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セキュリティ点検Week 2025

製造業のDX推進の課題とは? 調査結果から見る製造業のAI利用実態

情報システム部門
AI

人手不足、技能継承、コスト競争など、昨今、製造業は様々な課題を数多く抱えています。その解決に向け企業はDX推進が重要な経営戦略となり、DXの加速に向けAIの活用が期待されています。 そこで今回は、製造現場におけるAI利用実態調査の結果とともに、製造業の課題とAI活用の可能性を考えてみましょう。

この記事の内容
製造業を取り巻く課題のTOP5は?
製造業のDX推進の動きとAI活用
AI導入・活用の壁を乗り越えるヒント
まとめ

製造業を取り巻く課題のTOP5は?

・現場に山積する製造業の課題を探る

激動の時代と呼ばれる今日。労働力人口の減少や国際化など社会の変化とともに、IT・デジタル化も進化し続け、まさに先が読めない時代になっています。

製造業もまた大きな変化の渦中にあることから、現場には様々な課題が山積しています。そこで本コラムでは、「製造業界の課題に関する調査(2025年3月)」※1や、経済産業省調査などを参考に、現在の課題を整理するとともに、解決の糸口を探っていきます。
※1「製造業界の課題に関する調査(2025年3月)」ソフトクリエイト調べ

まず、「製造業の課題」に関する調査結果によると、製造業で実際に現場が直面している負担として最も多く挙げられたのが「人手不足・技術継承の問題」で38.2%でした。TOP5を続けて見ると、「コスト競争(26.1%)」、「労働環境の改善(19.3%)」、「品質管理・リコールリスク(18.8%)」、「DXの遅れ(15.8%)」という結果になりました。

特に人手不足は業務のみならず経営への影響も大きい課題で、現在、多くの企業が抱えている問題でもあります。これら上位の課題を解決しなければ、今後、競争力の低下・品質不安・生産性の低迷など、企業の中長期的な成長に大きな影を落とす恐れがあります。

こうした上位の課題に対し、企業はデジタル技術を使った改善に取り組み始めています。中でも注目されているのがDXの推進です。しかし、「DXの遅れ」が第5位に入っていることからも、取り組んではいるものの、進められていないケースがあると考えられます。

・8割の製造業は、DXに向け何らかの取り組みを進めている

実際、製造業のDXへの取組状況※2を見ると、約8割はDXに向けて何らかの取り組みを行っていることがわかります。今後の製造業のビジネスにおいて、DXへの期待が高いことを伺わせる結果と言えるでしょう。
※2「DX動向2025」IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

製造業のDX推進の動きとAI活用

・経済産業省が強調する「製造業DX」の方向性とは

「製造業DXの必要性」について、経済産業省は「個社が提供する付加価値のQCD向上(①エンジニアリングチェーンの最適化、 ②サプライチェーンの最適化)と事業機会の拡大(③N倍による規模拡大と④サービス化・プラットフォーム化)を可能にする」と述べています※3

また、今後の日本の製造業DXの目指すべき方向性の1つに、「標準化・デジタル化され、相互に接続可能な製造プロセスの導入と、それに対応するビジネスモデルの改革が必要」※3。としています。
※3「 製造業のDXについて 」経済産業省 製造産業戦略企画室

政府や業界団体も、製造業におけるDX推進を後押ししており、実際に「データを起点にした改善活動」や「工場内の可視化」などが進んでいます。

・製造業の「DXの遅れ」を取り戻す鍵となるAI

このような動向の中で、「DXの遅れ」を取り戻すための鍵を握るのがAI活用です。

「ものづくり白書」では、「DXは、産業競争力の強化に向けて製造事業者の稼ぐ力の向上やGXの推進等に資する重要な取組」と述べるとともに、「労働力不足の中、生産性や産業競争力の向上に向け、 ロボット・AIの開発・活用の推進も重要」と述べています※4
※4「 2025年版 ものづくり白書 概要(2025年5月) 」経済産業省、厚生労働省、文部科学省

一般的にDXの推進には、まずは「業務のデジタル化(デジタイゼーション)」が求められます。つまり、これまでアナログで行っていた数々の業務をデジタル化する過程が必要になるということで、これは人手で行うには大きな労力が必要となります。さらに、「業務フローや業務プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)」では、デジタル化された業務プロセスを連携させることになります。

業務のデジタル化(デジタイゼーション)

これらDXを進める上ではレガシーシステムの刷新やクラウド化などが注目されていますが、その重要な取り組みとしてAI・生成AIの活用も指摘されているのが実情です。しかし、生成AI導入に向けた取り組みは大企業を中心に拡大しているものの、小規模の企業では遅れているのが実情とも言われています※2
※2「DX動向2025」IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

・製造業のAI導入・活用の実態は?

「製造業界の課題に関する調査」でその実態を見ると、「導入済みで活用できている」と回答した企業は6.1%。「AIを導入またはAIシステムを開発している企業」の全体を合わせても全体の約2割にとどまっているという結果となりました。

AI導入・活用の壁を乗り越えるヒント

・AIの「効果が不明」や「費用」、「運用」が課題の上位に

製造業のDX推進を後押しすると考えられるAI・生成AIですが、その導入に関してはあまり進められていないという実情がわかりました。調査結果とともに、AI導入の「課題やハードル」を乗り越える方法について検討してみましょう。

「製造業界の課題に関する調査」では、企業が直面する「導入の課題やハードル」について聞いています。最多は「AIの効果がよくわからない(26.0%)」、次いで「導入費用が高い(23.8%)」、「社内での運用(22.2%)」、「セキュリティの維持(21.7%)」、「社内での運用(20.3%)」となりました。これら上位の課題・ハードルについて、それぞれ解決策を挙げてみましょう。

(1)AIの効果がよくわからない
AIの成果が定量化しにくく、現場での評価軸が不明瞭であることが背景にあると考えられます。
まずは、 ユースケース などを参照し、スモールスタートで特定業務にAIを適用し、成果を何らかの形で“見える化”することが重要です。たとえば、現場では異常検知や需要予測など、事務レベルでは議事録作成や資料作成補助、要約などにかかる時間削減など、効果が比較的出やすい業務から着手し、社内に成功体験を蓄積することも一案です。
(2)導入費用が高い
初期導入にかかるPoC費用やライセンス、外部ベンダーへの依頼などが負担となっていることが考えられます。
まずは、クラウドベースで利用できるサブスクリプション型のAIソリューションや、対象業務を絞り、初期費用を抑えた小規模導入を検討することが有効です。補助金制度などが利用できたら検討してもよいでしょう。
(3)社内での運用(システム管理)
AIを導入しても、運用や保守が属人化してしまったり、既存システムとの整合が取れなかったりすることに不安を感じているのではないでしょうか。
解決に向け、情シスと現場部門の連携体制を整えるとともに、運用のルール化や業務への組み込みを支援する外部パートナーの活用も選択肢となります。製造業への導入実績を持つパートナーに相談してみることもおすすめです。
(4)セキュリティの維持
「企業向けにセキュリティが担保されたAI」など、あらかじめ企業向けにセキュリティ対策を意識した製品を選ぶことが重要です。たとえば、入力内容が外部に漏えいされない環境や、ID管理・アクセス制御が強化されたソリューションであれば、現場でも安心して活用できます。
⇒ホワイトペーパー「 ⽣成AIを安全に導⼊するためには? 」をダウンロードする
(5)社内での業務浸透・制度整備
AIを導入しても、現場での理解や活用が進まないことが懸念される場合があります。「現場が使いこなせる仕組み」まで落とし込むことが必要となります。
例えば、情シスが主導する場合を想定すると、「使い方ガイド」や「プロンプトのテンプレート」などの資料の配布、社内説明会・トレーニングの定期的な実施などが考えられます。また、このような社内へのレクチャーも含め、外部のパートナーに支援を求めるという方法もあります。

まとめ

今回は、製造業における課題とDXの現状、AI活用の可能性について調査結果などをもとに考察しました。人手不足や技能継承といった喫緊の課題に直面する製造業にとって、DXの推進は避けて通れない道です。そしてその推進力として、AIはますます重要な位置を占めつつあります。

もちろん、導入にはコストや社内浸透などの課題もありますが、それら1つひとつに向き合いながら取り組みを進めていくことで、現場に定着し、業務変革へとつながっていくのではないでしょうか。

まずは、AI導入を自社のDX推進の一歩として検討してみてはいかがでしょうか。なお、「製造業界の課題に関する調査(2025年3月)」の結果を掲載した資料「 製造業界におけるAIの利用実態について 」では、ほかにも様々な製造業の今日の課題に関する調査結果を掲載しています。ぜひ、下記のリンクよりご覧いただき、今後の業務への参考にしてはいかがでしょうか。

製造業界におけるAIの利用実態に関する調査
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