
企業はそれぞれ、業務をスムーズに進めるため、あるいはビジネスを成功に導くための独自の情報や知識を持っています。こうした情報や知識は社内ナレッジと呼ばれ、使い方次第で企業の競争力維持と成長を支えるものです。
この記事では、社内ナレッジを共有するメリット・デメリットのほか、共有方法について解説します。また、社内ナレッジ共有に生成AI型チャットボットを活用する場合のポイントについても見ていきましょう。
社内ナレッジは共有すべきもの
社内ナレッジとは、企業内で蓄積された業務知識や情報のことです。例えば、下記のようなものが社内ナレッジにあたります。
- <社内ナレッジの例>
-
- 社員が業務を通じて身に付けた知識やノウハウ
- 成功事例や失敗事例
- 業務プロセスやベストプラクティス
- 顧客情報やマーケット動向
こうした業務知識や情報は個人に蓄積しがちですが、社内ナレッジとして組織全体で共有し、誰もがアクセスして活用できる状態を維持することが大切です。
社内ナレッジの共有が必要な理由
社内ナレッジは、以前から企業の競争力を維持・向上させるために欠かせない重要な資産とされてきました。
近年では、従業員の平均勤続年数が短くなり、終身雇用の時代に比べて社内ナレッジの引き継ぎや蓄積がより難しくなっています。こうした状況下で、社内ナレッジを意識的・積極的に共有する重要性が高まっています。
SECIモデルによる社内ナレッジ共有のプロセス
社内ナレッジは、大きく「暗黙知」と「形式知」に分類が可能です。これらの概念は、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏らが提唱したSECI(セキ)モデルによって説明されています。
暗黙知とは、個人が持つ経験や直感、感覚にもとづく知識で、言語化が難しいもののことです。例えば、ベテラン社員の経験則や勘にもとづくノウハウ、仕事を重ねる中で身につけたスキルなどが該当します。
一方、形式知とは、言語化され、書類やデータベースなどに記録されている知識で、誰でもアクセスできるもののことです。マニュアルや業務フロー図、データベースに蓄積された情報などが形式知の例として挙げられます。
社内ナレッジ共有は、暗黙知を形式知に変換するプロセスから始まります。このプロセスを通じて、個人が持つ貴重な知識や経験を組織全体で共有し、活用できるようになるのです。
SECIモデルでは、この変換プロセスを「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」という4つのステップで説明しています。

社内ナレッジを共有するメリット
社内ナレッジの共有は、組織に多くのメリットをもたらします。主なものを見ていきましょう。
社内ナレッジの洗い出し
社内ナレッジの共有を行う際には、まずナレッジをドキュメントにして可視化する必要があります。この過程で、暗黙知だった業務プロセスや重要な知識・情報が洗い出され、形式知になります。
企業の資産である社内ナレッジが可視化されると、企業の強みや弱みが明確になり、事業判断に役立てることも可能です。
組織の生産性向上
社内ナレッジが集約され、共有されることで、組織全体の生産性が向上します。
具体的には、必要な情報へのアクセス時間の短縮、無駄な重複作業の削減、業務全体のスピードアップなどにつながります。
問題解決への過去の知見の活用
これまでの問題解決プロセスなどの事例を共有することで、新たな課題に直面した際に参照が可能です。このことにより、迅速な問題解決、効果的な対策の立案、類似問題の再発防止といった効果が期待できます。
従業員のコミュニケーションの円滑化
社内ナレッジ共有は、単に情報や知識を共有するだけでなく、従業員間のコミュニケーション促進にも役立てることが可能です。
部門を超えた連携により、チームワークや組織全体の協働性の向上にもつながります。
ノウハウの継承
経験豊富な社員の持つ暗黙知を形式知化して共有すれば、貴重な知識や経験を次世代に引き継ぐことができます。
ベテラン社員のノウハウをベースに、組織の持続的な成長の促進に役立てることも可能です。
社内ナレッジを共有するデメリット
社内ナレッジの共有には、メリットだけでなくデメリットも存在します。効果的なナレッジマネジメントの実現のために、デメリットについても把握しておきましょう。
社内ナレッジ管理のための人員確保
社内ナレッジの共有には、ナレッジの収集、整理、更新のための時間と人員が必要となります。
特に、大規模な組織や複雑な業務プロセスを持つ企業では、社内ナレッジの量も膨大になるため、人員の確保が必須です。
セキュリティリスク
ナレッジ共有の方法によっては、機密情報が外部に漏洩するリスクが高まることがあります。
例えば、クラウドベースのツールを使用する場合や、リモートワークを行っている場合は、漏洩リスクについて十分配慮しなければなりません。機密性の高い情報を適切に管理し、アクセス権限を厳格に設定するといったセキュリティ対策が不可欠です。
過去のナレッジへの固執
ナレッジを文書化することにより、従業員が過去の手順や方法に固執してしまうケースも起こります。過去のナレッジにとらわれることで、新しいアイディアや革新的な解決策を生み出す機会が失われるかもしれません。
また、非効率なやり方がナレッジとして共有され、それが継続されてしまうというケースも考えられるため、ナレッジは常に更新していく必要があります。
社内ナレッジを共有する方法
社内ナレッジの共有を進めるためには、まず社内ナレッジの見える化が必要です。業務手順や知識を文書化し、定期的に見直しと更新を行うことで、暗黙知を形式知に変換し、共有可能な状態にします。その上で、自社や業務内容に合った方法で共有のための仕組みを構築することが重要です。
これらを踏まえて、ここでは2つの共有方法について解説します。
社内ポータルサイトを活用
社内ナレッジ共有の方法としてまず挙げられるのは、社内ポータルサイトを利用してナレッジデータベースを構築することです。社内ポータルサイトにアクセスすれば、必要な情報を迅速に探せるようにします。
ナレッジデータベースは、使いやすい検索機能を備えていることが重要です。ユーザーがスムーズに必要な情報を引き出すには、キーワード検索やカテゴリー設定による絞り込み検索に対応していると便利といえるでしょう。
ナレッジデータベースの構築にあたっては、個々の担当者が自由に編集できるWikiと呼ばれるタイプにするか、特定の担当者のみが更新できるタイプにするかを検討する必要があります。これは、組織の規模やセキュリティポリシーなどを考慮して決定します。
ナレッジ共有ツールの活用
クラウドサービスなどを用いたナレッジ共有ツールを活用するのも、効果的な方法です。ナレッジ共有ツールには、主に「タスク管理タイプ」と「チャットツール(ヘルプデスク)タイプ」の2種類があります。
タスク管理タイプのナレッジ共有ツールは、チーム単位での知識の蓄積と共有が容易です。プロジェクトの進捗管理と同時に、関連するナレッジを蓄積・共有することができ、チームの生産性向上に役立ちます。
チャットツール(ヘルプデスク)タイプのナレッジ共有ツールは、リアルタイムで情報共有ができ、過去事例の検索も可能です。この機能により、即時的な問題解決と長期的なナレッジの蓄積を両立することができます。
生成AI型チャットボットを活用した社内ナレッジ共有
社内ナレッジ共有の方法のひとつにチャットツールの活用がありますが、近年特に注目されているのが生成AI型チャットボットの活用です。
ここでは、生成AI技術を活用したチャットボットによる社内ナレッジ共有について解説します。
生成AI型チャットボットの活用方法
生成AI型のチャットボットを社内ヘルプデスクとして構築すると、社内ナレッジ共有システムとして活用が可能です。
生成AIには、文章化した社内ナレッジを学習データとして与えます。従業員が自然言語を用いて生成AIに質問すると、生成AIは学習した内容をもとに回答を生成するため、社内ナレッジの共有が自然に行えます。さらに、生成AIは、質問と回答の過程で得た知識・情報も、新たな社内ナレッジとして蓄積できることが大きな特徴です。
この仕組みにより、ある社員が質問した内容に対する回答をもとにして、別の社員による類似した質問にも迅速に対応できるようになります。このプロセスは、暗黙知から形式知への変換と共有を効果的に実現するもので、先にふれたSECIモデルの実践そのものといえるでしょう。
生成AI型チャットボットを活用するメリット
生成AI型チャットボットを活用した社内ナレッジ共有には、次のようなメリットがあります。
- ・24時間対応が可能
- チャットボットは24時間365日稼働するため、シフト勤務や海外勤務の従業員でも、時間を気にせず必要な情報にアクセスできます。このことにより、時差のある拠点間での社内ナレッジ共有も円滑です。
- ・自然な対話による利用しやすさ
- 生成AI型チャットボットは、自然言語処理技術により人間と話すように扱えます。従業員は、専門用語や正確なキーワードを知らなくても、日常会話のような言葉や言い回しで質問できるため、社内ナレッジ共有のハードルを下げるのに役立ちます。
- ・迅速な情報アクセス
- 生成AI型チャットボットは、膨大な情報の中から瞬時に必要な情報を抽出し、回答できることが特徴です。従業員は必要な情報に素早くアクセスでき、業務効率が大幅に向上します。
- ・自動学習によるナレッジ更新
- 生成AI型チャットボットは、従業員との対話を通じて継続的に学習するため、人手によるナレッジデータベースの更新作業が不要です。このことにより、常に最新の情報が提供されるほか、頻繁に質問される内容や新たなトレンドも自動的に把握し、ナレッジデータベースの拡充が図れます。
社内ナレッジ共有のために、デジタルツールを活用しよう
社内ナレッジ共有は、業務効率化、生産性向上、そして組織の競争力維持のために不可欠なものです。効果的な共有のためには、社内ポータルにおけるWikiの構築やナレッジ共有ツールのほか、生成AI型チャットボットの導入が有効です。
生成AI型チャットボットは、24時間対応、専門知識なしで扱える、迅速な情報アクセス、自動学習による更新といった多くのメリットがあります。適切な方法で社内ナレッジを共有することで、組織全体の効率性と創造性が向上します。
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