
今や企業の情シスにとって欠かせない業務であるクライアント PC の調達や管理。社員の入退社や故障、サポート切れなどの都度、調達や管理といった業務は、いまだに大きな負担となっているのではないでしょうか。さらに、2020年1月14日には多くの企業で利用されている Windows 7 の延長サポート終了を受けて、Windows 10 搭載の PC への移行も検討しなければなりません。
働き方改革や生産性向上への取り組みなど、情シスに求められる業務がますます増えている中、クライアント PC の調達をはじめとしたライフサイクル管理の作業を軽減することは重要です。
本資料では、このような時代の要請を踏まえて、クライアント PC のライフサイクル管理について考えるとともに、新しい管理のあり方についても紹介しています。情シスの業務改革を実現するための方策の1つとして、クライアント PC 管理をぜひ、見直してみてはいかがでしょうか。
ひとりの情シスのクライアント PC 管理には課題が多い
企業の業務に欠かせないクライアント PC は、一般的に3年〜5年ほどで入れ替えるケースが多いと言われています。その調達や設定、管理、故障時の代替機調達などの対応、廃棄時のデータ消去などを一手に担っているのが情シスです。具体的には、社員の入退社にともなう調達、Active Directory への登録などの管理業務、OS やアプリケーションのバージョンアップ…など、枚挙に暇がありません。
さらに、Windows 10 時代の今、セキュリティ対策や AI など新たなテクノロジーの活用に、高いマシンパワーが求められるようになり、ますますクライアント PC を入れ替えるサイクルが短くなると予測されています。このままでは、情シスのクライアント PC 管理負荷は増大する可能性が高いのです。
PC ライフサイクル各フェーズの課題をチェック
今後、情シスにとってクライアント PC 管理の効率化は必須課題ですが、どこから課題に取り組めばよいのでしょうか。そこで考えたいのが、クライアント PC のライフサイクルです。クライアント PC は、①調達、②導入、③運用・管理、④消去・廃棄…という4つのフェーズに分けて考えられます。
各フェーズでの実情を把握し、効率化できる部分を見つけていくことが、効率化への第一歩となります。各フェーズの内容と、よくある課題について詳しく見ていきましょう。
下記では、クライアント PC のライフサイクルの4つのフェーズである、①調達、②導入、③運用・管理、④消去・廃棄の内容と、よくある課題をまとめています。自社に当てはめて考えて、課題をあぶり出してみてはいかがでしょうか。
①調達
クライアント PC を選定し購入/リース/レンタルすること。購入/リース/レンタルそれぞれにメリット・デメリットがあり、その後の管理が異なる。 選定に際しては、各部署や業務内容によって PC のスペックや価格帯はあらかじめ決められていたり、前例に則ったりすることが多い。ベンダーやメーカー比較が必要な場合もある。 ユーザが希望する PC があっても、上記の理由や、すでに販売終了しているなどの理由もあり、希望に応えられるとは限らない。メーカー、ベンダーが混在し、窓口が複数になると後々の運用で悪影響を及ぼす可能性がある。
▼ポイント▼
- 調達方法には、「購入」、「リース」、「レンタル」があるが、選んだ方法により、その後の管理方法が異なる。
- ユーザが希望する PC は導入できない場合もある。
- マルチベンダ環境だと、管理が煩雑になる可能性がある。
②導入
クライアント PC 調達後、自社向けの設定や、マスターイメージの展開を行う必要がある。このようなキッティング作業を、自社で行うかアウトソースするかは検討したいポイント。
また、PC のリプレイスの場合、データ移行の作業や Active Directory への登録といった作業も必要となる。これもアウトソースできる可能性を探りたい。
▼ポイント▼
- 情シスにとって大きな負荷となるキッティング作業を社内かアウトソースするかは検討したい。
- リプレイスの場合、データの移行方法は検討事項。
- Active Directory への登録作業を効率化する方法も検討したい。
③運用・管理
運用上、最も大きな課題となるのは故障等への対応。購入/リース/レンタルそれぞれで対応が異なる。故障時にも業務に影響が出にくいことを考えることが重要。
マルチベンダ/マルチメーカー環境だと、トラブル時の問い合わせ先が複数になることや、対応がまちまちになるケースもあるので注意が必要。
経営の視点で注意すべきは、PC を自社の IT 資産として管理するのか、レンタルとして経費として処理するのかで、経理上の処理が異なること。
▼ポイント▼
- 故障への対応は重要ポイント。購入/リース/レンタル PC で対応は異なる。
- マルチベンダ/マルチメーカー環境になることで、問い合わせ先が複数になり煩雑化することは避けたい。
- 購入/リース/レンタルで、IT 資産か経費として処理できるか異なる。
④消去・廃棄
PC のライフサイクルの終了時には、データ消去やディスクの破棄などを行う必要がある。
また、データ消去や廃棄処理が確実に行われているかどうか、最後まで把握し、書類として残す必要がある。購入/リース/レンタルにより、消去・破棄の業務内容や作業負荷は異なる。
▼ポイント▼
- データ消去・ディスクの破壊などが必要。
- 廃棄処理の管理や保管が必要。
- 購入/リース/レンタルにより作業負荷が異なる。
購入・リース・レンタル…調達方法により異なる PC 管理
クライアント PC には「購入」、「リース」、「レンタル」という調達方法があり、PC の管理はそれぞれ異なります。その違いを一覧で把握するとともに、ライフサイクルにおける各フェーズを見た時の情シスにとってのメリット・デメリットを整理しました。
項目 | 購入 | リース | レンタル※ |
---|---|---|---|
契約期間 | 法定耐用年数 | 耐用年数×70%の期間以上 (PC 2年以上、サーバ3年以上) |
任意の期間 (週・月・年単位) |
解約 | ― | 不可(残リース料を一括支払い) | 可能(期間に応じて差額調整金支払) |
納期 | メーカー納期による | メーカー納期による | ストックあり:ご発注後1~2日 ストックなし:メーカー納期による |
対象物件 | 制限なし | 制限なし | 一部制限あり |
会計・税務上扱い | 資産計上 | 資産計上 | 賃貸借処理(経費) |
保守・修理費用 | お客様負担 | お客様負担 | 原則レンタル会社負担 |
保険費用 | お客様負担 | リース会社負担(動産保険料込) | レンタル会社負担(動産保険料込) |
廃棄費用 | お客様負担 | リース会社負担 | レンタル会社負担(送料のみお客様負担) |
資産管理 | お客様にて | お客様にて | レンタル契約台帳提供(ASP 提供、検索機能付) |
陳腐化対応 | 不可 | 不可 | 可能 |
特徴 | ・長期間の利用で資金にも余裕がある場合の選択肢 ・所有に伴う運用管理工数は自社にて行う必要がある |
・一度に多額の資金投入をせずに購入可能だが資産計上は必要 ・期間途中の解約は原則不可 |
・陳腐化や設備需要の変動に対応 ・利用期間で予算を有効活用 ・賃貸借のみでなく、付属するサービスを合わせてご提供 |
※ PC レンタルサービス with ライフサイクル( https://www.softcreate.co.jp/service/support/pc-rental )の場合
クライアント PC の購入・リース・レンタル…それぞれの主なメリットとデメリット
購入 PC | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
①調達 | 機器を自由に選択できる | 初期コストが大きくなりがち | |
②導入 | 自社で自由にカスタマイズできる | キッティングは自社で対応 | |
③運用・管理 | メーカー保証などを利用できる | 故障やトラブルの際のユーザ対応や、代替機の準備が必要 | |
④消去・廃棄 | 自社のタイミングで消去・廃棄できる | データ消去・廃棄等の作業はすべて自社で行う必要がある |
購入 PC は、初期コストが大きいが、「自社の資産」となり、自由度が高いことが大きなメリット。しかし、導入や運用・管理、廃棄までライフサイクル全般にかけて情シスが責任を持って管理する必要があり、労力がかかる点がデメリット。
リース PC | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
①調達 | 初期コストを抑えられる | ・中途解約できない場合が多く、リース期間を決めなければならない ・審査が必要 |
|
②導入 | キッティングサービスや、アプリケーションの同時リースなどが追加で利用できる場合がある | 審査から納品まで時間がかかる場合がある | |
③運用・管理 | 保守サービスも依頼することで管理負荷が軽減できる | ・リース費用が発生し購入より割高になる場合も ・故障、トラブル時には修理費等が発生する ・資産として計上 |
|
④消去・廃棄 | オプションでデータ消去・廃棄まで依頼できる場合もある | 原状回復して返却しなければならない |
リース PC は、初期コストが少なくて済み、リース期間中の保守や、データ消去などが依頼できれば、情シスの工数は削減可能。一方で、審査の際の手続きが必要になることや、リース費用が購入費よりかかってしまうこと、リース期間終了後は原状復帰が必要になる点などがデメリットとして挙げられる。
レンタル PC ※ | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
①調達 | ・初期コストを抑えられる ・週、月、年単位で自由に利用できる |
市販の PC から自由に選べるわけではない | |
②導入 | ・キッティングサービスを利用できる ・クラウドサービスとまとめて利用可能 |
PC の納期は、メーカーの在庫による | |
③運用・管理 | ・故障時には代替機の利用ができる ・ヘルプデスクが利用できる ・経費として計上できる |
レンタル費用が発生し購入より割高になる場合がある | |
④消去・廃棄 | 返却の際に、標準で無償データ消去 | データ消去方式によっては有償 |
※ PC レンタルサービス with ライフサイクル( https://www.softcreate.co.jp/service/support/pc-rental )の場合
レンタル PC は、初期コストが少なくて済み、その期間は任意に設定できる。レンタル期間中には代替機利用やヘルプデスク利用など、情シスの運用管理業務をアウトソースできる形になる。一方でデメリットは、自由に PC を選べないことや、レンタル費用が割高に感じられやすいこと。しかし、費用については単に直接コストのみではなく、管理費など間接コストも含めて総合的に考えることが必要。
クラウド化、Windows 10 …新しい時代に適した PC の管理方法とは?
ここまで、クライアント PC の調達方法によって、ライフサイクル管理は異なることを紹介しました。各フェーズのメリットやデメリットを見比べることで、自社にとっての課題が明確になるのではないでしょうか。
Windows 10 への移行を期に新たに PC 導入を進めている企業が増えています。情シスの PC ライフサイクル管理負荷が今後いっそう増え続ける可能性について前述しましたが、この機会に、自社の PC ライフサイクルの管理を根本的に考え直すのも一案です。
例えば、昨今、システムのクラウド化が進んでいますが、そのキーワードは、「所有から利用へ」です。IT 資産を持たずに利用することで、管理負荷の軽減に効果を発揮しています。同様に、PC をレンタルすることで「所有しない」ということも、1つの選択肢となるのではないでしょうか。もちろん、従来どおりに「購入して自社の IT 資産として PC を自由に活用した方が適している」と考える企業もあるでしょう。クライアント PC のライフサイクル管理という視点から、自社の課題解決に最も適した方法を選択することが最も重要なのです。
「 PC のサービス利用」の可能性と情シス改革
今、多くの企業が働き方改革や生産性向上に取り組んでいます。この取り組みに欠かせないのが IT の活用による新しい働き方の提案や環境構築であり、情シスにとっては活躍の場です。しかし、その情シスの日常は、ノンコア業務と言える社内のシステムや PC の“ お守り” に追われているのが実情で、「まず情シスの働き方を改革しなければ…」という方も多いかもしれません。
情シスの働き方の1つが、システムやアプリケーションのクラウド化による運用管理のアウトソース。一方、PC の管理負荷を軽減するならば「PC レンタル」が効果的です。PC の調達をレンタルにすることで、導入時の設定、運用・管理時の故障対応、消去・廃棄に関わる業務など、ライフサイクル全般の業務を効率化できます。
つまり、「PC レンタル」とは PC を「所有から利用」へと変えます。PC レンタルとクラウド化を活用することで、情シスはコア業務に集中する時間が作れるようになることでしょう。
PC コストは、「管理コスト」を考えることが重要
レンタルは「長期的に購入するより割高」と言われがちですが、実際は異なります。重要なのは、直接コスト(機器コストなど)と間接コスト(管理コストなど)を含めた TCO(Total Cost of Ownership)で考えること。
調達方法別に比較すると、上グラフのように情シスの管理コストが大きくことなることが分かります。また、下グラフでは3年間の費用の推移を比較しています。「見えないコスト」とも呼ばれる情シスの管理費が TCO を考える上で大きなポイントになっていることが分かります。
PC レンタルにより最大の効果を生むためのポイント
「PC レンタル」を選ぶ際に注意したいのは、情シスの業務負荷を軽減できるサービスを提供しているかどうか。これも、ライフサイクルのフェーズごとに確認していくとよいでしょう。
①調達:
選びたい機種があること、マルチベンダに対応しているかどうか、借り換え時に余分なコストは発生しないか
②導入:
キッティング、クローニング、データ移行なども、オプションで利用できるか。納期は適切かどうか
③運用・管理:
ヘルプデスクを一本化できるか、故障時の対応(代替機提供)などがあるか
④消去・廃棄:
データ消去や破棄を行ってくれるか
…このように、ライフサイクルの各段階のポイントを考えながら選ぶことが、PC レンタルにより最大の効果を生むための重要なポイントとなります。
PC のレンタルと求められるマシンパワー
昨今、AI や AR など最新技術の発展は目覚ましく、クライアント PC にはますます高いマシンパワーが求められるようになっています。そのため、従来の3年〜5年という PC ライフサイクルでは、PC が陳腐化してしまう懸念があります。下図はその変化を表したものですが、購入やリースのサイクルでは求められるマシンパワーに及ばなくなるという可能性もあります。このような時に、レンタルで短いサイクルで PC を借り換えることが、新たなPC 調達方法として普及していくかもしれません。
ケーススタディで読む「PC レンタル」
CASE 1:A社の場合
PC レンタルで「所有から利用」へと転換、ひとりの情シスによる「情シス改革」を実現
課題---システムやアプリケーションはクラウド化したが、PC 管理はどうする?
A社では、社内全体の業務効率化対策の一環として、これまで複数人数が在籍していた情報システム部門をS氏の1人に集約。「ひとりの情シス」として管理していくことになった。ひとりの情シスとして業務を行っていくためにも、S 氏は会社と相談し、システムをオールクラウド化するとともに、ヘルプデスクをすべてアウトソースすることに。これまで、「メールの調子が悪い」「ネットワークがつながらない」といった相談なども受けていたが、こうした業務への対応は必要なくなった。
しかし、Windows 10 移行を契機に、クライアント PC の管理問題が急浮上。どのように効率化していくかが大きな課題となった。
解決---PC のライフサイクルすべてを効率化!「ひとりの情シス」改革に成功
S氏はシステムのクラウド化と同様に、PC も「所有から利用」にできないか考え、「PC レンタル」を選ぶことに。決め手となったのが、①調達、②導入、③運用・管理、④消去・廃棄という PC ライフサイクルすべてにおいて、サポートが得られること。特に、②導入の際に、Windows 10 や必要なクラウドアプリケーションを設定した状態でスタートできる点は多いに評価した。さらに、③運用・管理のフェーズでは、これまで PC 故障時の対応などに悩まされていたが、その対応や代替機の準備もアウトソースできる。
こうしてS氏は、ひとりの情シスでも運用・管理できる環境の構築に成功。この経験を活かし、今では全社の働き方改革をリードする存在となった。
CASE 2:B社の場合
PC の調達をリースからレンタルへ、最新スペックの PC を常に利用できる環境へ
課題--- PC にかかるコストを効率化するには? ライフサイクルから見直し
B社での PC 調達はリース。大量のデータ分析などを行う部署では、デスクトップ PC が好まれている。一方、外出や会議が多い部署ではノート PC が好まれていた。デスクトップ PC を使っていた部署から、ノート PC を使う部署に異動がある場合には、不足分があれば、その都度新たに PC をリースする場合が多い。リースは途中契約ができないことから、無駄が出てしまうこともあった。このような中、経営からは IT 費用の全社的な効率化を求める声が上がった。そこで、B社の情シスは PC のライフサイクル見直しに着手した。
解決---コスト抑制のみならず、IT コストの可視化にもつながる
B社が解決策として選んだのは、PC レンタルサービス。レンタルを利用すれば、調達・導入のタイミングではレンタル費用内で、最新の PC を利用することもできる。また、部署異動の際に、デスクトップ PC からノート PC へと借り換えを行うこともできる。また、不要な PC は返却すればコストもかからない。
こうしてB社は PC レンタルという利用の形をとったことで、社内の IT 資産管理の手間が減るとともに、どの部署でどのくらいのコストが PC にかかっているのか可視化することにも成功した。コスト抑制を考えて選んだ PC レンタルだったが、結果的に社内全体の IT コストを把握し、適正化することにもつながった。
新しい時代、ひとりの情シスの働き方は変えられる!
今回は、クライアント PC の調達、導入、管理・運用、廃棄・消去というライフサイクルを見直すことで PC 管理にかかっていた負荷を軽減でき、情シスの働き方が変わるとともに、企業にもメリットがあることを伝えました。重要なのは、情シスが「IT の便利屋」となることではなく、そこから脱却して、本当の価値を社内に提供していくことです。
働き方改革により、生産性向上が大きなテーマとなる中で、情シスはクラウドやアウトソースを活用し、企業を改革していくことが求められます。企業にとって、IT 資産の「所有から利用」というトレンドの中、「PC レンタル」活用を進めることもまた、効果的な取り組みでしょう。
本記事を、単に PC 調達の参考に留めるのではなく、ぜひ、下図で示しているように、総合的に情シスを取り巻く環境を変革することにお役立ていただき、自社の働き方改革の推進につなげていただければ幸いです。
※本内容は、2018年7月現在における各種情報をもとに作成されています。
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