新型コロナウイルスが流行し、オフィスへの出社が難しくなった2020年春。当時、多くの企業が一斉にテレワークを導入したことは記憶に新しい。一方で、大きな負荷がかかったのが情シス部門である。早急なテレワーク環境の構築が求められ、従来よりも厳しいセキュリティ対策や社員に対してのサポート業務が求められるなど、情シスの苦労は並々ならぬものがあっただろう。
昨年8月に開催した「情シス苦労川柳withタマちゃん」 では、そんなテレワーク環境整備の苦労話を見事に表現した作品が届いた。「きっと川柳だけでは伝えきれない苦労があるはず……」そう思った、情シスを応援する会社・ソフトクリエイトの広報のねこぱん田さんは、タマちゃんとともに作品を応募してくれた山宗雲水さんにインタビューを行った。
[マンガ:応募作品紹介]
応募作品:「テレワーク 廃止で苦労 水の泡」
[登場人物紹介]
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- 山宗雲水(やまむねうんすい)さん:
- 今回の作品を応募してくれたTECH+の読者さん。
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- ねこぱん田さん:
- ソフトクリエイトの広報担当として情シスを応援している。
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- タマちゃん:
- とある企業で情シスを担当する苦労人。
この記事の内容
山宗雲水さん語る、ワンオペ情シス企業の実態
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- ねこぱん田さん:
- タマちゃん! 昨年に実施した情シス苦労川柳 を覚えていますか?
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- タマちゃん:
- もちろんです! たくさんの力作が集まってとても楽しかったし、同じ情シスとして共感しました!
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- ねこぱん田さん:
- 今回はなんと、「テレワーク 廃止で苦労 水の泡」の作品を応募してくれた山宗雲水さんにインタビューできることになったんです!
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- タマちゃん:
- え! ホントですか!? あの川柳からただならぬ苦労がにじみでていたので、お話できるなんて光栄です!
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- ねこぱん田さん:
- じゃあさっそく山宗雲水さん、よろしくお願いします〜!
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- 山宗雲水さん:
- はじめまして~。よろしくお願いします!
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- タマちゃん:
- わわ! ホンモノの山宗雲水さんだ…!
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- ねこぱん田さん:
- まずは山宗雲水さんご自身についてお聞きしたいです! 山宗雲水さんのお仕事はやっぱり情シスなんですか?
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- 山宗雲水さん:
- 情シスは補佐的な立ち位置で担当していて、実は本業は営業職なんです。
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- タマちゃん:
- えっ、どういうことですか?
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- 山宗雲水さん:
- ぼくが勤めている会社は製造業で、従業員は250名。拠点は本社と工場、それから全国に営業所が11カ所あります。社内には正式な情シスが1名しかいなくて、手が足りていない状態なので僕が補佐として手伝っているというわけです。
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- タマちゃん:
- 全国に営業所があって社員250名の会社に情シスが1人っ……!? まさにワンオペ情シス……。
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- ねこぱん田さん:
- タマちゃん、顔がひきつってますよ! でも、なぜ山宗雲水さんが補佐を? もともと情シスの経験があるとか?
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- 山宗雲水さん:
- いえ、情シス経験はまったくありません。ただ、昔から趣味でPCを組んだり、プログラミングしたりはしていたので、社内ではITリテラシーが高い方かもしれません。それもあって、情シス専任担当から「サポートしてほしい」と声をかけられたんです。
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- タマちゃん:
- それはたしかに情シスの方から見ても頼りたくなる存在ですね。
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- ねこぱん田さん:
- ということは、普段は営業をしながらたまに情シスとしてお仕事を?
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- 山宗雲水さん:
- そうですね。情シスとしては、主に社員からの問い合わせ窓口みたいな業務が多いです。とくにぼく自身は営業ということもあり、営業からの問い合わせに対応することが多いですね。
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- タマちゃん:
- 営業の皆さんとしても、山宗雲水さんはありがたい存在ですよねぇ。営業の気持ちもわかってくれて、システム面の対応もしてくれるわけですから。
ゼロからわずか1カ月でテレワーク導入。一番苦労したこととは?
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- ねこぱん田さん:
- この作品が生まれた経緯をぜひお聞きしたいです。
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- 山宗雲水さん:
- 多くの企業がそうだと思いますが、うちの会社もコロナ禍でテレワークの導入を進めることになったんです。理由としては2つあって、まず社員の安全を守るため。それから、メディアなどでテレワークという単語を聞く機会が増えたのも大きかったですね。
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- タマちゃん:
- 自社の事情はもちろんですけど、あの時期はお客様からオンラインでのやりとりを求められることも増えましたもんね。
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- ねこぱん田さん:
- でも、それまではテレワークを導入していなかったわけですよね? 情シスが山宗雲水さんを含め2人しかいらっしゃらないと、かなり大変だったのでは…。
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- 山宗雲水さん:
- それはもう……大変でしたねぇ……。
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- タマちゃん:
- 山宗雲水さんの目がうつろに!
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- ねこぱん田さん:
- トラウマをよみがえらせちゃった!?
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- 山宗雲水さん:
- 何が大変って、そもそもうちの会社は経営層・従業員の年齢層も高いのもあり、IT導入や社内統制があまり進んでいませんでした。たとえば、営業はノートPCを支給されているんですが、それを会社の外に持ち出してはいけなかったんです。
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- タマちゃん:
- え、在宅勤務の以前に、外に持ち出すこと自体が禁止だったんですか?
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- 山宗雲水さん:
- はい。理由としてはセキュリティですね。たとえばカフェで仕事をしてPCを置きっぱなしにしたままトイレに行ってはいけませんよ、という基本的な社内統制ができていなかったんです。一度、セキュリティテストでダミーのスパムメールを社員に送ったときは、約半数が普通にスパムメールを開いてURLにアクセスしてしまっていました。そういう状態だったので、テレワークの導入も一般的な企業とは比べ物にならないくらい大変だったと思います(苦笑)。
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- タマちゃん:
- カフェの置きっぱなしとセキュリティメール……、うちもそんなことがあったなぁ(小声)。
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- ねこぱん田さん:
- その状態から、2人で環境構築、ですもんね…。
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- 山宗雲水さん:
- ただ、経営層はそんな事情はわかりませんから、「2、3日で導入できるでしょ。だってノートPCは支給済みなんだから」みたいなノリで指示してくるわけです。さすがにそこは丁寧に説明を繰り返して、1カ月で導入を行いました。
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- ねこぱん田さん:
- 1カ月というのもかなり早い方ですよね。
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- タマちゃん:
- セキュリティ問題はどう解決したんですか?
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- 山宗雲水さん:
- そこは知人からのアドバイスも受けながら、最終的にはVPNを導入しました。他にもオンライン会議ツールなどの導入を進め、社員用のマニュアルを作り、足りなかった分のPCは社内の倉庫に眠っていたものを調達してセッティングしていきました。
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- タマちゃん:
- 大忙しですね……。
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- ねこぱん田さん:
- でも、そこまでやれば、導入後はスムーズにテレワークを運用できたんじゃ?
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- 山宗雲水さん:
- それがですね…そうでもなくて。なぜかというと、せっかくマニュアルを作っても、誰も読んでくれないんです…。
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- タマちゃん:
- ああ……。
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- ねこぱん田さん:
- 家電のマニュアルだって読まれないですしね。そういうものなのかも……。
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- 山宗雲水さん:
- 同じ人から同じ質問が何度も来たりして、多い日だと1日に10件以上問い合わせがくることもありました。あのころは本当に大変でしたが、その後はシステム障害もなくうまく運用できていたと思います。
経営陣の鶴の一声で、無念のテレワーク廃止。その理由とは?
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- ねこぱん田さん:
- お話を伺うと、本当に苦労してテレワークを導入されたことがわかるのですが、山宗雲水さんの川柳作品を拝見すると、そのテレワークが廃止になったということですよね。
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- 山宗雲水さん:
- はい。昨年の夏頃に廃止になりました。
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- タマちゃん:
- 2020年に導入して2022年夏頃までというと、約2年間運用していたわけですよね。社員の方もテレワークにかなり慣れてきていたと思いますが、なぜ廃止に?
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- 山宗雲水さん:
- 経営層の鶴の一声です。理由としては4つあって、まずコロナが以前よりも落ち着いてきていること。それから、ちょうどそのころにテレワークを廃止した会社の例が頻繁に報道されていたこと。また、テレワークって社員の仕事ぶりが見えにくいので、上層部が社員を管理しにくいと思ったこと。最後に、これはちょっと笑っちゃうような理由ですが、「やっぱり顔をあわせて仕事をするのが大事だよね」という方針です。
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- タマちゃん:
- な、なるほど。たしかに、そういう考えもありますが……。
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- 山宗雲水さん:
- そんなわけで、経営層としてはどうやらもっと前からテレワークをやめたくてしかたなかったみたいです。ずっと機をうかがっていて、世間的にもやめられる空気になってきたから廃止に持っていったと。
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- ねこぱん田さん:
- ちなみに、山宗雲水さんとしてはどう思われていたんですか?
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- 山宗雲水さん:
- テレワーク廃止って聞いて、「いや、なんで?」と思いましたね。というのも私自身はテレワークにメリットしか感じていなかったからです。会議するにしても、オンラインなら移動時間も交通費もかかりません。テレワークって本当にメリットばっかりだなと思っていたので、今後もテレワークは続くんだろうなと思っていました。ほかの社員もほとんどは同じ気持ちだったと思いますよ。
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- タマちゃん:
- それがひっくり返されたと…。
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- ねこぱん田さん:
- テレワーク廃止は残念でしたが、山宗雲水さんとしては今回の経験で何か得たものもあるのでしょうか。
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- 山宗雲水さん:
- 社員から大量の問い合わせを受けてさばいていたので、そういう部分でのヒアリング力、それから解決策を相手に合わせて伝える力というのは磨かれた気がします。また、あまりにも業務量が多かったので、優先順位をどうつけていくかという業務プロセスの管理力は向上した気がします。
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- タマちゃん:
- 会社への要望や、ここは改善してほしい! ということはありますか。
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- 山宗雲水さん:
- 明日にでもテレワークを復活させてほしいです!!! それと切実に情シスの人員を増やしてほしいですね。
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- ねこぱん田さん:
- 魂の叫びだ……。
営業兼任から見る、情シスという仕事
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- タマちゃん:
- これはぼくも同じ情シスとしてぜひ聞きたいんですけど、山宗雲水さんにとっての情シスのやりがいってなんですか?
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- 山宗雲水さん:
- テレワーク絡みでたしかに苦労は多かったんですが、ぼくとしては、情シスはとてもやりがいのある仕事だと感じています。たとえば社内の問い合わせ対応をしたときは、「ありがとう、助かったよ」という感謝の言葉をもらえるんですね。そういうときは「やっててよかったな」と思います。また、情シスは会社全体に深くかかわる職種なので、そういう点も営業とは違った魅力があると思います。
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- ねこぱん田さん:
- 最後に、山宗雲水さんと同じように苦労されているワンオペ情シスの皆さんに一言お願いします!
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- 山宗雲水さん:
- 孤独な瞬間や辛いこともあると思いますが、見てくれている人は見てくれているはずです。さっきも言いましたが、情シスはやりがいのある仕事なので、ともにがんばっていきましょう!
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- タマちゃん&ねこぱん田さん:
- ありがとうございましたー!