ChatGPT の登場以来、ビジネスのさまざまな領域において生成AIの活用が注目を集めています。すでに多方面で生成AIの利用は進んでいますが、一口に生成AIといってもいくつかの種類があり、どのシステムをどのように活用すればいいのかわからないという企業様も多いのではないでしょうか。
この記事では、生成AIの仕組みと種類をご紹介するとともに、具体的にどのような領域での活用が見込めるのかを解説します。
生成AIは、膨大な学習データをもとに文章や画像を生成するシステム
生成AI（Generative AI：ジェネレーティブAI）とは、膨大な学習データをもとに、テキストや画像を生成することができるシステムのことです。コンピューターやプログラミング言語に関する専門的な知識がなくても扱えるものが多く、人間が制作したかのようなクオリティの成果物を生み出すことができます。
ここでは、生成AIがコンテンツを生み出す仕組みと、従来型のAIとの違いについて解説します。
生成AIの仕組み
生成AIは、ディープラーニング（深層学習）と呼ばれる機械学習を利用して、新たなコンテンツを生み出す技術です。ディープラーニングとは、人間の脳の動きを模したニューラルネットワークという手法を用いて、多層的にデータを分析・判断していくことで学習することを指します。
例えば、 ChatGPT のような生成AIでは、複雑な言語の構造や関係性を理解し、予測する能力をディープラーニングによって高めています。
ディープラーニングの精度を上げるには、大量のデータが必要です。近年の技術的な進歩により、膨大なデータの分析にかかる時間が大幅に短縮され、生成AIは瞬時にアウトプットができるようになりました。
従来型のAIとの違い
生成AIと従来型のAIの最大の違いは、オリジナルのコンテンツが作れるかどうかです。従来型のAIが、事前に学習したデータとの整合性を識別したり、人間が設定したシナリオなどに沿って回答を提示したりするのに対し、生成AIは人間が与えた情報だけではなく、ディープラーニングによって自己学習を繰り返すことで得た情報をもとに、新たにコンテンツを創造することができます。
従来型のAIは、人間が与えた情報以外の回答を生成することはできません。そのため、クリエイティブな領域への利用には不向きですが、データの正誤チェックや画像認識、返答内容を定型化する必要があるFAQなどに向いています。
一方で、生成AIはアイディア出しやコンテンツ生成といった、0から1を生み出す必要がある領域での活用が見込まれます。また、高度な顧客対応といった柔軟性が求められる領域でも、ある程度の対応が可能です。
さらに、ChatGPT に代表される生成AIは、専門知識なしに扱えることも特徴です。なじみやすいインターフェースと、自然な言葉で質問をするだけでアウトプットが得られるという使いやすさは、今までAIを使ったことがない人でも「ちょっと使ってみよう」と思わせるものでした。
こうした従来型との違いが、生成AIのビジネス利用が一般的になった理由といえるでしょう。
生成AIは大きく分けて4種類
ビジネスでの利用が進む生成AIですが、一口に生成AIといってもいくつかの種類があり、それぞれ得意とする領域は異なります。ここでは、生成AIを4種類に分け、それぞれどのように活用できるのかを解説します。
文章生成AI
文章生成AIは、ユーザーが入力した「プロンプト」と呼ばれる指示テキストに対して、自動的に文章を生成できるAIです。代表的なものはOpenAIが開発した ChatGPT で、2023年に日本語対応してからは、国内でも大きな話題となりました。
人間同士のように自然なやりとりができることが特徴で、文章の要約や校正、翻訳などを得意としています。
画像生成AI
画像生成AIは、大量の画像データから視覚的な要素を抽出し、それらを分析することで、新たな画像イメージを作り出すことができるAIです。文章生成AIと同様、ユーザーが入力したプロンプトに対して、そこから連想される画像を出力します。
Stable Diffusion や Midjourney 、 DALL·E などが代表格で、アートや広告のクリエイティブ、ウェブデザインの領域でも広く活用されています。
音声生成AI
テキストや音声データのインプットに対し、人間の声のように返答できるのが音声生成AIです。単なるテキスト読み上げソフトとは異なり、アーティストや俳優のような特定の人物の音声データを学習させることで、まるでその人が読み上げているかのような音声を生成することができます。
OpenAIが発表した Voice Engine は、マイクを通じて15秒間録音するだけで、元の話者と同じように話すことが可能です。これらの技術は、音声アシスタントやナレーションの生成において、大きな力を発揮しています。
動画生成AI
動画生成AIは、生成AIの中でも開発が難しいといわれてきましたが、今では画像生成AIと同じように、テキストで指示したイメージと関連度の高い動画を生成することが可能です。アメリカの玩具販売大手トイザらスは、OpenAIが提供する動画生成AIの Sora（ソラ） を用いて
約1分間のCM動画
を作り出し、全世界に公開しています。
国内でも、飲料メーカー伊藤園がAI生成で出力したタレント映像をTVCMに起用しました（
同社リリースによる
）。生成AIは動画クリエイティブの領域でも大きな成果を上げています。
生成AIのビジネス活用
AI技術の発展により、これまで人間が行ってきた仕事の多くを、生成AIが担うことが可能になりました。ここでは、特にビジネスにおいて生成AIをどのように活用できるかを、具体例を交えて紹介します。
ルーティンワークの効率化
生成AIは、ルーティンワークの効率化に非常に有効です。これまで人間が時間をかけて行っていた定型的な業務の多くは、生成AIによって短時間で終わらせることができます。
例えば、取引データから必要な情報を抽出して請求書を作成する、従業員の勤怠データから個々の業務量を予測するといったタスクを生成AIによって自動化することで、ヒューマンエラーを減らし、業務効率を大幅にアップすることができます。これらの業務において、生成AIは文章の読み取り、画像の解析、データの整理などを行い、必要な情報を迅速に抽出します。
生成AIにルーティンワークのサポートをしてもらうことで、人間はよりクリエイティブな領域にリソースを割けるようになるため、組織全体の生産性を上げることが可能です。
クリエイティブの制作
クリエイティブの制作においても、生成AIを活用することができます。大量のデータで学習した生成AIは十分に実用的で、オリジナルのコンテンツを作成することが可能です。
具体的には、ウェブサイトの記事やニュースリリースなどの文章や、バナーで使う画像などの作成が考えられます。さらには広告やデザインの領域でも、アートディレクターやデザイナーに対し、クリエイティブな作品のベースとなるアイディアを提示することができるでしょう。
ただし、生成された作品が既存の著作物に類似していないかなど、知的財産権に配慮することが重要です。
コミュニケーションの負担軽減
高い言語処理能力を持つ生成AIは、コミュニケーションの負担軽減にも役立ちます。人間が応対するのと変わらない品質で、24時間365日対応することができる生成AIは、カスタマーサポートなどの領域で活用されています。
例えば、AIチャットボットなどの自動応答システムを導入することで、顧客からの問い合わせにリアルタイムで対応でき、スタッフの負担軽減が可能です。
AIチャットボットについては、下記の記事をご覧ください。
AIチャットボットとは？従来型との違いや導入のメリットを解説
さらに、生成AIが元々持っている大規模言語モデル（LLM）に加え、企業ごとの製品情報や顧客データを学習させることで、より質の高い対応が可能になります。
生成AIの活用によって、コミュニケーションコストを低減することができれば、コスト削減につながるばかりでなく、スタッフはより高度なサポートや特別な顧客への対応に集中することができます。
データ処理の最適化
生成AIは、データ処理の最適化においても有用です。一度に大量のデータを処理できる生成AIは、企業に眠っている情報を有効活用するのに役立ちます。
企業が営業活動を行えば、顧客の属性や取引に関する膨大なデータが蓄積されます。生成AIはそれらのデータを自動的に分類し、必要な情報を即座に抽出することが得意です。
生成AIを活用してデータを最適化し、解析することで、「この属性の顧客には、この時期にマーケティング施策を行うのが効果的」といった、これまで見過ごされてきたトレンドやパターンを発見することもできるようになります。
情報の収集・要約・分析
情報処理能力に長けている生成AIは、情報を収集し、それらを要約・分析することも得意です。適切な指示を出しさえすれば、人間が読み解くには時間のかかる文章も一瞬で要点を抜き出し、分析することができます。
例えば、官公庁の公開している長大な資料などは、読んで内容を把握するだけでも多大な時間がかかってしまいます。しかし、生成AIは与えられた情報を即座に要約することができるので、資料の内容把握にかかる時間の短縮が可能です。
また、利用者のニーズに合わせて、インターネット上の膨大なデータの中から関連度の高い情報を提供することも、生成AIが得意とすることのひとつです。
生成AIの情報処理能力を借りることで、企業は迅速かつ的確な状況把握と意思決定ができるようになるといえます。
生成AIでの業務効率化については、下記の記事をご覧ください。
AIで業務効率化を実現するためには？具体例とポイントを解説
さまざまな生成AIを活用して企業の競争力を強化しよう
生成AIにはいくつかの種類があり、いずれもビジネスのさまざまな領域での活用が進んでいます。従来型のAIと比べて専門的な知識がなくても扱え、オリジナルのコンテンツを生み出すことができる生成AIは、今後よりいっそう利用の幅が増えていくでしょう。
企業にとっては、生成AIの力をビジネスに活かすことができるかどうかが、今後の成長のカギを握るといっても過言ではありません。
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