情シスにも“派閥”がある?――今回は、2020年1月にソフトクリエイトが実施したアンケート※の集計結果を、今後の社会やビジネスの展望を踏まえた上で分析して情シスの実情を読み解きました。その結果、「情シス」は大きく4つのタイプに分けられることがわかりました。そのうち最多は「ノンコア業務かつオンプレミス中心」のタイプ。最大“派閥”と言えるこのタイプをはじめ、4つのタイプの分類と、それぞれの特徴をご紹介します。
※「情報システムの現状とIT システム活用実態アンケート」。調査の概要は「
数字で見る“ 情シス”の実像 2020
」参照
「クラウド」と「コア業務」がタイプ分類のポイント
DX という言葉に象徴されるように、ビジネスのデジタル化がいよいよ本格化することが予測されています。変化する社会や市場に対応するためにはビジネスを加速する必要があり、ビジネスを支える企業の IT も、変化に合わせて柔軟に対応することが求められています。
今、多くの企業ではクラウド化を進めています。これはつまり、「所有から利用」、「モノからコト」へと変革することで、ビジネスにスピードと柔軟性をもたらすための取り組みです。その反面、経済産業省の『DX レポート』で「2025年の崖」問題として指摘されているように、既存のオンプレミス環境から脱却できずに、ビジネス上の損失を招くケースもまだ現実的なストーリーでしょう。
しかし、クラウド化を進めるだけで DX が推進できるわけではなく、経営戦略・IT 戦略を IT システムに適切に反映させることがビジネスを加速する上では重要です。だからこそ、情シスは自社のビジネスバリューを高めるための IT 活用であるコア業務(『DX レポート』ではバリューアップ領域と呼ぶ)に携わる必要があります。
一方、多くの情シスが携わっている運用や保守、問い合わせ対応などノンコア業務(『DX レポート』では、ラン・ザ・ビジネス領域の業務)もまた欠かせない業務です。双方の業務をバランスよく行う必要がありますが、IT 人材が限られた環境下では、社外に人材をアウトソースすることも必要でしょう。これもまた、人材を「所有から利用」することの一例といえます。
このように考えると、情シスは IT 戦略などコア業務/バリューアップ領域の業務に関与していること、クラウド化など素早い変化に対応できるシステム環境であることが、大きな観点として挙げられます。
そこで、「コア業務とノンコア業務」、「クラウド化とオンプレミス」の2軸でアンケート結果を分類すると下図のようになりました。縦軸の「コア業務:ノンコア業務」では「3:7」という比率になり、横軸の「オンプレミスと3割以上クラウド」ではほぼ半数ずつに分けられました。
この図のように4つのタイプに分けられたわけですが、それぞれは次のようなタイプとなります。
- 多数派は「ノンコア業務×オンプレミス中心」タイプで37%
- 2番目に多いのが「ノンコア業務×クラウド推進」タイプで33%
- 先進的な「コア業務×クラウド推進」タイプは18%(約2割:5社に1社)
- 少数派は「コア業務×オンプレミス中心」タイプで12%
それぞれのタイプにどのような特徴があるのか次項で見ていきましょう。
あなたはどのタイプ?情シス4タイプの概要
TYPE1:コア業務×クラウド推進
コア業務に関与する時間が多い「攻めの情シス」で、クラウド化も3割以上進んでいるタイプ。IT 戦略にも関与し先進的に IT 活用を進めている状況と考えられます。また、DX や働き方改革にも関与し、ノンコア業務はアウトソースもしくは社内でバランスよく対応している状況と考えられます。
TYPE2:コア業務×オンプレミス中心
こちらもコア業務に関与する時間が多い「攻めの情シス」。しかし、クラウド化は2割未満でオンプレミス中心です。情シス人数も多い傾向にあり、コア・ノンコアともに社内で両立しているケースも多いようです。オンプレミス環境がネックとなり、テレワーク環境、働き方改革(デジタルワークスペース改革)、DX などがあまり進んでいません。
TYPE3:ノンコア業務×クラウド推進
ノンコア業務が多い「守りの情シス」で、クラウド化を3割以上進めているタイプ。モバイル化やテレワークも推進し今後もクラウドファーストの意思があるものの、シャドー IT が発生するなどガバナンス面での課題もあります。また働き方改革などへの関与も限定的。今後は、コア業務に関与する時間を増やしていければ、解決の一助になりそうです。
TYPE4:ノンコア業務×オンプレミス中心
こちらもノンコア業務が多い「守りの情シス」。クラウド化は2割未満で、オンプレミスのシステム中心。その運用保守や報告、問い合わせ対応が主な業務となっています。人材不足への対応が遅れがちで、このタイプが情シスの多数派となっています。
これらの4タイプをほかの統計でも見てみると、次のような差も表れています。例えば、システム導入・移行方針を見てみると、TYPE1(コア×クラウド)が最もクラウド移行を優先していて、TYPE4 の多数派を見ると、クラウド移行は最も消極的ということがわかります。
また、それぞれの DX への取り組みを見ると、TYPE1 から TYPE4 にかけてその取り組み方に差があることがわかります。攻めの情シスほど DX への関与が多い傾向があることが明らかになりました。
このように情シスそれぞれにタイプがあり、今後の自社のビジネスのあり方や戦略に合わせて適切に対応していくことが求められます。そのポイントとなるのが、コア業務への関与でありクラウド化であると考えられます。また、ノンコア業務がネックとなることでコア業務に専念できないケースがあることもわかっています。こうした場合には、ノンコア業務をアウトソースする解決策を選ぶ企業も多いようです。いずれにせよ、自社のタイプを知り課題を明確にしながら、それぞれのタイプに合った解決策を検討していくことが必要となることでしょう。
まとめ
今回はアンケート結果を分析することで、4つの情シスタイプが見えてきたことをご紹介しました。しかし、ここで紹介したのはほんの一部です。情シス4タイプについて、さらに詳しく知りたい方はぜひ、関連資料をダウンロードの上、ご一読ください。自社のタイプを知り、改善策を考えるための一助に活用してみてはいかがでしょうか。