションが数多く配信されました。ほかにも、文書の電子化、SASE・ゼロトラスト、DXの盲点になりやすいネットワークなどが紹介されました。

- DX支援・クラウドDaysレポート1:
いまから始めるDX!DX実現のキーマンは情シスにあり - 栗山 圭太氏 サイボウズ株式会社 執行役員 営業本部長 兼 事業戦略室長
改めてDXとは何か、経済産業省の「DXレポート2」を引用し、変化に対応できる能力を身につけることが重要と語る栗山氏。また、「IT=効率化」の延長線上にDXがあるわけではなく、DXはデジタル化を手段として変革を起こすことという。
一方社内に目を向けると、現場の変化の速度に追従したい業務部門から情シスの元に数多くの要望が寄せられる。柔軟・迅速に対応するためにも、業務部門が現場でほしいものをローコード・ノーコードのツールで作る、情シスはそれに対してサポートしたり、ガバナンスを効かせたりするということが生まれている。業務部門に対し伴走型の情シスとして新たな関係を築くことができると伝える。


- DX支援・クラウドDaysレポート2:
Power Apps でサクッとアプリ作りました! - デコ♡ 株式会社ソフトクリエイト 技術本部 デジタルプラットフォーム部
ノーコード・ローコード実践例を紹介。業務部門の担当者が「社内1人Web会議ブースの予約アプリ」を3日間で開発したケースを紹介。使用したツールは Microsoft Power Apps。Microsoft Teams にも連携していて、PCでもスマホでも簡単に予約できる。Microsoft 365 ライセンスがあれば Microsoft Power Apps を利用できるので、手軽にアプリ開発が始められることがわかるセッションとなった。


4. ID&セキュリティDays…高度化・巧妙化する脅威から自社を守る対策とは?
ID&セキュリティDaysでは、5つのスペシャルセッションと18のセッションが配信。昨今のサイバー攻撃の脅威に対してどう備えるか、テレワークなど新たな働き方が話題になる中で、今後考えるべきセキュリティ対策のセッションが充実しました。
特に、クラウド化や多様な場所での働き方が進む中、ゼロトラストは不可欠という考え方も定着しつつあり、その中でも重要テーマであるID管理にも注目が集まりました。ここでは、ゼロトラストを紹介したセッションと、ID管理について紹介したセッションについてレビューします。

- ID&セキュリティDaysレポート1:
ゼロトラスト時代のセキュリティ戦略 - 三輪 信雄氏 S&J株式会社 代表取締役社長
2020年、テレワークが急速に進んだものの、VPNの脆弱性が次々見つかり、ランサムウェアやマルウェア感染被害が増加したと語る三輪氏。さらに最近では新型ランサムウェアの被害も増え、新たな手法で企業を恐喝しているという。
対策として「ゼロトラスト」が注目されているが、実は、ゼロトラストはビルから荒野に出ていくようにセキュリティのレベルを引き下げることだという。そのため、ゼロトラストに移行する前に、自社のセキュリティ対策の評価を行い、徐々に自社に合わせて対策を行うことが必要と語る。
また三輪氏は今年から来年にかけて必要な対策を「セキュリティ戦略2021」としてまとめている。例えば、ゼロトラストに移行すること、VPN脆弱性情報を収集すること、ランサムウェア攻撃で狙われるAD監視、SOCによる速やかな一次対応などが必要であることなど事例とともに伝えた。


- ID&セキュリティDaysレポート2:
今、必要とされる認証基盤とは - 江川 淳一氏 エクスジェン・ネットワークス株式会社 代表取締役
ゼロトラストとともに注目を集める「認証」や「ID管理」の分野だが、セキュリティの中の認証基盤は難解と感じる人が多いと語る江川氏。このような現状の中で、本セッションでは、「認証」「認可」「ID管理」といったキーワードをITの歴史の中で平易に解説した。
昔のITは鍵・入館証など物理境界で守られていたものの、クラウドが普及するニューノーマル時代には「ID」が新たな境界線となった。IDを使う本人であることを確認する「認証」と、情報へのアクセスを認める「認可」。そのためのシステムが認証基盤であり、その整備はセキュリティ対策だけではなく、社内の適切な情報共有に向けた組織運営にも重要な仕組みであることを伝えた。


5. 情シスDays…高度化・巧妙化する脅威から自社を守る対策とは?
情シスDaysでは、スペシャルセッションと8つのセッションが配信。他社の情シスはどのような取り組みをしているのだろう?という、情シスの疑問に応えるセッション「突撃隣の情シスさん」や、今後の情シスの在り方を考えるセッションなどがバラエティ豊かに提供されました。

- 情シスDaysレポート1:
情シスは有利!予算獲得のためのプレゼン方法 - 熱海 徹氏 SOMPOリスクマネジメント株式会社 サイバーセキュリティ事業本部 上席フェロー
新規事業の企画を実現するためには、グループ長やマネージャー→部長→経営層といった段階でプレゼンし予算を獲得しなければならない。しかし、背景をよく知らない人たちにどうプレゼンするか。熱海氏が「情シスだからできた」経験をもとに予算獲得のポイントを紹介した。
意識すべき点として、各段階でプレゼン相手の立場を考えること、プレゼンの目的は「相手に自分が望む行動を促すということ」などを挙げたほか、資料で最も重要なのは「わかりやすさ」に尽きると語る。そのためにも5W2Hにはてはめて1つのストーリーを作ることも有効だという。さらに、情シスは社内を隅々まで歩き回ることができるので、普段接する機会のない部署の人と会話できることもあり、情報収集が行いやすいという点を挙げた。このように情シスが予算獲得するための様々なヒントを紹介した。


- 情シスDaysレポート2:
突撃!隣の情シス IT企業編 - (インタビュア:ダブル石田)
「実は知っているようで知らない、隣の情シスさんの奮闘ぶりをぜひ、ご覧ください」という導入でスタートするインタビュー企画。“突撃”先は、ソフトクリエイト、エクスジェン・ネットワークス、エイトレッド、Y2Sの4社。それぞれ規模や扱う製品も違うが、情シスの実態も様々。その業務内容、テレワークでの働き方、人となりなど様々な角度から紹介した。


6. まとめ
かつてない規模とセッション数でお送りした「情シスサミット 2021 ONLINE」。期間中は好きな時間帯に見ることができる、気になるセッションは何度でも繰り返し見ることができる、移動せずに参加できるので便利といった声が寄せられましたが、オンラインでの情シスサミット開催は2年目ということで、これもまたニューノーマル時代の1つイベントの形と言えるでしょう。
また、いただいた感想やご要望などは、今後のイベント・セミナーにも反映し、さらに内容を充実させていきたいと思います!